表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

6話 最後の試練

「王よ、いよいよ最後の試練だ。」


グラギアの低い声が広間に響く。悠太は、重厚な空気の中で深呼吸をし、気を引き締めた。これまでの試練を乗り越えたとはいえ、心の奥にはまだ不安が渦巻いている。


「最後の試練って、一体何をするんだ?」


悠太が問いかけると、グラギアは広間の中央に立ち、両腕をゆっくりと広げた。すると、空間が歪み始め、黒い霧が渦を巻くように集まり出す。


「お前自身と向き合うことだ。」


「俺自身と向き合う?」


悠太が疑問を口にした瞬間、霧が彼の前で凝縮し、彼とまったく同じ姿をした存在が現れた。


「……俺?」


目の前に立っているのは、悠太のコピーそのものだった。しかし、その表情には不気味な笑みが浮かび、その目には底知れぬ闇が宿っている。


「そうだ、お前だ。」


グラギアが低く告げる。「これは、お前の中に眠る弱さや恐れ、そして欲望の具現化だ。この影を乗り越えなければ、お前は真の王にはなれない。」


悠太のコピー――いや、「もう一人の悠太」は口元を歪めて笑った。


「俺が本当に王になれるのか? お前が望むのは、この廃れた世界を救うこと? それとも、自分が認められたいだけか?」


その言葉に、悠太は息を呑んだ。確かに、この異世界で王になるということに覚悟を決めたつもりだった。しかし、その裏にあるのは、本当に世界を救いたいという純粋な願いなのか、それとも転生者として「特別な存在」でありたいというエゴなのか……。


「俺は……」


悠太は言葉を詰まらせた。その隙を突くように、「もう一人の悠太」が冷笑を浮かべながら近づいてきた。


「ほら、答えてみろよ。お前がここにいる理由は何だ? 本当に人類を救えると思ってるのか?」


その問いかけに、悠太は拳を握りしめた。


「俺は……確かに不安だ。自分がここで何をできるのか、正直分からない。でも!」


悠太は顔を上げ、もう一人の自分を真っ直ぐ見据えた。


「だからこそ、前に進むんだ! 確信がなくても、希望がある限り、俺は進むしかない!」


その言葉と共に、「もう一人の悠太」が手を振り上げ、鋭い衝撃波を放つ。悠太はとっさに身を低くして避けるが、その威力に背後の壁が大きく砕けた。


「口先だけで王になれると思うな!」


「もう一人の悠太」が再び襲いかかる。だが、悠太は恐怖に飲み込まれることなく、その攻撃を受け止めようと決意した。


「俺はお前だ。そしてお前に勝つことで、俺は新しい自分になる!」


悠太は前に踏み込み、拳を握りしめて「もう一人の悠太」に向かって全力で振り下ろした。拳がぶつかり合い、衝撃が広間全体を揺らす。


広間に静寂が戻った時、悠太は膝をつき、荒い息を吐いていた。


目の前にあった「もう一人の悠太」の姿は、徐々に霧に溶けて消えていく。


「これが、最後の試練だったのか……」


悠太が顔を上げると、グラギアがゆっくりと近づいてきた。その目には、わずかな尊敬の色が宿っている。


「お前は、自分自身の弱さを受け入れ、それを乗り越えた。これでようやく、お前をこの地の王として認めることができる。」


悠太はその言葉に驚きながらも、静かに頷いた。


「ありがとう……俺は、王としてやれる限りのことをやる。」


グラギアは満足げに頷き、悠太の前にひざまずいた。そして、彼の胸に手を当てると、温かい光が広がった。


「この地を、お前に託す。王としての力は、これから徐々にお前に宿るだろう。」


その言葉と共に、悠太の体に新たな力が満ちていくのを感じた。それは、ただの力ではなく、世界を導く責任と覚悟の象徴だった。


次回、第7話:新たな王国の始まり

試練を乗り越え、正式に王として認められた悠太。だが、廃墟と化した世界を再興するためには、さらなる試練と困難が待ち受けている……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ