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追放された騎士の逆襲 ~世界最速で前作のトゥルーエンドに到達した俺は新作ベータ版でゲーム内転生し無双する~  作者: 琥珀 大和


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第17話

一番近くで馬から落ちて呻いている男の顎をサッカーボールのように蹴る。


冒険者用の武具店で購入したブーツはつま先が鋼のプレートで補強されているから強烈だろう。一言も漏らさずに静かになったところを見ると、気絶どころの騒ぎではないかもしれない。ただ、相手は同業者なのだ。ここで取り逃すと遺恨を残してしまい、いつ報復されるかわからなかった。


「てめらぁ!」


威勢よく襲いかかってきた別の男は、近くの木に剣を打ちつけて一瞬動きを止める。そこを逃さず腹を刺突した。引き抜きながら返しで喉にも刺突を見舞い、とどめをさしておく。戦いの場とは、いつも平坦で障害のない場所ではない。それに対応できるか否かは、修羅場を潜った数がものをいう。


離れた位置から弓を射ようとする敵が視界に入ったが、すぐに後方からの弓矢で倒された。どうやらダークエルフの姉弟はこちらに味方してくれているようだ。


「おらぁ!」


野太い声を出しながらバルバロイがハンドアックスで敵の頭をかち割った。年齢レーディングに合わせてグロさが軽減されるのはさすがである。


敵の剣撃をかいくぐり、背後から刺突する。騎士ほどでないにしろ、防具を備えた相手には斬りつけるよりも刺す方が有効だ。


同じように刺突してきた敵の剣には、こちらの剣身を絡ませて重心を崩す。そこから鍔部分を使って殴打し、間合いができた瞬間に胸部を刺突する。


複数の敵が俺に押し寄せたタイミングでは、ダークエルフからの遠隔攻撃とバルバロイによるハンドアックスの投擲が相手の猛攻をねじ伏せた。なかなか良いコンビネーションである。


「貴様、元騎士か?」


一番後方で控えていた男が俺を見てそう言った。


他の者たちよりも上背があり、肩幅や胸のボリュームもそれに合わせたものである。貴族か裕福な家庭に生まれ、栄養をしっかりと吸収して形成された体躯だろう。俺の剣技を見て“元騎士”と問うところも含めると、こいつも同じ境遇なのかもしれない。


「そうかもしれないな。だが、身分を墜としても、おまえのように人間として落ちぶれてはいないぞ。」


「知ったふうな口を聞きやがって。」


その男はすぐに振り返って走り出した。

弓矢による遠隔攻撃が当たらないよう、木々を巧妙に抜けていく。


逃走したというよりは、地の利を生かせる場所まで移動しているといったところだろう。


「分隊長、そっちは任せたぞ。」


バルバロイがそう告げてきた。


俺は手を挙げてそれに答えておく。


相手が元騎士だとして、どの程度の実力かはまだわからない。しかし、もし剣聖(ソードマスター)だとしたら、オーラはオーラでのみ対抗できるというのも事実である。


バルバロイも歴戦の強者だが、最適任者は俺しかいなかった。




「あまり走らせるな。無駄に体力を使うだろう。」


ようやく立ち止まった相手にそう告げる。


「バカが、素直についてくるとは。」


やはり地の利を得ようと移動していたのだ。


先ほどまでとは違い、表情に余裕が出ていた。


「俺が元騎士だとして、それでも自分の方が有利だと思っていそうだな。」


「あたりまえだ。俺はおまえらのような騎士崩れとは違うからな。」


「違うだと?具体的にはどこが違うか、ご教授願いたいね。」


「良いだろう。聞いて驚け、俺は王国騎士団にいた剣聖(ソードマスター)だ。」


「序列は?」


同じソードマスターでも、序列の違いで相当な実力差が出る場合があった。


「128位だ。」


自信たっぷりにそう言われた。


まぁ、そんなところだろう。


もっと上位なら顔くらいは知っていておかしくない。


しかし、俺は目の前の男など知らなかった。


「それはすごいな。」


「そうだろう。つい先日も、俺に差し向けられた冒険者を八つ裂きにしてやった。そこらの有象無象がかなうわけがない。」


ふむ、確かにその通りだ。


ソードマスターとは、どれだけ序列が低かろうが常人とは一線を画す。


オーラの有無だけが影響するわけではないが、少なくとも高ランク冒険者でも簡単に相手取れるものではなかった。


「なら、今日は俺が相手してやろう。」


「貴様、話を聞いていなかったのか?」


「聞いていたからこそ、その傲慢な思いをねじ伏せてやろうと思ったのだが。」


正直なところ、今の俺で簡単に勝てるかはわからなかった。


しかし、試してみなければわからないことも多いのである。


「ふざけやがって!貴様こそ、その傲慢な考えを後悔するがいい!!」


相手はそう言い放った刹那、数十にも及ぶ剣気を撃ち出してくる。


剣気とは、剣を媒体にしてオーラを撃ち出す遠隔攻撃である。間合いを詰める必要もなく、達人ともなると数百メートル離れた位置からでも対象に当てることができた。


だが、この男の実力では簡単には殺られないと判断できる。


視線、肩や腕の動き、腰の回転角など、相手がどこに向けて攻撃を放とうとしているかは、その身体を見れば多くのヒントが隠されているものだ。それを見切るのも騎士としての技量のひとつである。そして、俺の目は他の騎士と比べてはるかに良い目を持っていた。


オーラを必要な経脈に走らせ、ピンポイントで身体能力強化を促す。


数十に及ぶ剣気の着地点は、すべて俺の位置と動線に干渉するようになっていた。ならば、その軸をずらし、前へと体を動かせばいいだけだ。


一瞬後に相手の間合いへと入る。


俺に向けられていた剣気は、すべて何もない場所を打ち消滅していく。


地面を抉るような跡を残し、そこに生えている植物を刈り取っただけに過ぎない。


「なっ⁉」


「たかだか序列128位で偉ぶるんじゃねぇよ。」


ナイトリーソードで袈裟斬りにする。


剣身にはしっかりとオーラをこめるのを忘れない。


ザッという鈍い音が響く。


一瞬遅れて相手の持つ剣が半ばから断ち切れ、その剣身が地面へと突き刺さった。


すぐに距離を取る。


「嘘だ……ろ……」


その言葉が終わる前に鮮血が雨のように降り注いだ。


剣聖が扱うオーラは万能ではない。それに使用者によって得手不得手も存在する。


今回の敵は剣気を放ったが、大した実力は持ち合わせていなかった。


今の俺が扱えるオーラは質も量も拙いものでしかない。だからこそ、使うタイミングには最新の注意を払う。そして、どのように使うかという戦術を忘れては勝てない可能性すらあった。ただ強いオーラを持つだけでも、多岐にわたる技を修めているだけでも剣聖の序列は上がらない。


剣聖の深淵を臨める者は、万にひとりと形容されている所以である。




「さすがだな。」


バルバロイと合流する頃には、相手は全滅していた。


蛮族の戦いとは平原に限らず、常在戦場である。


そんな百戦錬磨のバルバロイに、巧みな弓術を持つダークエルフふたりの後方支援があったのだ。想定通りの結果だった。


「剣聖ではあったが、大した相手ではなかった。むしろ、数の多いこちらを制圧したおまえらを称賛するよ。」


「ふむ。あんたが相手した奴って、まさかカークが言っていた元騎士じゃないよな?」


「それほどの難敵には思えなかったぞ。」


「まあ、念のために認識証(ドッグタグ)は持って帰るわ。冒険者同士の私闘とされると厄介だし、報告はしっかりとしておくに限るからな。」


騎士団時代に彼にこんなマメさはなかったはずだが、冒険者という個人事業主になると心境の変化があるのかもしれない。


「助かった。ありがとうな。」


戦闘が終了したとして、こちらに歩み寄って来たふたりのダークエルフにも礼を言っておく。彼らの後方支援には実際に助けられた。


「間違いなく、うちの村人を襲ったのはこいつらだ。顔に見覚えがある。」


「そういえば詳しく聞いていなかったが、被害はどれくらいだった?」


「実際の被害は軽いケガ程度しかない。たまたま気がついたから未遂で終わっているから。」


「そうか。」


そこでバルバロイが口を挟んだ。


「大した額じゃないだろうが、冒険者ギルドから補償が出ると思うぜ。何せ所属している冒険者が起こした事件だからな。ちゃんと被害届を出した方がいい。」


「そうだな。そういうことなら、証言くらいはしよう。」


そう言うと、女性の方が「それはいい。」と断りを入れてきた。


あまりヒト族と関わりたくないのかもしれない。


「約束は守る。月光樹の樹液が必要な薬ってことは、魔力が暴走する症状に使うやつだよね?」


「そうだ。」


「私たちの中にも似たような症状に陥る者がまれにいるから、それ用の薬なら村にある。取りに行くからここで待っていて。」


彼女たちはそういうと足早に去って行った。


「戻ってくると思うか?」


「そう信じたいね。」


俺はバルバロイにそう答え、倒した奴らの処理をすることにした。




その後、戻って来たダークエルフから薬を受け取り、その場を去ることにした。


倒した奴らに関しては獣に食い散らかされないよう地中に軽く埋め、冒険者ギルドの判断に任せることにする。


町に戻ってアーベライン子爵家を訪れ、手に入れた薬を主治医に渡した。


「なるほど、この処方であの症状を抑えることができるのか。」


医学的なことは何もわからないが、主治医は薬の処方から特効薬になると判断したようだ。報酬をもらい、家令のシルビアからの御礼には笑顔で返す。アーベライン子爵からもぜひ御礼をしたいとの申し出があったが、顔を合わせると面倒なのでもっともらしい理由をつけて早々に屋敷を出た。





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