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聖女は世界を救わない  作者: 大木戸 いずみ


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 私がそう言った瞬間、クリフは「は?」と口を半開きにしてポカンとした表情を浮かべる。なんとも間抜けな顔だ。


『抗う意志よ』

「は? 待て待て、嘘だろ!? 下等種の人間にそんな魔法を使える奴なんているわけない……!!」


 私はクリフの言葉を無視して、詠唱を続けた。私の方が魔力は強い。


『黒き鎖を骨に絡め、意志を喰らう』

「……おい、まさか、お前……本当に…………」


 目を大きく見開き、慌てる様子のクリフを胸の前に黒色の幾何学模様が描かれた円環が現れる。そう、これが隷属魔法の魔法陣。

 人類はまだ誰も見たことがないはず。レイやミミも驚いていることだろう。

 この魔法を扱える人間が存在しちゃまずい。なんたって、この国を乗っ取りかねないからね!!

 国の脅威とみなされて、追われる身になるのは勘弁したい……!! けど、もう詠唱したからには、後には退き返せない!!

 


『血と名と魂に杭を打て』

「そんな、あれは……」


 レイの声が耳に届いた次の瞬間、魔法陣が光を放つ矢と変化してクリフの左胸を貫き、消え散った。クリフは抵抗する間もなく、私の隷属魔法を受け、その場にズルズルと落ちていった。少しして、修道院の周囲にいた人々も静かになった。


 ふぅ、終わった~~。いやぁ、悪くない戦いだったよ。

 ……………………ふぅ、じゃないよ、私!! 

 ちゃっかり、流れで使っちゃったけど、まじでこの魔法は使わない方が良かったよ! 私、ミスった?

 胸を撫でおろして早々、私の心臓は再び大きな音を立てる。

 ミミならともかく、隷属魔法が使えるなんてレイに知られちゃったらまずい。非常にまずい。また敵意を向けられちゃうかも……。


「……俺に何をした?」


 私が心の中で焦っていると、地面に倒れ込んだクリフは私の方を見ながら口を開いた。彼はゆっくりと体を起こし、壁に背中を付けて座る。もう戦闘威力はないみたい。


「貴方はもう私のものってことだよ」

「……俺がお前の?」

「そう、手の甲を見てごらん。紋章があるでしょ?」


 クリフは自分の右手に視線を落とす。そこには、縦に長いひし形が刻まれており、中にケイトと書かれていた。クリフは、一切私に逆らうことのできない身体になった。

 つまり、私がここの人間たちを自由にしてほしいと言えば、クリフは従うしかない。

 

「クソッ、なんだよ、これ……!! てめぇ、勝手にこんなもの……!」

「この魔法を解くには、私を説得させるか、私を殺すしかない。けど、どっちもできないよね」


 私はクリフに向かって満面の笑みを浮かべた。


「つーか、魔族を生かしておいていいのかよ。魔族なんかを連れて歩いたらお前も重罪だろ?」

「ちゃんと考えてるに決まってるでしょ」


 まだ強気なクリフに私は明るい口調で「まずはその姿をやめてもらわないとね」と続けた。



 まず、私はクリフに向かって彼の邪悪な魔力を浄化させた。これはかなりの時間と気力と労力がかかったけれど、クリフは私に少しも抵抗できない。そのおかげで、思っていたよりもすんなり終わった。……って、言っても半日かかったんだけどね。

 その間、レイとミミには町の人々の相手をしてもらった。今日、二人が初めて役に立った。あっという間に、人々の混乱を対処してくれていた。私はそういうの苦手だから、すごく助かる。

 レイは隷属魔法を使った私に疑いの目を向けていたけれど、特に追及してこなかった。魔族の対処が終われば、色々と言われそうだけど……。


 気付けば、日は落ちていて、夜になっていた。

 この町の人々に感謝されて、修道院へと戻ってきたレイとミミは、まだ私がクリフの魔力を浄化しているのを見て、少し離れたところで黙っていた。ほどなくして、二人の寝息が聞こえてきた。

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