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「国民を安心させるのは私の仕事内容に入ってないのよ」
私はニッと口角を上げて、『絡縛の蔦を奴を覆え』と詠唱を発した。その瞬間、男性の地面から高速で蔦が伸びてきて彼を縛り、身動きを取れないようにした。彼の身体を巻く蔦の力を少し上げると、男性は苦しそうな表情を浮かべる。
さっきの言葉のお礼だから、ちゃんと受け取ってもらわないと。
王子たちは私のこの行動に口出すことなく、黙って見ていた。私は笑顔のまま男性を測るように見る。
「へぇ……」
この男性は一瞬で蔦に覆われたけれど、私はしっかりと見ていた。最初の一本で足を捉える予定が、彼の凄まじい瞬発力で蔦を避けていた。
まさか、あれを避けられるとは思わなかった……。
ほんの少しだけ男性に興味を抱き、「名は?」と聞いた。男は顔を顰めながら「レイ・ウッド」と答えた。お前になんか教えるか、って言われると思ってたけど、あっさりと教えてくれた。私は彼を締めつける蔦の力を少し弱めた。私はそのまま笑みを崩すことなく「殿下ッ」と勢いよく王子の方を振り向く。
「なんだ?」
「こいつと一緒に過ごすなんて嫌です」
「……まぁ、そうだな。……でも、がんばれ」
王子は苦笑いを浮かばながらそう言った。
これならまだ赤ちゃん抱いてる方がましだったかもしれない。なんでこんな男と一緒に遠征に行かなきゃならないの~~!
「それに、お前にとってマイナスになるとは限らないぞ?」
慰めの言葉にしては弱すぎるよ、王子。
「そもそも、この男を私に預けるって、どういう目的なんですか? まさか、嫌がらせ……!?」
「そんな面倒くさいことをいちいちするか」
王子の反応を見ると、今は教えてくれなさそう。
訳アリ成人男性を預かるのか~~~。
脳内の私は土いじりをし始めていた。そんな私に王子は全く違う話を持ち出す。
「そういえば、報告書を見た時に気になっていたんだが、お前は一体どれだけの魔法を操れるんだ?」
「全てです」
私の答えに王子が目を丸くする。セナもレイも固まったまま私を見つめていた。
エッヘン! きっと、全ての魔法分野に精通している者はこの世界で私ぐらい……!
もちろん、ズルとかはしてないよ。聖女だから全分野を操れるってわけでもない。ただ、足掻いてきただけ。
色々な分野に分かれている魔法を基本的に一つに絞り込んで、その分野に集中して魔法を習得する。これが普通。水魔法なら水魔法! って、一つの分野に特化させないと、習得できないぐらい魔法と言うのは繊細で複雑。
一見簡単にできるように見えるのだけど、結構難しい。だから、エリートたちは幼い頃から厳しい特訓を受けていたりする。それはそれは血と涙の訓練をね。
エリートとは違い、私はただの平民だから、魔法について学び始めたのは遅かった。
聖女って神託を受けても、何もしなかったぐらいだもん。追い上げは想像を絶する大変さだったよ。
すごく若くして戦場に行った時も、私は普通の兵。ただの兵。他のみんなと変わらぬ兵。……という意識だった。最悪な評判を手にした私にとっての最初の戦場。ここで私の何かがプツンと切れた。
感情を自ら壊した。
……って今はそんな日のことを思い出さないでおこう!
とにかく私はその日から、圧倒的な強さに執着し、追い求めた。
それで、魔法全分野に手を出すことに決めた。私の人生を賭けて、頭と腕を磨いた。遊んだ記憶なんて少しもない。ただ、ひたすらに勉強をして、剣の稽古をして、魔法の技術と練度を上げた。……だから、私の外見の成長は止まったのかな!?
睡眠不足のせいで身長が伸びなかったんだ……。ああ、これは大きな代償だわ……。




