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「おい、何が起こっているんだ」
倒れ込んだシャーロットもゆっくりと立ち上がり、丸い目でそう呟く。
私はそんな彼女を無視して、邪悪な魔力の居場所を突き止めた。……しかもかなり強力。それに今までとは質が違う。
皆は切迫した顔で必死に魔法で火を消そうとするが、この炎を一瞬で消せる魔力など持っていない。炎はどんどん燃え上がり、恐怖も膨らむ。多くの者が叫んだり、飛び火によって火傷を負ったり、炎に包まれた瓦礫に押しつぶされたりしている。
この騒がしい中で、私は静かに口を開いた。
「シャーロット団長」
「なんだ」
シャーロット団長は眉を潜めながら私へと視線を移す。。
「生き残りたかったら離れた方がいいよ」
「は?」
「これは貴女たちの手に負えるものじゃない。村人たちもきっと殺されている。……いつもの魔族と違うよ、こいつ」
「私がお前の勝手を許すと……?」
顔を顰めるシャーロットに私は口角を上げた。
「だって私『聖女様』だもん」
そう言ったのと同時に私は走り出した。「おいッ」というシャーロットの声が聞こえてきたが、私は応えることなく、どんどん村の奥へと全力疾走する。
燃え上がる炎に包まれた家々を通り過ぎて、敵がいる場所へと向かう。……私は己の殺気を完全に消しておく。
突如、炎の向こうで泣き声が響いた。
…………子ども? いや、赤ちゃん? ……けど、そんなわけ。聞き間違いかも。
私は立ち止まることをやめ、前に進もうとする。しかし、再び聞こえた。炎に掻き消されそうになりながら、甲高い赤子の泣き声が耳に届く。
生存者がいるはずがない。罠かもしれない。
そう心の中では思っているのに、体は気づけば動いていた。
これほどの炎はもう一発では消せない……!
私は『水よ、私を覆い炎から守れ』と自分自身に魔法をかけて方向転換し、炎の中へと突っ込んだ。崩れた瓦礫などが玄関に覆いかぶさり、中に入れない。小さな隙間を見つけて、そこの瓦礫を無我夢中でどかした。魔法のおかげで手に火傷を負うことはない。
…………あと少し。
灼熱に包まれて、額に汗が流れる。瓦礫で手に怪我を負いながらも、私は「あとはこれだけ」と力を込めて大きな瓦礫を引っ張った。
ついに、私が入れるほどの隙間が開く。赤子の「ふぎゃあ、ふぎゃあ」としゃくり上げて途切れる泣き声がさっきよりも明確に聞こえた。
戦場に赤ちゃんの存在はものすごく邪魔。抱えながら、魔族と戦えるほど器用じゃない。今回は特に。……だけど、助けないって選択はないのよね。
私はふぅっと短く息を吐いて、私一人が入れるぐらいの隙間に足から入った。
………………家の中だけ燃えていない。
家の中に身体を入れ、地面に着地した瞬間、すぐに違和感を抱いた。




