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修道院……?
私は足を止めて、目の前の建物を見つめた。ここが邪悪な気が最も集まっている場所。外壁はひび割れ、鐘楼にはもはや鐘は錆び切っている。
私は臆することなく、ギギギと耳障りな音を立てながら、年季の入った大きな扉を開けた。
「ここにいるのか?」
私が修道院に入るのと共にレイの慎重な声が後ろから聞こえた。私は「たぶん」と返して、静まり返った堂内の中へと歩みを進めた。
祭壇の方に何やら人の影が見えた。私は目を細めて、その正体を捉える。
「ようやく客が来てくれたかぁ、待ちくたびれたぜ」
あくびをしながらそう言った男性の声が堂内に響いた。
男は祭壇に足を立てながら座っていた。床には神の石像が割れて散らばっていた。なんとも罰当たりだ。
短い白髪に、白い角が生えている。先の尖った歯を見せながら、にやりと笑みを浮かべている。いかにも悪そうな顔をしている。
魔族発見!! しかも、なんか強そう!!
「お待たせしました?」
魔族の言葉になんて言うのが正解なのか分からず、私は疑問形でそう返答した。
白い角の魔族なんて見たことない。瞳の色もラベンダーで可愛い。……顔は強面だけど。
彼は私の反応が気に入らなかったのか、「あ?」と不機嫌そうに祭壇に立ち上がって私を見下ろした。
その表情! レイがよく私に向ける表情とほぼ一緒じゃん!!
かなり背は高く……、というより、足が長い? まぁ、とにかく大男だ。体はそれなりに鍛えているように見えた。
「今回は雑魚じゃないかも」と私は思わず心の声を吐露してしまった。その瞬間、バチバチと魔力が破裂するような音が耳に届いた。
「余裕そうだなぁ」
やっぱり私の態度が気に食わないみたい。
魔族は顔を顰めながら、己の手に雷のような紫色の魔力を溜める。彼は今すぐにでも攻撃してきそうな殺気を放つ。
私がふぅっと小さく息を吐いたのと同時に、突然彼の攻撃が私の方へと一直線に飛んできた。紫色の雷に似た閃光が空気を震わせる。
「ケイト様!!」
ミミの声が大きく響いたのと同時に私は目の前にきた一撃を軽く手で叩いて相殺した。凄まじい音が修道院の中で轟く。
魔族は目を見開いて私を見つめていた。ミミは「え?」と固まったまま、何が起こったのか理解できない様子で私を見ていた。レイは、私の戦闘をずっと見てきただけのことはあって冷静だった。
一気に全く違う反応を三パターンも見れちゃうなんて得した気分。一石二鳥じゃなくて、一石三鳥じゃん! ラッキー!
「お前、何者だ?」
眉間に力強く皺を寄せながら、荒い口調で魔族は声を発した。彼の殺気を帯びた表情に私は笑みで返す。こういう時こそ、ラブリースマイル!
「この国の騎士団に属している下っ端だよ」
私の返答にレイとミミがジトっと冷たい視線を送る。私は彼らの態度に心の中で反抗する。
何よ、あんたたち味方じゃないの。それに、間違いじゃないでしょ。嘘は言ってないもんね。ただ、与えていない情報があるってだけ。
「貴方は? 何者?」
私は魔族にそう聞き返した。




