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第1章 -5話

招待状を受け取ってから、五日後のこと。

土曜日の午後二時、いつもの格好にサッチェルバッグとバイオリンケースを持って、

ハインはエーデルシュタイン邸を訪ねた。

土日の午後は慣例的に、ハインに許された毎週の自由時間に当たる。

外へ友達と遊びに行くこともあれば、自主練習に充てることもある時間。


「あの、こんにちは」


挨拶するハインの目の前には、驚いたように目を瞠るメイドの女性の姿があった。

青い髪をポニーテールに結い、前髪は顔の左半分をほとんど隠している。

銀色の眼鏡をかけていて、ヘーゼルナッツのような榛色の瞳はきれいだが、

目つきが鋭いのでなんとなく怖い感じがする。

しばらくじっとハインを見つめていたそのメイドの女性が、ようよう口を開く。


「……なぜ裏口から?」

「その、表からは入りづらくて。ええと……すみません」

「いえ、謝ることはありませんが。とりあえず、お入りください」


裏口から中に招き入れられる。そこは屋敷のキッチンであるらしかった。

いろんな調理器具や大きなかまど、箱に入った食材、積み上げられた小麦の袋などがあり、

数人のメイドと、料理長らしき年かさの男性が一人働いているのが見える。

窓から光が差していて明るいのが印象的な場所だった。


「お嬢様から伺っています。『小さなバイオリニストさん』ですね」

「えっと、はい……」


え、その名前で呼ばれてるの? と思いつつも頷く。

その時、一瞬、メイドの女性のエプロンの左ポケットがごそごそと動いた気がした。

なんだろう?と目を向けたが、キッチンにいた人たちがわいわいと周りに集まってきたので分からなくなる。


「おっ、坊ちゃんが『小さなバイオリニストさん』かい! よく来たなあ!」

「こ、こんにちは」

「え、お嬢様がおっしゃってた子? え~かわいい~!」

「ねえ君いくつー? お名前は?」

「どこから来たのー?」

「キャラメル食べる?」

「え、えと」

「はいはい、そこまで。お嬢様のお客様ですよ。皆さん仕事に戻ってください」


料理長さんからメイドさんから次々に話しかけられてあわあわしていると、

パンパンと手を叩いて、青い髪のメイドさんが割って入ってくれる。


「カトリナ、お湯を沸かしてお茶の準備をお願いします」

「はーい」

「ミリヤムはお茶菓子を出してください。後で私が選びますので」

「あいさー」

「では、私について来てください。お嬢様のところへご案内します」

「あ……はい。ありがとうございます」


てきぱき指示を出すと、青い髪のメイドさんはハインを促して身を翻した。

彼女の後を追い、案内されるままについていくと、正面玄関のエントランスホールに出る。

赤い絨毯が敷かれた優美な階段があり、そこから左右に通路が伸びていた。

階段の上、つまりエントランスホールの中央には、大きな肖像画が掛かっている。

それは白金髪の美しい女性で、何も言われなくてもお嬢様の母親だろうと分かるくらいによく似ていた。

階段を上りながら、メイドの女性がちらりと振り返る。


「ここにはお一人で?」

「はい」

「そうですか」


直前までどうするか悩んだけれど、結局誰にも何も言わずに来てしまった。

言えば特に母には反対されるような気がしたし、それに、たぶんこれは一度きりの事だろうから。

黙って来たことへの、なんとなく後ろめたいというか罪悪感みたいなものはあったけれど、

それを押してでもお嬢様に会ってみたいという、自分の我を通してしまった。


そうこうしているうちに、廊下の突き当りの白い扉の前で女性が立ち止まる。

部屋の中からは、優しいピアノの音色が聞こえていた。

コンコン、と女性が上品に扉をノックする。


「お嬢様。『小さなバイオリニストさん』がいらっしゃいました。

 お通ししてもよろしいですか?」


その名前ちょっと恥ずかしいな……と照れる間もなく、中から「まあ!」と声がした。

ぱたぱたと小さな足音がして、中から扉が開く。

開いた扉の隙間から顔をのぞかせたお嬢様が、ハインを見るなりぱあっと微笑んだ。


「うれしいわ、来てくださったのね!」

「こ、こんにちは」

「ふふ、ごきげんよう。どうぞお入りになって」


お嬢様自身が扉を開いて、ハインを中に招き入れてくれる。

今日はライラック色の半袖ワンピース姿で、薄紫色の瞳の色とよく似合っていた。


「お、お邪魔します……」


一歩踏み入ったただけで分かる、そこは立派なグランドピアノが置かれた音楽室だった。

グランドピアノなんて、本物を見たのは初めてだ。

家にあるのもバイオリンの先生の家にあるのも、アップライトピアノだし。

年代物らしい、ボディに美しい絵などの装飾が施されたチェンバロまで置いてあり、目を奪われる。


「気になるものがあったら、自由にご覧になってね」

「お嬢様、私はお茶の準備をして参ります」

「ありがとう、マリー」


ぱたんと静かに扉が閉まり、いきなりお嬢様と二人きりになってしまう。

荷物はこちらへどうぞと勧められて、壁に沿って置かれている長椅子の上に

鞄とバイオリンケースを下ろしながら、まず何をすべきかを一生懸命考える。

こんな状況は初めてで、緊張で頭が真っ白になりかけていた。

とりあえず、まずはご挨拶すべきだよな?とやっとのことで思い至る。


「ええと、あの……今日はお招きいただき、ありがとうございます」

「あら、こちらこそ! 来てくださってありがとうございます」


ハインがお辞儀をすると、お嬢様も美しいカーテシーで応えてくれる。

それから改めて目が合うと、お互いに自然と笑みが浮かんだ。

少し緊張が解けたのが自分でも分かる。


「もしかしてピアノも弾かれるの?」

「え?」

「さっきご覧になっていたから。良かったら弾いてみられる?」

「あ、いや、弾けるってほどじゃない、です」


慌てて首を振る。

ピアノは父によって基礎から教えられているが、あくまで弾くことができる程度というか、

バイオリンほど練習しているわけではないし、お嬢様に披露するなんてとても考えられない腕前だ。

だからってバイオリンなら自信があるのかと問われると、そういうわけじゃないけれど……。


「その、グランドピアノを初めて見たので……」

「まあ、そうなの? じゃあぜひ触ってみてくださいな」


ぱたぱた、とお嬢様がピアノの方に移動したので、ぎこちなくついていく。

ピアノは屋根が空いた状態なので、近くで見るとなおのこと大きかった。

アップライトピアノよりも数が多い、ずらりと並んだ鍵盤も壮観だ。

「どうぞ弾いてみて」とお嬢様に笑顔で促され、その鍵盤を前に固唾を吞む。

でもこんな機会、そうそうあるものじゃないし。

鍵盤の上に両手を置くと、指が自然と家で練習するときの曲の一節を奏でた。


「わっ!」


アップライトピアノでは到底及ばない、豊かで深い音色に驚いて、思わず手が止まる。

重低音が、耳朶どころか体全体を震わせて響いてきた。


「すごい……!」


ピアノを見上げて音の余韻に震えていると、傍からすっと白い両腕が伸びてきた。

かと思うと、お嬢様が優雅に鍵盤を叩く。とたん、溢れ出る音色に体が包まれる感覚に息を呑んだ。

鍵盤を叩くたびにハンマーが弦を打つなめらかな動き。まるで生き物のようだ。

音がやんでも、まだ余韻が消えない。我を忘れ、感動でぽかんとしていたハインだったが、

ふとお嬢様がすぐ隣でにこにこしているのに気づいて、はっと我に返る。

やばい、今すごく間抜けな顔していたんじゃないか。


「……お嬢様、お茶をお持ちしました」

「ありがとう、マリー!」

「もう自己紹介は済まされましたか?」

「え? あら? いけない、まだだわ!」


くすくすと楽しそうに笑う。なんて朗らかな人柄だろう。

彼女が笑うと周りまで明るくなるようで、なんだか目が離せない。


「こちらへどうぞ、おかけくださいな」


お嬢様に勧められるまま移動する。荷物を置いた長椅子の近くにテーブルセットがあり、

クロスの掛かった丸いテーブルに青い髪のメイドさんがティーセットを並べていた。

真ん中には三段のケーキスタンドがあり、ケーキやクッキーだけでなく、

小さなサンドイッチやスコーン、カップケーキなどが乗っている。

優美な彫刻が施された白い椅子を勧められ、そのふかふかの座り心地にびっくりした。

目の前に置かれた可愛らしい花柄のカップに、湯気を立てて紅茶が注がれる。

おそらくケーキスタンドで顔が見えなくなるからだろう、対面ではなく横の位置にお嬢様が座り、

改めてハインに向き直った。


「自己紹介が遅くなってしまってごめんなさい。

 わたしはクララ・エーデルシュタインと申します。クララと気軽に呼んでくださいね」


にこ!とお嬢様、クララが笑った。

クララという名前は可愛らしくて、彼女にとてもよく似合っていると思うが、

気軽に呼べと言われると困ってしまう。そんな恐れ多いこと、できようはずもない。


「あなたのお名前は?」

「ハインです。ハイン・ノール」

「ハイン! 素敵なお名前ね! ハインとお呼びしてもいいかしら?」

「ど、どうぞ」


どう呼んでもらってももちろん構わないけれど、素敵なお名前だなんて初めて言われたので

どぎまぎしてしまう。どうやらクララは思ったことを相手に伝えるのに、

少しも恥ずかしがったりすることがないみたいだ。自分と正反対だなあと思う。


「それからこちらはわたし付きのメイドで、ハイデマリーです」

「お見知りおきを」


メイドの女性、ハイデマリーがきちりと礼をしてくれたので、ハインも座ったままだが礼を返す。

そのあとは、和やかなお茶会の時間となった。

クララは話すにしても、飲むにしても食べるにしても、すべての所作が完璧なまでに美しく、

しかもそれが呼吸をするように自然にできていて、さすがは伯爵令嬢だと内心感嘆する。

ハインもこの時ばかりは自分に厳しくマナーを叩き込んでくれた母に感謝した。

でなければ、彼女の前でお茶を飲むことさえままならなかっただろうから。

とはいえ、色とりどりのお菓子はおいしそうだったが、あまり食べると夕飯が入らなくて絶対母に怒られる。

それに黙って来た罪悪感も相まって、ハインはあまりお菓子に手を付けることができなかった。


「お菓子はあまりお好きではなかったかしら?」

「あ、いえ……あまり食べると夕食が食べられなくて、母に叱られます」

「まあ……! そうね、それはいけないわ。

 お母様の作ったものが食べられなかったら、お母様が悲しむものね」

「えっ、はい」


とっさに頷いたけど、そういうふうに考えたことはなかったかもしれない……。

そう思ったけれど、神妙に頷いているクララを見ていると何も言えなかった。

それに、確かに言われた通りだとも思う。ハインにはない視点だった。


「ハインは、いつもここを通ってどこに行っているの?」

「バイオリンのレッスンです。8番街区に先生が住んでいるので」

「まあ、ここからそんなに遠くないところなのね。そうだったの。

 いつも一緒だったお二人は、お兄様かしら?」

「えっと、双子の兄で……秋から王立音楽アカデミーに入学するので、今はもう王都にいます」

「まあ王都に? お二人ともいっぺんにいなくなってしまって、寂しくはない?」

「うーん、まあ寂しいですけど……でもまだ下に妹もいますから」

「まあ妹さんも? ご兄妹がたくさんいるのね、素敵! わたしは一人っ子だから羨ましいわ」


手のひらを胸の前で合わせて、キラキラした瞳でクララが言った。

きょうだいが多いとうるさいし喧嘩もするし取り合いもするし、そんなに素敵なことばかりじゃないと

言いたいところだけれど、そんなふうにされるとさすがに言えない。


これまであえて触れてはいなかったが、この部屋の奥の窓、通りに面したその窓の下には、

小さな踏み台があるのをハインは見つけていた。いつもあそこから手を振ってくれていたのだろう。

こんなお屋敷に住んでいるのに、おそらく何不自由ない暮らしをしているのだろうに、

ただほぼ毎日通るだけのハインと話がしたいと思うくらい、彼女は孤独なのだろうか?

ふと、さっきエントランスホールで見た肖像画が脳裏によみがえり、

伯爵夫人は数年前に亡くなったと兄たちが話していたことを思い出していた。


「ハインは、バイオリンが好きかしら?」

「えっ?」

「あのね、わたしは歌が好きなの。聴いていただける?

 それでね、よろしければハインのバイオリンも聴かせてほしいの」

「それは、僕でよければ……」

「本当? よかった!」


少し不安そうだった顔が、一瞬でぱあっと花が咲いたように明るくなる。

演奏を聴かせてほしいというのは招待状にもあったが、まさか歌を聴かせてもらえるとは思わなかった。


「じゃあ、まずはわたしが歌いますから、聴いてくださいませね!」


そう言うといそいそと椅子を降り、彼女はピアノの傍に立った。

ポーン、ポーンと鍵盤を叩いて音を取っている間、ハイデマリーが彼女の傍に譜面立てを置き、

二、三言何かを確認して、楽譜を広げる。

そうしてクララは軽く目を閉じると、伴奏もなく、緊張しているそぶりもなく、いきなり歌い始めた。

それもアリアなどではなくハインでもよく知っているような、春を歌う童歌である。

可愛らしい歌声も相まって、お伽噺を聞いているような心地がした。

まるで妖精が歌ってるみたいだ。

歌う彼女を見つめ、馬鹿みたいにそんなことを考えていた。


パチパチ、という拍手の音で我に返る。

ハイデマリーの控えめな拍手だった。遅れてハインも拍手をする。


「ふふ、ありがとう。いかがでした?」

「あ、えと、妖精みたいだった……」

「まあ、妖精?」

「あっいやその」


まずい、思わずそのまま口から出てしまった。敬語も忘れてるし。

焦るハインを後目に、クララは口元に手を当てて、ふふっと嬉しそうに笑ってくれる。


「うれしいわ。じゃあ、次はハインの演奏を聴かせてくださる?」


ハインは頷いて席を立ち、バイオリンを取りに行く。

何を演奏しよう? いくつか候補を考えてはいたけれど、彼女の歌を受けて、どれも違うと感じていた。

発表会やコンクールで弾くような曲じゃなくて、もっと……。


「譜面立てはこちらをお使いください」

「ありがとうございます」


ハイデマリーに勧められ、譜面立てに手書きの楽譜を立てる。

ハインと入れ替わりに席に戻ったクララが、期待に満ちた眼差しを送ってくれているのが分かったし、

ある意味コンクールよりも緊張して弓を持つ手は少し震えていたが……

深呼吸してバイオリンを構えた瞬間、その震えは止まる。

ハイン自身も自覚のないことだが、その瞬間から彼の雰囲気がすっと変わった。

先程までの自信なさげな感じがどこかへ消えて、ただバイオリンとだけ向き合う静かな瞳。


弓を引いた最初の一音が、部屋の空気を震わせる。

穏やかで、慈愛に満ちた温かな曲だった。誰かに向けられた、愛を込めた眼差しが浮かぶような。

やがて曲が終わり、息をつきながらゆっくりと弓を下ろす。


「ああ、なんて素敵なんでしょう……! わたし、こんなに心のこもった演奏を聴いたのは初めて!」


自身の胸を押さえ、クララがキラキラした瞳で訴える。

拍手よりも先に感想を言ってしまったことに気付いてか、遅れて拍手をしてくれた。

彼女の後ろに控えているハイデマリーも、目を瞠って拍手をしてくれている。


「本当にすばらしかった。とっても幸せな気持ちになったの!」

「あ、ありがとうございます」

「わたし、今の曲を聴いたことがないわ。なんていう曲なの?」

「あ、今のは……僕の父が母に書いた曲で、曲名とかはないんですけど」

「まあ、お父様がお母様に? なんて素敵な贈り物かしら……!」


大げさなくらい素直に感動を表してくれる姿に、こちらも嬉しくなる。

ハインにとっては両親が大切にしていて、自身も小さな頃から慣れ親しんだ曲なので、

そんなふうに言ってもらえるのは誇らしい気持ちだった。

ともあれ、無事に演奏を披露することができてほっとしながら席に戻ってきたとき、

壁際に置かれたチェストの上の置時計の時刻が目に入り、ぎくっとした。

午後四時になろうとしている。もうそんなに時間が経ったのかと驚いた。

ここから家まではそれなりに距離があるので、そろそろ帰らないとまずい。


「あの、お嬢様。僕はそろそろお暇しないと……」

「まあ、もうそんな時間なの? もっとお話ししたかったのに」

「すみません、門限があるので」

「そうね、あまり遅くなるとお家の方が心配なさるものね」


クララの言葉を背中に聞きながら、手早く楽譜とバイオリンを片付ける。

鞄を背負ってバイオリンケースを手にすると、クララに向き直ってぺこりとお辞儀をした。


「今日はありがとうございました、お嬢様」

「まあ、お礼を言うのはわたしのほうだわ。ぜひまたいらしてね」

「えっ?」


また? また来てほしいってこと?

てっきりこの一度だけだと思い込んでいたので目を丸くするハインに、クララは重ねて言った。


「あのね、わたしとお友達になってほしいの!」

「えっ……ええっ?」


友達? 僕が? お嬢様と!?

衝撃でバイオリンケースを落っことしそうになり、慌てて抱え直す。


「え、あの……え? 友達って、あの友達? ですか?」

「ふふ、そのお友達! ダメかしら?」

「いや、でも、僕は……平民、ですし」

「あら、そんなこと気にしないわ。わたしはハインとお友達になりたいんだもの」


そう言って、クララはにっこりと微笑む。

その笑顔を前に、どうしたらいいんだと心の中で叫んだ。

もちろん、友達になれるものならなりたい。

でもただの平民と伯爵令嬢の間には、厳然とした身分の差がある。

本来そんなふうに気軽に飛び越えてはいけないはずだ。

幼いながらも分別というものをしっかり教育されているゆえに、ハインはかぶりを振った。

否定の意味を感じ取ったクララが、しだいにしゅんと表情を曇らせていく。

ああ、どうしようどうすれば。


「では、こうしてはいかがでしょうかお嬢様」


膠着状態の沈黙を破ったのは、それまで黙って二人のやり取りを見ていたハイデマリーだった。


「まず彼のご家族に、お友達になる了承を得るのです」

「ご家族に?」

「そうです。こういう時は逃げ場のないよう外堀から埋めるべきです」

「まあ、そうなのね……!」


え、感心してるけど今なんか変なこと言わなかった?

戸惑うハインをよそに、クララはすっかり意気を取り戻して頷く。


「分かったわ、じゃあわたしがハインのご両親に宛ててお手紙を書くわ! マリー、届けてくれる?」

「無論です。君、門限は何時ですか?」

「え、えっと、五時です」

「ここから家まではどのくらいかかりますか?」

「三十分ほど……」

「では急いで準備いたしましょう。書き物の用意をいたしますのでお待ちください」


そう言うと、ハイデマリーがきびきびと部屋を出ていく。


「ご両親にお許しいただけるように、わたしがんばって書きますね!」


え……あれ? どういう状況なんだこれは?

小さくファイティングポーズを取って張り切るクララを前に、ぽかんとするハインなのだった。

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