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「惜しい」
ミレッタの声が聞こえた。それと同時に土壁の中から眩い青い光が放たれる。その光に思わず目を細めて、距離を取ろうとした時、パリンッと剣が割れる音がした。
私の剣を握って、壊したんだ……。怪力とか動体視力に長けているとかってレベルじゃない。あの状況で、私の剣が通らなかったなんてありえない。
土壁が崩れて、ミレッタが舌で唇をペロッとなめながら出てくる。
「ああ、力がみなぎるわ~~」
…………これはちょっとまずいかもしれない。
かすり傷が一つもないなんてありえない。今までの魔族とは比べものにならないほど強い。
肩がズキズキと痛み、再び血が滴る。魔力を使いながら剣をぶん回しすぎた。アドレナリンですっかり忘れていたが、あれほどの攻撃をし続けていれば、肩に重く負担がかかる。
う~~~、痛い。
魔法が効かない特別仕様の牙なんてやめてよね……! 不便しちゃうじゃない!
「うおおぉぉぉぉぉ!!」
突然ミレッタの背後から眉を潜めて切羽詰まった顔をしたシャーロットが剣を構えて突進してくる。
……すごい形相! 眉毛が逞しい!
シャーロットはすぐにミレッタに攻撃をかわされて、ふわっと宙に舞ったミレッタに見事膝蹴りを顔にくらわされる。
うわっ、痛い。
私はシャーロットの顔が凹むのを見て、思わず顔を顰めてしまう。
遠くに飛んでいくシャーロットに『風よ、彼女を包め』と詠唱を発する。犬猿の仲だけど、味方同士助け合わないといけない。今もなお燃え盛っており、半分ほど崩壊した家に落ちないように守る。
それにあの蹴りは結構だったもんね。衝撃をやわらげないと、意識を失ってしまう。……シャーロットは団長だもの。意識は保っといてもらわないと。
にしても、シャーロットはミレッタの精神的な攻撃を受けていたはずなのに動けるなんてすごい。
「シャーロット団長~! 大丈夫ですか~!」
一応安全を確認しかないと。団長だし。
私が団長に手を振っていると、団長は口から血を流しながら「後ろだ!」と私に叫んだ。私はすぐ顔の隣にまできている足の甲が目に入った。すぐさま私はミレッタの足を握り「ちょっと、卑怯だよ」と彼女を睨んだ。彼女は宙に浮きながら「これを止めるなんて……!」と、驚きと共にどこか嬉しそうに口角を上げた。
……全く気配がなかった。本当にどれだけ強いのよ、貴女。
私は小さく詠唱を呟く。
『雷よ、触れし者の内へと走れ。息の根を止めろ』
ミレッタは体を震わして、「……カハッ」と喉奥から押し殺した声が漏れ、口から涎が垂れる。この魔法は直接心臓に届く。雷は外を焼かず、内を駆け巡り、身動きを止める。
顔を強張らせながらミレッタは『私の領域から出ていけ』と声を絞り出した。バチンと魔力がぶつかるような強い跳ね返りで、私は彼女から距離を取る。
…………これで倒せないって何者?




