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「もうすぐ着くぞ!!」
シャーロットは声を張り上げた。その言葉が耳に入ってきた瞬間、「ようやく村だ~」と力の抜けた声で呟いた。
村が見えてきた……のは良いけど、何この不穏な空気。「魔族がいますよ」って村に足を踏み入れなくても分かってしまう。
あからさまここから空気が違う。山を越えて見えてきた村の上だけ雲が重く暗い。周囲の空は晴れているというのに……。
我々は全員察した。今から戦う敵がここにいる、と。
「気を引き締めろ」
低いシャーロットの声が響く。私たちは警戒しながら、村へと足を進めた。
人がいない。……それに静か。ジャリジャリと私たちが歩く足音だけが響いている。
魔族がいるなら、こんなに静かなはずがない。血が飛び散っているわけでも、悪臭が漂っているわけじゃないけど、不吉な匂いはプンプン。
まさに「死んだ村」って感じ。
私は列から抜けて、家の中へと勝手に入っていく。後ろから誰かが「おい勝手に行動するな」と注意をしていたが、私は無視して家へと入った。
小さな一軒家の扉は開けられたままで、私はスッと中に入る。襲われた形跡はないし、部屋は乱れていない。食卓には腐ったスープが残っている。
…………魔族だったら、むちゃくちゃにするはずなのに。こんな綺麗な形で残っているなんておかしい。今までに体感したことのない不気味さ。
説明はできないけど、ただ、この村が壊れたことだけは分かる。……物理的にって意味じゃなくてね。
「ここで何してる」
私が家の中を物色していると、怒りに満ちたシャーロットの声が聞こえた。
私は咄嗟に振り向いて、「シャーロット団長」と笑みを作る。彼女は和を乱すようなタイプが大嫌い。つまり私のことが大嫌い。私もこれは良くない行動だとは自覚している。
……ただ好奇心に負けてしまうんだよね。
騎士とか兵とか圧倒的に向いていない。聖女じゃなかったら、絶対にここにいないと思うもん。
「何をしているだ、と聞いているんだ」
私が何も答えないでいると、シャーロットは更に鋭い視線を私に向けてそう言った。
恐ろしい女団長だわ。子どもにトラウマを与えるほどの殺気じゃない。……魔族がいる場所では殺気は抑えた方がいい。
私が「団長、もう少し殺気を抑えて……」と言った時だった。チリンチリンッと鈴の音が鳴った。
「なんだ?」
「気付かれた! 今すぐ家を出て!」
私は咄嗟に体全体に魔力を溜めて、その反動で重い気りシャーロット団長に体当たりした。流石に魔力の手助けがないとシャーロットを押し出すことはできない。
私たちは一緒に外へと飛び出た。次の瞬間、凄まじい勢いで家が燃えた。炎の爆ぜる音とその熱さに私は顔を顰める。
……もしかして、家が全部罠?
炎が隣へ移らないように、私はすぐに『水よ。炎を覆え』と詠唱を発して魔法で鎮火させた。屋根が崩れ、真っ黒に焦げた家だけが残った。
しかしすぐに次々と勝手に家が燃え始めた。……私の鎮火は意味がなかったというわけね。
私は周囲を見渡して魔族の存在を察知しようと感覚を研ぎ澄ました。




