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この村の全体が冷気に包まれ、一切の熱が失われた。私以外の全てが凍り付いている。ミレッタも、騎士たちも。赤子すらも。
氷の中は時間が止まっているようなもの。生と死の概念などない。苦しいわけでもないし、冷たさも感じることがない。ただ「次の瞬間」を私が決めることができる。……つまり、私の一存で命を吹き飛ばすことができる。
…………成功した。……にしても、我ながらになんて魔法なの。
寒い、とてつもなく寒い。極寒じゃん。私のプルプルの唇が裂けちゃう。
吐く息の色が白くなっていることに気付く。あまりにも異様な静寂に恐ろしくなる。空気が冷たさで張り詰めている。
先ほどまで燃え上がっていた炎も嘘みたいだった。崩れかけている家も氷に包まれて硬直している。
ガクッと急に体のバランスを崩す。キーンっと頭の中で痛みが響く。あまりにも一気に魔力を使ったせいで、眩暈と吐き気に襲われる。こんなところで気を失うわけにはいかない。「……ガハッ」とその場に吐血する。
まさかこの魔法がここまで身体的ダメージを負うなんて。心臓の音がドクドクと大きくなっているのが分かる。
……うちに帰ったら、ジェフリーに大好物のほっかほっかのアップルパイを作ってもらうんだから!! 死ぬわけにはいかないの!!
意識が朦朧とする中、私はカッと目を見開き、ミレッタの方へとゆっくり近づく。完全に固まっているはずの彼女の青紫色の瞳が揺らいだのが分かった。
「まじ……?」
驚きと共に私はすぐさま凍ったミレッタに、なけなしの魔力を使い『爆ぜろ』と呟いた。
「嘘でしょ……。壊れない。そんなのアリ……?」
私は目を丸くして、目の前の氷によってミレッタを見つめていた。彼女は内側からとんでもない魔力で防御しているのか、私の魔法が効かない。
頭痛と心臓の痛みに耐えきれなくなり、私はその場に膝をつき、「……げほっ……げほっ……」と再び吐血する。そして、鼻血も出ていることに気付いた。
……もうこれ、大量出血で死ぬんじゃない?
今日、血を流しすぎ。あ~あ、神様、聖女にする子を間違えちゃったでしょ。そろそろ、私、終わっちゃいそうだもん。
私はその場に倒れ込み、仰向けになりながら動かない空を見上げた。空までもが停止している。……この村全体の空間が全て凍っちゃったんだ。
この力の代償がこれかぁ……。なんか納得できちゃう。これは命削られちゃう。
「くっそ~」
どうせまた世間では仲間すらも凍結させたって非難を浴びるのよね、私。……まぁ、でもその時は私も死んでるからいっか。
全てに疲れ果てて、私はゆっくりと目を瞑る。




