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「もっとお若いかと……」
「だよね~~。私も十六歳とかいいたかったよ。ミミは? いくつ?」
「二十三でございます」
年上じゃん……。いや、まぁ、見た目通りっちゃ見た目通りだね。
ミミと年齢の話をしたところでガタンと突然馬車が止まった。バランスを崩し、身体が前のめりになる。この衝動と共に目を開いたレイが御者にすぐさま「何があった?」と聞く。
「……ここから先は行けそうにありません」
怯えたようなその声に私は急いで馬車から降りて、前方を確認した。「わお」と私は目の前の光景に思わず声を出してしまう。そこには、この町へと誰も入れさすまいとした巨大な氷の壁が存在した。ひんやりとした冷気が漂っている。透明であるはずの氷だけど、向こう側の様子は一切分からない。
壁というよりも結界に近いかも……。もしかして、これ結構強敵じゃない?
「なんてこと……」
ミミは私の隣に立ち、目を丸くして氷の壁をじっと見つめる。
ずっと気になっていたけど、ミミの言葉遣いって綺麗よね。なんかお上品。レイも見習った方がいいよ。
私は馬車から降りてきたレイの方へと視線を向けると、「なんだよ」と睨み返された。
「てか、これもう魔族に支配されちゃってない? この町はもう手遅れだよ」
「まだ行ってみなきゃ分かんねえだろ」
レイの言葉に私は「まあね」と返す。
私たちは御者を帰らせて、三人並びながら氷の壁の前に立った。ミミが最初に口を開く。
「なかなかの迫力ですね」
「この町、絶対寒いよね? 寒さ対策してないんだけど、震えながら敵と戦わなきゃいけないってこと?」
「敵と戦う前に、まずはこの町にどうやって入るのかを考えなきゃなんねえだろ」
「それは別に考えないでよくない?」
「は? 何言って」
私は一歩前に進み、氷の壁に軽く手を当てて『砕けろ』と魔力を込めた。私が言葉を発した瞬間、空気が震えた。私の手が触れている場所から放射線状に亀裂が走る。裂け目はどんどん広がり、あっという間に氷の壁は壊れて、灰のように散って消えた。
それと共に後ろから強い視線を感じた。振り向くと、ミミとレイが散瞳した目で私を見ていた。
なんか熱い視線向けられちゃってる……!!
「う……そ、でしょ……」
「まじか……」
私が壁を壊したことに驚かれているの?
それなら、私もなめられたものね。特にレイは私の実力をある程度把握していると思っていたのに、がっかり。ずっと近くで私の何を見てきたのよ。……まぁ、特に私の力を見せるほどの強敵を相手にしてこなかったからしょうがないか。




