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8話 眠れる遺産

赤い点の一つが示す場所、それは城から数キロ離れた廃墟の中心部にあった。荒れ果てた街並みを進む悠太の足音が、ひび割れた地面に響く。


「このあたりだな……」


悠太は手に持つ地図を確認し、視線を上げた。その先には、巨大な塔がそびえ立っていた。時間の経過で劣化し、所々が崩れているものの、その威容には圧倒されるものがある。


「ここはかつて、この地域の管理センターだった場所です。」


アスターが淡々と説明する。「多くのデータと技術がここに保存されているはずですが、長い間放置されていたため、侵入者や魔物が潜んでいる可能性があります。」


「……つまり、安全じゃないってことだな。」


悠太は慎重に塔の中へと足を踏み入れた。


塔の内部

塔の中は薄暗く、ひんやりとした空気が漂っていた。足元には壊れた機械や錆びた金属片が散らばっており、かつてここが高度な技術で満たされていたことを物語っている。


「静かだな……」


悠太が周囲を警戒しながら歩みを進めると、不意に背後から低いうなり声が響いた。


「……魔物か?」


振り返った悠太の目に映ったのは、灰色の体毛に覆われた四足の魔物だった。鋭い牙を剥き出しにしてこちらを睨み、今にも飛びかかろうとしている。


「くっ、いきなりかよ!」


悠太は腰に帯びていた剣を抜き、身構えた。魔物が低い姿勢から一気に跳躍し、鋭い爪で襲いかかってくる。


「ここでやられるわけにはいかない!」


悠太は魔物の攻撃をかわし、反撃の一撃を繰り出した。剣が魔物の体を斬り裂き、そのまま地面に倒れ込む。


「ふう……なんとか倒せた。」


息を整えながら周囲を見渡すと、さらに奥から複数の魔物が姿を現した。


「さっきのは偵察みたいなもんか……次が本番だな。」


悠太は剣を握り直し、次々に襲いかかる魔物たちと対峙した。


遺産との邂逅

魔物を倒しながら塔の奥へ進むと、やがて広い部屋に辿り着いた。その中央には、巨大な球体が浮かんでおり、青白い光を放っている。


「これは……何だ?」


悠太が球体に近づくと、アスターの声が響いた。


「これは『統合制御コア』です。この地域全体を管理していたシステムの中心となる装置で、人類が築き上げた知識と技術の結晶です。」


「これがまだ動くのか?」


「少し修復が必要ですが、王の力を用いれば再起動が可能です。ただし……」


アスターが言葉を濁す。その直後、部屋全体が揺れ始めた。


「ただし、何だよ!?」


悠太が叫ぶと、球体から赤い光が放たれ、部屋の四隅に設置された装置が起動した。それに連動するように、部屋の中央に巨大な機械仕掛けの魔物が姿を現した。


「コアを守るための防衛システムが起動しました。この魔物は古代の技術で作られた人工生命体です。」


「そんなこと言ってる場合か! 来るぞ!」


機械仕掛けの魔物が轟音を立てながら動き出し、その腕から放たれるエネルギー弾が悠太に襲いかかる。


「くそっ! デカすぎるだろ!」


悠太はエネルギー弾をかわしながら反撃を試みるが、魔物の装甲は硬く、剣の攻撃がほとんど通じない。


「アスター、これどうすればいいんだ!?」


「弱点は背部にある制御装置です。ただし、そこに攻撃を当てるには隙を作らなければなりません。」


「隙ね……どうにかするしかないか。」


悠太は魔物の動きを観察し、動きのパターンを読み取ろうとする。そして、魔物がエネルギー弾を充填する一瞬の隙を突いて、その背後に回り込むことに成功した。


「これで終わりだ!」


悠太は全力で剣を振り下ろし、制御装置を破壊した。魔物は激しい音を立てながら崩れ落ち、静寂が戻る。


コアの再起動

「王よ、今です。コアに手を触れてください。」


アスターの指示に従い、悠太は統合制御コアに手を当てた。すると、青白い光が一気に広がり、塔全体が明るく照らされた。


「これで、この地域のデータが再び利用可能になります。周辺の地形、資源の場所、人類の残した遺産……すべてが明らかになるでしょう。」


「本当にすごい技術だな。」


悠太はコアを見上げながらつぶやいた。これが人類の築いた文明の力――それを再び使い、この世界を救うために役立てるのだ。


「次の場所も行かなきゃな。まだまだやることは山積みだ。」


「ええ、ですが少し休息も必要です。これからさらに過酷な試練が待ち受けているでしょうから。」


悠太は頷き、塔を後にした。彼の背中には、少しずつ王としての自覚と覚悟が宿り始めていた。

次回、第9話:廃墟に潜む者

次なる目的地に向かう悠太。しかし、そこには彼を待ち構える新たな勢力が存在していた……!

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