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「いいね、最高だわ」
女性騎士は鼻に皺を寄せて笑みを浮かべる。その瞬間、ギロッと鋭い視線を感じた。……シャーロットだ!
「あ、やば」と隣で女性騎士が小さく呟く。私たちはすぐさま会話するのをやめて、前を向きながら真剣な表情を作る。暫くして、シャーロットは前を向いた。
ふぅぅぅ、危なかった……。油断大敵。
「相変わらず、肝が冷える睨みだこと」
女性騎士の言葉に私は「そうだ、シャーロット団長はジェイのことどう思ってるの?」と聞いた。
それほど悪い印象を同じ騎士団に与えているのであれば、あのシャーロットが嫌がらないはずがない。
「ジェイの家がそれなりに名のある貴族でね。なかなか追い出せないのよ」
「家柄がご立派って大変なのね。育ちも良いみたいだし。私は平民だから全く分からない」
私はたっぷりの皮肉を込めてそう言った。
貴族でなくて良かった~。だって、数え切れないほどの面倒くさいマナーなんかを覚えないといけないわけでしょ? …………一日目で諦めちゃいそう。
「貴族って立派でもなんでもなくて、ただの地位だからね。ジェイはただ貴族に生まれ落ちたってだけで威張っているだけの大馬鹿野郎よ」
私は顔が険しくなっていく女性に大きく頷きながら、「よくジェイは騎士になれたね」と口を開いた。
人の悪口は決して乗らない! それは鉄則!
だけど今回は私が、彼に散々罵られた立場だから少し違う。多少の文句は言ってもいい。人の噂は信じないけど、女性騎士の話は納得できる。
「彼の親がジェイの素行の悪さを見かねて、騎士団に入れたのよ。更生するだろうって」
「とんだ大迷惑じゃん」
「本当にそう。当時大変だったんだよ。どこ騎士団にジェイを入れるかって大問題になったんだから」
「……全然知らなかった」
「そりゃそうよ。貴女が前回第二騎士団に派遣された時はまだジェイはいなかったもの」
女性騎士の様子を見ていると、ジェイに苦労しているのだと見ていて分かる。
…………さっきか、私まだこの女性が誰かを思い出せていないし、名前をも知らない。
ジェイジェイ言っているせいで、全く興味のない男の名を覚えてしまった。……悔しい。私の記憶メモリーを使うならもっと有意義な情報を取り入れたかったのに。
今更、名前を聞けないし……。
しょうがないよね。生きていれば、その人のことを忘れちゃっていても覚えているふりをしなければならないこともあるもんね。
またどっかのタイミングで探ろっと!




