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『光よ集え、門となり、我々を通せ』
私は急いで詠唱した。無数の光の粒が私たちの足元に収束して、円を描く。
転移魔法はかなり神経を使うから、余裕のある時しか使いたくないんだけど、今はそんなこと言っていられない。私は頭に先ほど通ってきた街に入る前に通ってきた森を思い浮かべた。
ガンガンッと扉を壊す音が部屋に響き、無理やり開けられそうになったのと同時に私たちはこの場から姿を消した。
――間一髪!!
次の瞬間、冷たい夜風が頬を撫でいた。
葉が擦れる音と湿った土の匂い。無事に森の中に転移することができた……!!
三人一気に転移魔法は流石に初めての試みだったけど、無事に成功して良かった。やっぱり、人って窮地に立たされた方が花を咲かせるのかもしれない。
「こんな高位魔法を……それも、この人数で……」
レイは固まったまま私を見つめている。私はレイにピースサインを送りながら、口を開いた。
「聖女なめんな」
「……聖女?」
レイの隣でミミが首を傾げて私の方を見る。
……あ、そうだった。……もう! 私の馬鹿! どうして自ら聖女だってこと言っちゃうかな! 気が緩んでるんじゃいの?
自分で自分のことを責めながら、ミミへと視線を向けた。鼻血はもう止まっていたが、まだ鼻は少し赤く、鼻の周りには血が残っていた。
……てか、いつの間にかミミの首輪の鎖は乱暴にちぎられているじゃん。……レイのおかげか。
レイってムカつくけど、仕事できるんだよね~~。
「貴女、聖女なの?」
散瞳させて私を見るミミの言葉を無視して、私は彼女に質問した。
「どうしてあんな男どもに売られたの?」
「…………それを答える前に、お礼を言わせてください。私を助けてくださって、ありがとうございました」
ミミは深く頭を下げて話の続きをする。
「貴女は命の恩人です。私たちスネークマンはとても恩義を大切にします。あの場で死ぬはずだった命です。これからの私の人生、貴女に差し上げます。どうか好きにお使いくださいませ」
「……私が評判の悪い聖女だとしてもそれを言える?」
私は軽い口調で言葉を発した。ミミはゆっくりと顔を上げて、私と目を合わせる。
見慣れないスネークマンの外見に不思議な感覚を抱く。夢の中にいるみたいだと感じながらも、ミミから決して目を逸らさず、彼女の言葉を待った。
「……評判よりも、私は自分の目を信じます」
ミミはそう言って、小さく口角を上げた。




