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「あいつらが命乞いしても殺すだろ?」
私はレイの言葉に間髪入れずに「うん」と大きく頷いた。何を当たり前のことを言っているんだろう。
「……何が言いたいの?」
「あいつらに良心が残っていたら? 更生のチャンスを与えずに」
レイが話している途中で私は思わず声を上げて笑ってしまった。私のその反応にレオは一瞬だけ目を丸くしたが「何がおかしい」とすぐに鋭く私を睨む。ミミは黙ったまま私たちの会話を聞いていた。
「馬鹿ね。あんな奴らに隙を見せてどうすんのよ。それで、殺されちゃったらどうするの? それにむしろ、私は優しいと思わない? 甚振ったりせずに一発で急所を狙ってあげてるんだよ」
「あんな簡単に殺さなくてもいいんじゃねえの? ちょっと懲らしめたら」
「きっと、君みたいな“優しい人”は聖女に向いてないね」
私は再びレイの言葉を遮って、確かな声でそう言い放った。私が聖女に選ばれた理由が少しだけ分かった気がする。
……まぁ、レイは男だから聖女に選ばれることなんてないんだけどね。
「君には少し教育が必要だね」
私は口角を上げ、その場で魔力を放ちレイを圧した。ここでしっかりと分からせておかないと。私がどういう人間で、どう戦っているかを。
固まったままのレイへとゆっくりと近づいて、彼の胸ぐらを掴み、自分の方へと近寄せる。彼と至近距離で目を合わせたまま、私は話を続けた。
「よく聞きな、小僧。魔族だけが敵だと考えているようじゃ誰一人救えないよ。奴隷売買でどれほどの犠牲者が出ているのか知っているの? 公になっていない死者が何人いると思ってるの? あいつらが身に着けていたアクセサリーは全て身の丈に合わない上等なものばかりだった。どうやって手に入れたと思う?」
私の言葉にレイは黙り込む。私はフッと嘲笑するように、再び私の声が夜の森に響く。
「少し懲らしめる? なんて生ぬるいの。悪に立ち向かうには、彼らと同じぐらい残虐にならなければならない」
「お、俺は……」
「相手を見極める力を持ちなさい。それと、もう少し勉強してから喋りな」
私は言いたいことを言い終えると、レイから手を離した。彼はよろめきバランスを崩す。
……なんだか私っぽくない。人に説教するなんて。
この遠征、今までで一番疲れる。王子め、よくもこんな仕事を私に押し付けてきたな。……でも、条件が良かったから何も文句は言えない。
「じゃあ、おやすみ」
私は今度こそ無理やり話を終えて、レイとミミから少し離れたところで、いきなり地面に寝転ぶ。
もう、これで誰も私に話しかけてこれるまい……!!




