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「あ~~~~、行きたくないよ~~~」
日が昇る前に起きて、ジェフリーが作ってくれたスープを一気に飲み込んだ。泣き言をいう私にジェフリーはいつも通りどこか呆れた目を向ける。
「僕、今日休みだけど、姉さんの朝ご飯を作るために」
「ほっっんとうにありがとう! 今日も元気に行ってくるね!」
私はジェフリーが最後まで言うのを遮って、明るい声色を被せる。
そう、ジェフリーは料理がめっきりできない私のためだけに朝早く起きてスープと卵サンドイッチを作ってくれたのだ。何も文句は言っちゃダメだ。
荷物を持って、私が「気を付けてね~」と言って玄関の扉を開ける。
「それ絶対にこっちのセリフ」
「私、強いから大丈夫だよ」
「それなら僕もだよ」
たしかに……。
私は心の中で納得しつつ、家を出た。まだ太陽が出てきていないせいで、若干肌寒い。一瞬身震いをさせて、私は歩き出した。
ポジー村まで穏やかに行けますように!!
♢
「私の騎士団で勝手なことをするんじゃねえ」
凄まじい形相で私を睨むこちらの女性は、第二騎士団の団長であるシャーロット・リリス。可愛い名前に相反したガタイのよさに、いかつい顔立ち。剛毛な茶髪は頭の後ろで高くポニーテールされている。迫力のある焦げ茶の瞳はいつも私に対して怒っている。
今まで一度も微笑まれたことなどない。……というか、彼女は笑わないことで有名。騎士たちの間でもシャーロット団長を笑わせることができたら金貨何枚! なんて賭け事が行われるぐらい笑わない。
「別に勝手なことしてないわよ。ただ、そこの彼が喧嘩を売ってきたから買っただけ」
私は近くで鼻血を出しながら木にもたれている騎士を指さす。「団長! 俺は別に」と反論する騎士を団長の鋭い視線で黙らせる。彼女のその迫力には周囲にいる騎士たちも怖がっていた。
この殺伐とした空気に私は心の中で「やっぱり第二騎士団は私には無理だったんだ」と嘆いていた。
「まぁまぁ、落ち着いて」
ここで救世主の副団長が仲裁に入ってくれる! ハリス・カリルトン! 名前の雰囲気通りの人です!
ハリス・カリルトンって名前を聞いて、もじゃもじゃの赤毛で丸眼鏡かけてそうで、柔らかな雰囲気を持っていて、カントリーソングとか歌ってそうって思ったでしょ? ……そう! その通りの人なの!
「ハリス」
ハリスが現れたことによってシャーロットは少し落ち着く。
シャーロットとハリスの信頼関係は私が見ても素晴らしいと思う。シャーロットはハリスに強く言わないし、ハリスはシャーロットの言うことに従いつつも口出しをする。
…………シャーロットとハリスが恋仲って噂もあるけど、私は信じてない。この二人がイチャイチャしているところなんて想像もできないし、したくない。




