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聖女は世界を救わない  作者: 大木戸 いずみ


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2

「姉は?」

「「あちらです!」」

 

 ジェフリー・シルヴィ。この全く似ていない男が私の弟だ。

 似ていると言えば、髪の色ぐらい。目に若干かかるほどのストレートな黒髪に、ボルドーの暗い瞳。顔は大人っぽく、私とは全く似ていない。

 私たちを知らない人からすると、ジェフリーは兄に見えてしまうと思う。

 だからこそ、ここでしっかりと強調しておく。「弟」です!

 しゅっと引き締まった輪郭に、理知的な印象を与える少し切れ長の目をした端正な顔立ち。背は随分と高く……、その身長が羨ましい。

 くぅッ、いつも見下げられている身にもなってほしいよ!


「これで何度目なんだい……」


 呆れた様子でため息をつくジェフリーに私は大きな声を上げた。


「ジェフリー! 待ってたよ~~!」

「すまない、出してやってくれ。陛下からの許しはもらっている」

 

 私のことを完全に無視して、ジェフリーは近くにいる衛兵にそう言った。衛兵はやや慌てた様子で腰から鍵を取り出す。

 これにて、私はようやくこの閉鎖的な冷たい牢から無事にでることができた。


「今回もありがとう、ジェフリー」

「いい加減、王命を受ければいいのに……」

「私にそんなことを依頼する王様が間違ってるの!」

「また牢獄に入れられるよ」


 ジェフリーの言葉にハッと両手で口を覆う。

 また牢獄に戻るなんて御免だ。


「じゃあ、家に戻るよ、姉さん」

「うん!」

 

 ジェフリーの柔らかな口調に私は笑顔で答える。

 私は表情が豊かだと言われるが、ジェフリーはその逆。感情をあまり表に出さない。

 衛兵二人に「お世話になりました~」と私は軽い口調で言う。衛兵たちは戸惑いながらも頭を軽く下げた。……多分これはジェフリーに対してだろうけど。

 我が弟は騎士からの人望も厚く、尊敬されている。私と違って立派な弟なのだ。


「もう次は助けないからね」


 ジェフリーの言葉に私は「は~い」と明るく答える。ジェフリーはやれやれと言わんばかりの表情を私に向けていた。

 何はともあれ、今回も私は無事に牢獄から脱出できたのである!

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