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「努力を語るな、覚悟を名乗るな。そんな空気をつくったのはみんなでしょ? 全ての責任を私に押し付けたいんでしょ?」
「それは……」
「実際、レイもそうじゃん。私を責めたいでしょ? 楽だもんね」
何か言おうとするレイに私は強く口調でそう言った。その瞬間、レイの瞳が揺れ動くのが分かった。彼は絞り出すように言葉を発した。
「……お前は……聖女なんだろ?」
「神曰くそうみたい」
「それなら……、なぜ特別じゃないんだ……? 誰よりも努力してきた、なんてやめてくれよ。どこか、他の人と違う能力を持っているはずだろ?」
違う能力ねぇ……。成長しないとか?
今でこそ最強兵とか言われちゃっているけど、元からそうってわけでもなかったし……。
私は少し悩み、「あ!」と口を開いた。
「魔力の大きさだけは特別だね~。……それだけかも」
「……それだけ?」
レイは眉を中央に寄せたまま、私を怪訝に見つめた。私は「うん」と首を縦に振る。
「本当はさ、『私って昔から最強でした。天才なんです』なんて言えたらかっこいいんだろうけど、そんなんじゃないだよね。かなり泥臭い人生歩んでるよ」
魔力は大きければ大きいほど、扱い方が難しい。うまく扱えなければ、その辺の子供よりもレベルが低くなる。魔力が大きい=強い、とは一概には言えない。ただ、強くなれる潜在能力を誰よりも秘めてはいるってだけ。
レイは視線を落とし、再び黙り込んだ。
こんな風に誰かに自分のことを離したのは初めてだった。どこか少しだけ心が楽になる。
ジェフリーには弱音なんて吐いたことないし……。いや、別にこれも弱音なんかじゃない……!
必死にもがいてきた二十二年間なんだもん。一度ぐらい自分語りしても許されるよね。
…………にしても、またもや気まずい空気感。
「あのさ」
レイの声が沈黙を破った。そして、彼は私へとゆっくり視線を移し、落ち着いた声で私に質問した。
「お前が囮に使って、殺し……絶滅した部隊にいた奴らのこと全員覚えてる?」
殺した部隊、と言われるかと思ったが、言い換えてくれた。
今更、どうして気を遣われているんだろう。
レイはまっすぐ私を見ていた。私の言葉をじっと待っていた。その視線は逃げ場を塞ぐような力強さで、私はその眼差しに応えるように彼を見つめ返した。
「……忘れるわけないよ」
私は静かに声を発した。




