アクション!!
会社の帰りに立ち寄ったドラッグストアから出て、交差点で信号が変わるのを待っている時だった。
季節は11月。ほんの少しの肌寒さに震えながらオーバーの前を両手で押さえるのと同時に、ふと気配を感じたので振り返ると・・・。
ニット帽を深くかぶった男、(正確には、目、口、鼻の所が開いたデザインのよくあるあの帽子)の蹴りが私のみぞおちに入りそうになった。
「!?!!」 私はパニックになりながらもとっさにそれを交わし跳躍しながら空中で宙返りをしつつ、男の背後から蹴りを入れた。
ブーツが脱げそう。 一体、なんなの。こわいよぅ。
しかし、男は予測でもしていたのか瞬時に身体をひねると、今度は私の顔をめがけて右ストレートをくりだしてきた。
間一髪で後ろにジャンプしてよけたものの、着地の際によろめき、後ろにいた年配の主婦の方にぶつかりそうになってしまった。
しかしありがたいことに主婦の方は、スーパーの買い物袋をさげた手とは逆の手でとっさに私の肩を支えてくださった。
・・そして、それと同時に主婦さんの買い物袋からはみ出している特売の大根を奪い取ろうと手を伸ばしてきたサラリーマンの脇腹に右足で素早く鋭い蹴りを入れるのだった。サラリーマンは50メートルは軽く吹っ飛び近隣のビルの壁に叩きつけられたが、空中で体制を立て直すと壁を蹴って、主婦さんをめがけてまた戻ってこようとしたので主婦さんもまた身構えた。
そんな二人の間を、三輪車にまたがった幼稚園児がジェット機のようなスピードで通り過ぎて行った。
それを追いかけるようにして母親らしき女性が、車道を走る車を飛び越しながら猛然と追いかけていく。
「さ、お嬢さんもがんばりなさい。」
突如、知らないダンディーなおじ様に声をかけられてハッとなる。
ダンディーなおじ様は太ったガタイのいい若い男にヘッドロックをかけつつ、私に向かって品の良い穏やかな微笑みを見せた。
若い男はぴくりともしない。 あれ、息してる??
まあいいか、自分には関係ない事だしな、と私はお礼を言った。
「ありがとうございます。おじ様も頑張ってください。」
するとおじ様は白い歯を見せてフッと笑った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
それから約20分後。
男の帽子をはぎとり、ぐったりした奴の胴体をブーツで踏みつけながら振り向いた私の目に飛び込んできたのは、地面に転がっている、先ほどのサラリーマンを含めた数人の男性達を見下ろしながら仁王立ちしている主婦さんの姿だった。
完




