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「俺はクリフ・フォード。魔王と親族だ」
魔王との親族!! ……てか、私、自分のこと名乗り忘れてた。
「私の名はケイト・シルヴィだよ」
完全に名前を言うタイミング間違えた。これじゃあ「これから仲良くしてね♡」の挨拶じゃん。相手は魔族。もっと緊迫した顔で話さないと……!!
「私の名はケイト・シルヴィだ」
「……なぜ二回も言った」
眉をひそめて、深刻な表情を作る私にクリフは怪訝な目で私を見る。一回目の自己紹介をなかったことにしようと思ったけど、ミッション失敗。
よ~し!! 何もなかったことにしよう!! クリフが名を名乗ったところから始めよう!
「魔王と親族なのね」
「……あ? ああ、そうだ。偉大なる魔王の血が俺にも流れいてるんだ。てめぇなんぞ一瞬で殺してやる」
いきなり私が話を戻したことに少し困惑しつつも、クリフはすぐに受け入れた。そして、私を脅すように再び笑みを浮かべた。
…………さっき、一瞬で私が攻撃を防いだことを忘れちゃった?
私はゆっくりと彼に近寄りながら、質問する。
「魔王の何? 弟? 兄? それとも甥っ子とか?」
「近寄ってくんじゃねえよ。下等種!!」
クリフは怒鳴りながら、再び私に攻撃を放つ。……が、全部防ぐ。剣を出すまでもない。私は宙に浮き、祭壇の上に立っている彼と目を合わせた。近くで見ると、クリフが端正な顔立ちをしているのだと、はっきりと分かる。……人間を欺くための美しい外見。
「お、おい……」
私を驚いた様子で見つめるクリフに私はため息をつく。
「魔王との親族って言うから、もっと強い魔力を期待していたのに、がっかりだよ」
「……お前のような劣等生物に俺の攻撃をそんな軽々しくと弾くなどできるはずがない」
「けど、できちゃったよ?」
私は笑みを浮かべ、クリフを煽る。クリフは私の言葉に、不快そうに顔を歪めた。「ミレッタの方が強かったなぁ」と私はボソッと呟いた。その瞬間、場の空気が変わった。
ここに派遣されている魔族はお互いに把握しているはず。クリフがミレッタのことを知らないわけがない。
クリフの目が光り、修道院の中に荒い強風が吹き、髪が逆立つ。あまりの殺気に鳥肌が立つ、クリフの魔力で空気が震える。彼の鋭い視線は刃を突き付けるように私に向けられていた。
……うわぁ、本気で怒らせちゃったかも。
「薄汚い女め、今なんと言った?」
「ミレッタの方が強かったなぁって」
私は臆することなく、はっきりとした口調でもう一度同じことを発した。すると、更に風が強まった。後方から「さらに怒らせてどうすんだよ!」とレイの声が聞こえてきた。
さらに怒ってくれないと困る。折角、魔王の親族と戦えるんだもん。もっと強いに決まってる。全力で私と戦ってよ。
「その腐った脳みそに俺の凄さをぶち込んでやるよ」
「わ~い! それは楽しみ!」
私は恍惚な表情を浮かべた。




