42
「はあぁぁあぁぁぁ、私じゃなきゃ、やってけないと思わない? 聖女なんてもの。……だから、私が選ばれたのかな」
「…………それで、魔族と再び戦ったのか?」
レイは私の大きなため息など完全に無視して、質問する。
この男ぉ、と思いつつも私は「戦ったよ」と言って、魔族との戦いの詳細を話した。
魔族は起き上がってきた私を驚いた目で見ていた。
止まっていた鼓動が、再び動き出すなんて魔族からしても恐怖だったに違いない。
私はもう勝つことしか残されていなかった。引き返すことなんてできない。一度「死」を経験した恐怖はまだ心の中に残っていたけれど、怯えている暇なんてない。なんとしても、魔族を倒さなければならなかった。私はその時に、自分の魔力の扱いを完璧に把握した。荒療治みたいなもの。
この戦いの後、魔力の扱い方に苦戦するんだけど、その瞬間だけは全ての神経が鋭くなり、無敵になったような感覚だった。そして、いつの間にか魔族を倒していた。
けれど、私が英雄のような扱いを受けることはなかった。
ちなみに、私が戦場で一瞬の間だけ倒れていたのは、敵の力によって気絶したということになっている。
あの時限定で死から戻ってこれただけ。……その経験は、人間としての一線を越えたような気がする。
このようなことを私が淡々と話している時のレイの表情は硬かった。
私が全て話し終えてもなお、レイは口を開かなかった。恒例の気まずい沈黙が流れる。
私だけが神の力によって生き返り、自分の兄は死んでいるんだもんね。そりゃ、複雑な感情にもなる。
……神に贔屓されてるって良い印象を与えるわけないもん。レイは余計に私のことを嫌いになったかもしれない。
頼んでもないのに神の手によって勝手に死から救済された。そんな私の意志に反した出来事なのに、代償が伴う。
私は左胸の心臓近くを軽く手で押さえて、レイの双眸を真っすぐ見つめる。
重い空気の中、私はゆっくりと言葉を発した。
「私、世界を救えば死ぬの」




