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「面倒事に巻き込まれるのも悪くないかも」
スネークマンを真っすぐ見つめながら満面の笑みを浮かべた。
……気の強そうな綺麗な顔立ちをした緑色の巻き髪。女だが、かなり背は高い。涙目の彼女と目が合う。どこか力が抜けたように彼女はその場に崩れ落ちて、「助けて」とか細い声で私に向かって口を開いた。
彼女の首輪の鎖を持っていた顎鬚を生やした男が「おい、誰が座っていいなんて言ったんだよ!!」と乱暴な口調で怒鳴る。
最強のスネークマンがこんな野蛮な男たちに捕まるなんて……。
「勝手に入ってきておいて、俺らのことは無視かいお嬢ちゃんよぉ~~」
大巨漢の男が私に向かって、見下ろすように睨みつけてニヤッと汚い歯を見せてくる。彼は斧のような大きな武器を手にしていた。
……きっと、こいつがボス。
首には分厚いゴールドのネックレス、手にはゴールドの指輪を沢山つけていて、きわめて下品。
「お嬢ちゃんみたいな美少女は高値で売れるぞ~~」
うわっ、気持ち悪い~~~! 犯罪の匂いがプンプンだよ~~!
大巨漢が再び汚い口を開き、残りの二人も私の方を薄気味悪い目で見てくる。虫唾が走るような嫌な視線だ。
それに私のことをお嬢ちゃんっていうけど、もう二十二歳なんだよこっちは!!
「ねぇ、貴女、名前は?」
私は男たちから視線を外して、スネークマンの方に再び視線を戻した。彼女は希望を失ったような目で私を見つめながら、「ミミ」と小さな声を発した。
「おい、誰が喋っていいって言った!? 勝手に喋んじゃねえよ!!」
今度は髭のない男の方が怒鳴り、ミミの前にしゃがみ込む。そして、低い舌打ちをしたのと同時にミミの頬に拳で殴った。ゴンッと鈍い音が部屋に鳴り響き、ミミはその場に倒れ込む。
「おいおい、汚れたじゃねえか~~!! どうしてくれるんだよ~~!!」
殴った衝撃で、ミミの鼻から鼻血が出たのだろう。髭のない男の手が赤く染まっている。ミミは「ううぅ」と小さな呻き声を上げていた。
レイが「お前ら」と凄まじい殺気を放ち、今にも男たちを殺そうとしていた。
な~~んだ、思ってたのと全然違う。
スネークマンが殴られるのを止めることができた。けれど、伝説的な存在のスネークマンの力を見たかったから、私はあえて手を出さなかった。
それで、この有様。
もっと強くて、無敵な存在だと思っていたのに、なんだか残念。
この一瞬で気分の落差が激しい。
私の表情を読み取ったのか、レイは訝し気な視線を私に向けた。
「……なんか期待外れかも」




