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この気まずい空気感は、テイク何回目なの?
目が覚めてすぐにミミが「私も一緒に連れて行ってください」と言いに来た。寝ぼけていた私は「あ~、いいよ~」と適当に返答してしまった。ミミの明るい表情を見た瞬間に後悔した。ちゃっかりと遠征にスネークマンをお供させちゃうことになったのだ。レイの許可を取るのを忘れたけど、レイは何も言ってこなかった。
そして今、重い沈黙の中で、快適さの一切ないぼろい馬車に揺られながら次の依頼へと向かっている。
次は魔族討伐。辺境の地にある小さな町に現れたらしい。派手なことはせずに、こっそりと潜んでいる。
魔族は王都から離れたところから少しずつ侵略しようと考えている。なんとも地道。一般的に思い描かれている魔族像とはえらく違う。
一気に人類滅ぼしてやるぞ☆ なんて積極的で大きな戦いはほとんどない。
今回の依頼も被害がそこまで大きいわけじゃないけど、数名が殺害されており、誰も魔族には逆らえないようだ。
こうしてはるばる辺鄙な場所へと行くのだから、少しぐらい手ごたえある魔族であってほしいよ。
私は目の前に座っているレイとその隣に座っているミミを見る。
ミミは熟睡しているが、レイはきっと目を閉じているだけだろう。ミミには大きなマントを魔法で用意した。これほど目立つ外見はしっかりと隠しておかなければならない。もちろん、首輪も壊しておいた。
…………変な出会い。二人とも。
元々私の人生に全く関わりがなかった。それなのに、今こうして旅をしているなんて妙だわ。
二人を眺めながら、私もふと睡魔に襲われた。昨日の夜はあまり眠れなかった。
私はこれから先の人生どうしたいんだろう、なんて普段考えないことに頭を使っていた。
将来の夢とか人生の目標などを考えるなんて馬鹿らしいと思ってきた。特に聖女と言う運命を背負わせてから……。
悲しきかな、結局答えは見つからなかったよ。
ただ、私がどれだけ抗っても聖女という運命だけからは逃れられないということを改めて実感しただけ。うげぇ、全く最悪だよ。
私の生き様ってなに~~~!!!
聖女としての生き様はもうとっくに捨てたもん。……国民からの大バッシングを受けている私を見てみなさい。もう救いようがない。
「私って何になりたいんだろ~~」
私は腑抜けた声で独り言を呟きながら、再び自問自答を繰り返していた。
♢
「もうすぐ着きます」
御者のしゃがれ声で、ハッと私の意識は現実に戻ってきた。
この長時間、ずっと頭をぐるぐるさせていただけだった……。私ってば、悟りでも開こうとしてるの?
「ケイト様」
慣れない呼び方に私は眉をひそめてしまう。
ミミも先ほどの御者の言葉で起きたようだ。レイはまだ目を瞑ったまま。
「なに?」
「ケイト様のご年齢を聞いてもよろしいでしょうか?」
「二十二歳」
私がそう答えると、ミミは目を見開いて固まった。
ああ、この反応なんか久しぶりで新鮮。
「……にじゅうに」
少し間を置いて、ミミは再び口を開く。
なんかさ、こういうのって、「若すぎる!!」って驚かれるのがいいのに……。その逆って複雑な心情だよ。思ったよりも老けてる!! ってめっちゃ嫌じゃない?
才能ある若者でありたいんだよ、私は……。




