おまけ エリックのその後
約束通り、エリックとケーキを食べに来たロザリー。
今日のケーキは、柔らかいスポンジがツヤツヤのチョコレートにコーティングされたほんのりビターなケーキだ。
ケーキにはラズベリーがトッピングされていて、スポンジとスポンジの間にもラズベリーのジャムが挟まっている。
ほんのりとした甘みと酸味がチョコの風味を際立たせる。
「んっ! このケーキ、ナッツが入っていますわ」
「あ、本当だ……!」
ケーキの真ん中辺りにナッツが入っている事で、食感が一度変わる。
どこまでも食べる人を飽きさせない作りに、ロザリーもエリックも大満足でペロリだった。
「美味しかったですわね」
「はい。その……すごく」
エリックが照れた様子で髪をいじる。
その指先を見て、ロザリーは思い付いた。
「エリック様エリック様」
「はい、なんでしょう?」
「わたくし、ネイルをね、もっとキラキラにする魔法を知っておりますの」
「!」
エリックの目が期待に輝いた。
「手を、出していただいても?」
「ぼ、僕ので良ければ……」
おずおずと手を差し出すエリック。
ロザリーは魔法を使って爪をデコり始めた。
現代で言うところの、ギャルネイルである。
黄色と緑をベースに四つ葉のクローバーと蜂をイメージしたネイル。
「かわいい……!」
次は紫と黒を使って夜の蝶のようなネイル。
「綺麗ですね!」
白やピンクを使ってケーキとティーポットを。お茶会がイメージだ。
「美味しそう……」
爪をコロコロ切り替えて遊んでいるロザリー。
エリックは爪が変わる度に目を輝かせる。
が、さすがにエリックの爪をデコデコにして放置するのはどうかと思うので、最後は爪を黒一色のシンプルな物に戻した。
「……」
途端にしょぼん、となるエリック。
デコデコのままにした方が良かっただろうか……。
「あの……ロザリーさん」
「はい」
「……青が、青がいいです!」
「分かりましたわ!」
ボールを投げてとオネダリする犬の顔がロザリーの頭に浮かんだ。
エリックのために、爪の色を青に変えてあげるのだった。
「可愛い爪、爪だけでも残せたら良いのにな……」
「なるほど。そういう魔法を考えてみるのもアリですわね!」
この時の会話がきっかけで、ロザリーの作ったネイルチップが大流行するのはもう少し先のお話。