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今までで一番強い敵じゃん。私一人じゃ、彼女を倒せないかも。
それなのに、私は思わず口の端を上げてしまう。絶体絶命という状況に興奮していた。ここからどう切り抜けて、敵を倒すか。それだけが頭の中にあった。
「素晴らしい魔法の技術ね。正確で完璧、強力で洗練されている。……けれど、聖女にしてはたいしたことなかったかしら」
ミレッタは息を整えながら、私に視線を向ける。
「それはどうも」
「この私に一撃を与えたことは褒めてあげるわよ。ただ、今の貴女じゃ、私を倒せない」
「おい! とどめ刺せてねえじゃねえか! なんとかしろよ!! お前がこいつを倒さないから、俺たちがこんな目に……!!」
再び耳障りな男の声が割り込んでくる。
あ~~~、うるさい。本当に空気の読めない男ね。いっそのこと、魔法でしばらくの間、気絶させてあげようか?
私がジェイに視線を移した次の瞬間、彼の方から『お前は生涯孤独で誰にも愛されずに死ぬんだ。両親に見放されて、どこに行っても嫌われる男』と囁き声が聞こえた。
わぉ、なかなか強烈。……じゃなくて!! しっかり、ミレッタの餌食になっちゃったじゃん!
ジェイは急に頭を抱え始めて、目は見開いたまま「ああ、あ、うわぁぁ、そんなことない。そんなことない。俺は優秀なんだ。周りが皆くそったればかりなだけだ」と呟き始めた。
「折角力を蓄えたのに、今のでマイナスになっちゃったから、私に食べられてね」
ミレッタは満面の笑みをジェイに向ける。
そんな余裕のあるミレッタとは対照的に歯を食いしばりながら「違う違う違う」とひたすら呟き続けるジェイ。
…………彼に対して「助けたい」という情が湧かない。きっと、これが非情だって言われるんだよね。だけど、私に対して酷いことを散々言ってきた人間だよ? どうして助けないといけないの。
「黙ってみてるのね。この男が絶望していく様を……」
ミレッタの言葉に私は言葉が詰まる。少しして、私は口を開いた。
「……うざかったし、こいつのことは好きじゃない。どうぞ、食べたら? って思うよ」
「…………なかなか言うわね」
「けど、貴女たち魔族のことはもっと嫌いなの」
私は己の内にある全ての魔力を集中させて、ミレッタを見据えて『全ての熱を奪い、世界を凍て伏せろ』と唱えた。
この魔法を使えるものはまだ誰もいない。私も初めて使うほど、超最難関レベルのもの。
――音が消えた。




