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目が覚めると、見慣れた天井だった。
……家だ。
パチパチを瞬きをして、身体をゆっくりと起こす。部屋の外からは何やら話し声が聞こえてくる。……それに、シナモンの匂いもする。
「お腹減った~~~」
私はベッドから出て、お腹をさすりながらパジャマのままで部屋を出る。頭がまだ回ってない。
なんか体がだるい……。そういや、私、いつの間に家に? てか、何があったんだっけ?
「ねぇ、ジェフリー」
弟の名を呼びながら、キッチンへと入った瞬間、私はこんな場所にそぐわないオーラを察知して、固まった。
「…………え? 王子?」
つい、「殿下」と呼ぶのを失念してしまった。寝起きだから仕方ないよね。……てか、また寝ぼけているのかもしれない。
「姉さん!? 起きたの? ……って着替えてないの? アヴィン殿下の前だから、ちゃんとした格好を」
「いや、気にするな」
ガタっと席を立つジェフリーに、王子は私の方をゆっくりと振り向き、王子は爽やかに口を開いた。
王子にパジャマ姿見られちゃった。……ってそんなことは重要じゃなくて! 絶対にここにいるわけのない人がここにいる!
…………えっと、どうすればいいの!?
私が王宮に行った時のお作法はある程度把握しているけど、朝起きたら我が家の食卓に王子がいる時の対応方法なんて知らない。しかも、ちゃっかりジェフリーと一緒にコーヒーなんか飲んじゃって……。
部屋に「王子がうちに来てるよ」ぐらいのメモぐらいは欲しかった。そしたら、せめて着替えぐらいは……、いや、信じないかも。王子が一般家庭に訪問なんて前代未聞だもん。
もしかしたら、目の前にいる王子も王子じゃないのかもしれない……!
私がじっと王子の方を見つめていたら、ジェフリーが私を軽く睨んだ。
「ちょっと、姉さん、失礼なこと考えてるでしょ。アヴィン殿下がわざわざ姉さんの体調を気にして来てくれたんだよ」
「え~~~、なんで?」
「なんでって、姉さんが瀕死だったからだよ。魔族を倒して……って、また肩から血が滲んでる」
「うわ! ほんとだ! 私のパジャマが~~!」
「気にするのはそこじゃないでしょ。この怪我、治癒魔法が全く効かないから……、包帯巻き直すよ。後、ちゃんと着替えてきて。落ち着いたら三人で会話しよう。申し訳ございません、殿下」
ジェフリーは王子に軽く頭を下げたが、王子は「賑やかだな」と小さく笑った。…………王子が寛容で助かった。
パジャマで王子の前に現れた刑でまた牢獄に戻るところだった。
♢
私はジェフリーに連れられて、ベッドに座り、ジェフリーに背中を向けた状態で上の服を脱ぐ。
ジェフリーは包帯を外し、薬を肩に塗ってくれる。ジェフリーが適切な手当てをしてくれているおかげで、肩の怪我は悪化していない。
痛いな~~~と思いつつも、包帯を巻きなおしてくれているジェフリーに「ありがとう」と呟く。
「……こんな深く噛まれていて、平気な顔できている姉さんが凄いよ。もっと苦痛に悶えるもんだよ」
「これよりも酷い怪我をしたことがあるからね」
「したことがあっても、慣れるわけじゃないでしょ」
ごもっとも。ぐうの音もでません……!
包帯を巻き終わり、ジェフリーは「じゃあ、僕は殿下の元に戻るから。着替えてから来てね」と言って、部屋を去った。
この家にジェフリーと私しかいないといえども、一時的に王子を放置するのはまずいもんね。
……もちろん、家の外に王子の警護が数名いるから安全ではある。私が感じた気配では家を囲うようにして六名ほど立っている。そんな超ビップが我が家にいるなんて……。
私は「王子が帰ったら、もうひと眠りするもんね」と言いながら、適当な服に着替えた。




