9話 廃墟に潜む者
悠太が次に目指すのは、地図に示された別の赤い点。その場所は、かつて交易の中心地として栄えていた街の廃墟だった。統合制御コアの再起動によって明らかになったデータによれば、そこには貴重な資源や施設が残されている可能性が高い。
「だが、何もないとは思えないな。」
悠太はアスターと共に砂漠化した大地を進む中でつぶやいた。前回の塔での戦いが教えてくれたのは、この世界に残る人類の遺産には必ず危険が伴うということだ。
「王よ、警戒を怠らないでください。」
「分かってる。次はどんな試練が来るんだか……」
交易の街の廃墟
ようやく街の廃墟が見えてきた。崩れた建物と瓦礫が無秩序に散らばり、長い年月の間に砂漠の風がそれをさらに風化させていた。それでも所々に残る建築の美しさが、かつての繁栄を想像させる。
「すごいな……ここが全盛期だったらどんなに賑やかだったんだろう。」
悠太が感嘆していると、突然、瓦礫の陰から何者かの視線を感じた。
「……誰かいるのか?」
悠太は剣を手に取り、警戒を強める。すると、瓦礫の間から複数の人影が現れた。それは人ではなく、ぼろぼろの布をまとった機械兵たちだった。彼らの目には赤い光が宿り、手には錆びた武器を握っている。
「また機械か……でも、前のとは違うな。」
「王よ、これらは古代の警備兵です。この地域を守るために作られたものですが、制御が失われ、侵入者を無差別に排除するようプログラムされています。」
「つまり、俺も敵認定されたってわけだな。」
機械兵たちが一斉に動き出し、悠太に向かって襲いかかる。
機械兵との戦い
「来るなら来い!」
悠太は剣を構え、最前列の機械兵の攻撃を受け止める。だが、彼らの動きは単純ではなく、統率されたチームプレイで悠太を追い詰めようとしてくる。
「こいつら……ただの機械じゃないぞ!」
悠太は機械兵の鋭い斬撃をかわし、カウンターで一体を破壊する。しかし、すぐに別の機械兵が背後から迫る。
「王よ、左です!」
アスターの声に反応し、悠太は剣を振り抜いた。その攻撃が見事に命中し、もう一体の機械兵を仕留める。
「助かった、アスター!」
「感謝は後にしてください。まだ終わっていません。」
悠太は次々と襲い来る機械兵を相手に奮闘するが、数の多さに圧倒されつつあった。
新たな出会い
追い詰められた悠太が再び剣を構えたその時、遠くから弓矢が放たれ、機械兵の一体が貫かれる。
「……誰だ?」
悠太が声の方を見ると、瓦礫の上に立つ人影が現れた。それは装甲をまとった若い女性で、鋭い目つきと精悍な表情が印象的だった。
「こんな場所で何してるの? 一人で全部相手にするつもり?」
彼女は弓を構えながら、悠太に向かって冷ややかに問いかけた。そのまま次の矢を放ち、機械兵を一体ずつ確実に仕留めていく。
「助けてくれるのか?」
「余計なお世話かもしれないけどね。あなたがここで死なれたら、私の目的に支障が出るから。」
彼女は悠太の横に降り立ち、軽やかに動きながら矢を放つ。
「俺の目的って……あんた、一体何者だ?」
「あとで教えるわ。今はこの状況を何とかするのが先でしょ!」
悠太も彼女に倣い、目の前の敵に集中する。二人の連携によって、次々に機械兵が倒されていった。
戦いの後
最後の機械兵が倒れると、廃墟に静けさが戻った。悠太は深く息を吐き、隣に立つ彼女に向き直った。
「助かったよ。ありがとう。」
「礼はいいわ。それより、あなたが何者なのか知りたい。」
彼女は弓をしまい、悠太をじっと見つめた。
「俺は……この世界の王だ。」
悠太が答えると、彼女は一瞬驚いた表情を見せたものの、すぐに冷静さを取り戻した。
「王? 随分と冴えない王様ね。でも……嘘をついているようには見えない。」
彼女は小さく笑い、自分の名前を告げた。
「私はリリス。この廃墟を調査している者よ。人類を復興させるためにね。」
「リリス……俺もそのために動いてる。なら、協力できるかもしれないな。」
「協力? あなたみたいな人間が私の役に立つかしら。」
挑発的な口調のリリスに苦笑しつつ、悠太は手を差し出した。
「試してみるのはどうだ?」
リリスは少し迷った後、その手を握り返した。
次回、第10話:リリスの秘密
謎めいた女性リリスの目的とは何か。彼女と共に廃墟のさらなる奥地を目指す悠太に、新たな発見と危機が待ち受ける……!