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「あ?」
彼は私の言葉に顔を顰める。そんな彼に私は淡々と話し始めた。
「私は王族じゃない。貴族でもない。となると、主は従者を守らなければならない立場に立つ。組織として力を伸ばしたい者は、優秀な従者を傍に置けばいい。盾として、刃としてね。……ただ、私は違う。すでに強いし。守られる必要なんてない。自分の力を高めたいだけだし。……だから、私に従者はいらないの」
スネークマンも誰かに従うことでしか強くなれないなんて、ある種の呪いね。
私は話しながらスネークマンを少し不憫に思った。
「忠誠を誓う相手は私じゃなくて、他の誰かを探して」
私はミミの方へと視線を戻す。彼女は「あ」と小さく声を発するが、それをかき消すように私は口調を強くする。
「レイは? 最初に貴女を助けに行ったのはレイだし。なかなか強いよ。……彼に本来の能力を目覚めさせてもらうといいよ」
「あの場にいて俺に忠誠を誓うなんてよっぽどのバカだろ。お前の強さを目の当たりにして、誰がわざわざ俺の下につこうと思うんだよ」
「あ、それで思い出した! 勝手に動かないでくれる?」
「なんの話だ?」
「依頼以外のことをするなって言ってんの。輪を乱す奴が一人いると、計画がむちゃくちゃになるって騎士団で習わなかった? 私と一緒に遠征している時は言うこと聞いてもらわないと、殺すよ?」
「……は? てめぇ」
「あの!!」
ミミの大きな高い声が私たちの言い合いを止めた。
レイと私ってとことん相性が悪いのかもしれない。少しは関係性はましになったといえども、これだもん。
ミミは私の目を真っすぐと射抜くように見つめて、口を開いた。
「今までどれだけ主従関係を強要されたとしても、決して契約を結びませんでした。私が認めた相手しか主にしないと心に決めて、ここまで生きてきました。私の生きがいは、仕えたいと思える主に出会うことでした。そうでなければ、殺されたほうがまし……。それぐらい主という存在はスネークマンの全てになるのです。そして、その相手にようやく出会えたのです。だから、私もここで引くわけにはいきません」
私は彼女の言葉を聞いて、黙り込んだ。
…………さて、どうしよう。思っていたよりもミミの中で話は深刻そう。
「わ~~! 伝説のスネークマンだぁ! すっご~い!!」って思って気軽に近づいていい存在じゃなかったのかも。迂闊だった……。
私のスネークマン調べが弱かったせいね。もっと、念入りに書物を読み込んでいれば良かった……。




