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聖女は世界を救わない  作者: 大木戸 いずみ


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 数時間経って、私は地面に倒れ込んだ。荒い息を整え、仰向けのまま夜空をぼんやりと眺める。

 新しい魔法を試し続けて、一つも成功しなかった。

「はあぁぁぁ~~~」と私はしっかりと声に出してため息をつく。

 二つの分野の魔法を融合ってできないの~~! 理論上はできるはずでしょ~~~!!

 今度は悔しさと共に手足をバタバタさせて、ストレスを発散させる。

 ……私なら意外と簡単にできるかもって思っていたよ。

 自信過剰になりすぎていた。まぁでも、こうしてゆっくり訓練できるのも久しぶりだし、今の時間をできる限り有効活用するしかない。

 遠征は大体騎士団に所属していくものだからね。一人でこんな風に抜け出すことなんてできない。自由時間はほとんどない。


「あと、もう少し試すかぁ」


 私は体を起こして、再び意識を集中させる。

 各魔法分野の魔力配分さえ上手くいけば成功する……! それが一番難しいんだけど……!

 歯を食いしばって、水魔法の魔法陣を足元に作り、その上に火魔法の魔方陣を重ねようとする。

 この相反する魔法をくっつけようとしている私もなかなか無謀だけど、この常識を越さないと強くなんてなれない。 

 ただ、水はどうしても火を拒む。

 また足元の魔方陣が反発し合って消えた。その衝撃で私は軽く飛ばされて地面に転がる。だんだん転がることに慣れてきた。

 あ~~~、もう、これで何度目~~。

 私は転がりながら、衝突し合う二つの魔法分野をうまくはめる方法を考える。

 もしかしたら、魔力配分以外にも問題があるのかもしれない。

 ドンッと何かにぶつかって、私の転がりが止まった。ふと視線を上に向けると怪訝な表情でレイが私を見下ろしていた。

 

「やぁ、レイ」


 私はにこやかに挨拶すると、レイは怪訝な表情で「何してんだ」と口を開いた。

 

「どうしてレイがここに?」


 レイの言葉には答えず、私は全く違う質問で返した。しかし、レイも答えてくれない。仏頂面のまま私を見ている。

 ……この絶妙な空気感からから打破する方法を知らないんだけど。

 とりあえず、立ちたい。

 私がそう思った瞬間、レイが私に手を差し出してくれた。まさか、彼が手を貸してくれるなんて思いもしてなかったから、しばらく手を見つめたまま固まってしまう。

 …………どういう心境の変化? 魔族に心を支配されちゃった!?


「腕、血出てる」


 そう言われて初めて、右腕に痛みを感じた。魔法が失敗した衝撃で腕が切れてしまったようだ。気づけば地面に血が滴っていた。

 魔族や魔物との戦いでは怪我しなかったのに、自分で傷を負ってしまうなんて……、ダサすぎ。トホホだよ。

 私がレイの手を取る前に、私の右側にしゃがみ込み、レイは治癒魔法で腕を治してくれた。


 ……………………どうしたん、話聞こか?

 

 喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。

 ものすごく気になるけど、私から何か聞くと嫌な顔をされるのは目に見えている。それに、私は言及しないと決めた。このまま依頼を終えたらレイとはきれいさっぱりおさらばだ。それまでの我慢。

 どのタイミングでレイが私に優しくなったのかがさっぱり分からないけど、絶対に私からは何も聞かないんだから……! これはもう意地でもある!!

 私は右腕が治ったのと同時に「ありがとう」と短くお礼を言ってその場に自力で立ち上がった。

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