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聖女は世界を救わない  作者: 大木戸 いずみ


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 王宮に着くなり、侍女に花々に囲まれた白い石造りの円形ガゼボに案内されて、私は一人で大人しく座っている。あまりにも縁のない華やかなで平和な世界にどこか落ち着かない。

 こういうところって、本当に小鳥のさえずりが聞こえるんだ……。

 チュンチュンチュンチュンと鳴き続けていて元気な小鳥だこと。やっぱり、王宮だから小鳥にも厳しいのかな? 

 優雅さを保つために小鳥に「休むことなく鳴き続けろ」って命令してる可能性も無きにしも非ず……。

 手入れの行き届いている木の枝に止まっている小鳥を眉をひそめて見てしまう。

 …………がんばれ、小鳥ちゃん。


「そんな深刻そうな表情でなにを見てるんだ?」

 

 突然の澄んだ声に私は「わぁ!」と驚きの声を上げてしまう。

 目の前に現れた涼しげな笑みを浮かべる男性が一目で王族の人間だということが分かった。私たち平民にはないオーラとその品格。

 育ちの良さと余裕が滲んだハンサムがそこにはいた。後ろに立っているセスが霞んで見える。

 …………圧倒的王子感!

 第一王子と会ったことはないけど、分かる。彼が王子じゃなかったら、もう何も信用できない。

 陽光を受けて輝く透き通った金髪を片耳にだけかけており、色気が半端ない。思慮の影を宿した赤い瞳を持つ凛としたつり目から若き王子の威厳が醸し出される。

 神秘的で整った容貌と場の空気が変わる存在感が私たちと同じ世界の人間ではないことを感じさせた。


 …………国王と会う時はこんな気持ちにならないのに!! もっと気楽な気持ちであってるんだけど!?


 王子は無駄のない動きで私の前に腰を下ろす。

 ……あ、挨拶とかお辞儀とか完璧に忘れてた。

 今まで会ったことのない人間のタイプにすっかり見惚れてしまっていた。元々座っていたものだから、跪くっていう行為を反射的にできなかった。

 不敬罪で首を跳ねられちゃう!! 

 慌てて動こうとすると、「いい」と王子は私の動きを制する。


「君が聖女のケイト・シルヴィだな?」


 私を品定めするかのような鋭い視線を向けられている。

 ……なんか、アリソン国王と全然似てない。国王はこんなにかっこよくない。きっと、王子は王妃似だ。絶世の美女って噂だし。


「なんだ? そんなに人の顔をじろじろ見て」

「あ、私が不本意ながらも聖女になったケイト・シルヴィです」


 私は王子の怪訝な表情にハッとなり、即座に名乗る。

 …………物珍しさで見すぎだ。国宝級の彫刻を眺めている気持ちになるんだよね。


「俺はアヴィン・ドリュー。この国の第一王子だ」

「存じ上げます」

「……それで、なにを見てたんだ?」

「小鳥を……可愛いなって思って」


 笑顔で嘘をつく。

 流石に小鳥を見た感想で「王宮で働かされる小鳥はやっぱり他の小鳥とは違いますな~~ハハッ」なんて言ったら、また牢獄送りになる。

 王子からも牢獄送りにされるなら、私はもう本当に王族とは馬が合わない。

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