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魔物退治終了……!
私はあくびをしながら、血を流し倒れ込んでいる巨大な魔物たちの上に乗って体を上に伸ばす。
これで依頼の十三件目を終わらせた~~。雑魚ばっかりで助かる~~。
家を出てから、一週間ぐらいにしてはかなり順調なペース……! このままのペースだったら、一ヶ月もかからないうちに終わらせれちゃうじゃ~ん!
一人で戦えるって最高かも。他に気を遣わなくていいし、仕事の効率が上がる。……って、一人じゃなかった。
私はハッと思い出し、魔物のそばに立っているレイへと視線を下ろした。彼は目をぱちくりとさせながら私を見ていた。
遠征中、もっと暴言を吐かれるのかと思えば意外と大人しかった。というよりも、初めて会った日が嘘みたいにレイは静かになった。
別に殺気や嫌悪も感じないし……、何があったんだろう。魔族よりも怖いんだけど。
私は疑い深く彼を見つめながら、レイの元へと降りていく。
「どうしたの?」
「いや……」
私はレイの態度に首を若干傾げる。
……本当にどうしちゃったの。あれほど私の悪口を言っていた威勢はどこに?
私は戸惑いながらも、「もう少し奥で火を起こそう」と足を進めた。レイは黙ってついて来る。
…………なんか気持ち悪いけど、足手まといになっていないし、荷物持ちをしてくれているわけだからら、言及しないでおこう。
むしろ、レイはかなり優秀な方だと思う。性格を除いて。
決して邪魔をしない。私の動く三歩先まで読んで、完璧なサポートしてくれる。洞察力と反射神経が相当良い。……それに、なんかジェフリーと知り合いっぽかったし。
あれほど最低な言葉を投げられかけたけど、そこまで悪い奴じゃないのかもしれない。
一週間も経つと、レイから何を言われたのかあんまり覚えてない。なんとも都合よくできている私の記憶力。
少し歩いたところで、それなりい大きな木の幹に背をつけて座り込む。
「ふぅ~~~、ここにしよ~~」
流石にこれほどの仕事量を短期間ですると、身体に少し疲労を感じる。
……これも全ては王家秘蔵書庫とエワット特別自治区のため。王家秘蔵書庫とエワット特別自治区のため。王家秘蔵書庫とエワット特別自治区のため。
大切なことだから、三回頭の中で唱えておく。
ここからは自分の脳内を洗脳して、いかに残りの依頼を頑張れるかだもん。褒美のために、やり遂げないと……。
レイは魔法で火を起こし、鞄から手のひらサイズのパンを出して私に投げる。もう私といることに慣れたのか、随分と手際よくなっている。
私は硬いパンを受け取り、力強く齧った。
こんな味気ないパサパサのパンじゃなくて、ジェフリーのご飯が食べたいよ~~。
心の中で嘆きながら、黙ってパンを食べり続けた。レイがずっと口を閉ざしているから、私も話しかけづらい。
こんな気まずい空気感なら、まだ「クソ聖女~」って話しかけられた方がいいかもしれない。……いや、それもそれで面倒だね。
「じゃあ、私はちょっと周囲を見てくるね」
少し休憩して、私はその場に立った。レイは「ああ」と短く言葉を返す。
誰もいない静かな場所へと私は足を進める。日はすっかり沈んでおり、明かりを頼りに私は歩く。しばらくして、木々に囲まれた広さのある場所へと着いた。
「ここでいっか」
私は小さく息を吸って、己の魔力に集中する。
…………もっと強くならないと。
ミレッタレベルを軽々と倒せるようにならなければならない。力尽くでは倒せない。もっと頭を使って、戦わないと……。
「新しい魔法を生み出してやるんだから」
少し冷えた夜の森で一人、訓練を始めた。




