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3話 試練の始まり

「試練とは、簡単なことではないぞ、王よ。」


グラギアの低い声が悠太に響いた。魔物の姿が目の前に立ちはだかり、悠太はその重圧に圧倒されそうになった。しかし、後ろに引き下がるわけにはいかない。王国の再興という任務があるのだ。


「お前が本当に人間の王であるなら、まずその資格を証明してもらう。」


グラギアの言葉が続く。「我々ダーククレストは、お前のような人間の王を必要としているわけではない。しかし、お前が本物の王なら、その価値を示すべきだ。」


悠太はその言葉を聞いて、ますます混乱した。自分が「王」だといっても、この魔物にどうやって証明すればいいのか? そもそも、この「試練」って何だ?


「どうすれば……」


「試練は簡単だ。お前が王としての力を持っていることを示すだけだ。」


グラギアは一歩前に出て、悠太を見下ろすようにして言った。


「だが、もしその力がなければ、お前はただの廃墟の住人だ。」


その言葉に、悠太はどきりとした。試練の内容を聞く前に、すでに自分が失敗する可能性を感じていた。だが、この場で動かないわけにはいかない。


「お前が試すべきは『力』だ。」


グラギアの言葉が響いたその瞬間、周囲の空気が一変した。


「力?」


「はい。魔物には力があり、人間には知恵がある。しかし、王が求められるのは、どちらも兼ね備えていることだ。もし、お前がその力を証明できなければ、すぐにでもこの地で終わりだ。」


悠太はますます頭を整理しようとするが、状況が理解できていない自分に苛立ちを覚えた。だが、試練を受けるしかない。


「いいだろう……試練を受ける。」


その答えを告げると、グラギアは満足げにうなずいた。


「ならば、受けてみるがいい。」


その瞬間、グラギアが指を一振りすると、空気が歪んだ。悠太の周囲に魔法のような力が集まり、突然、彼の前に無数の影が現れた。


「こ、これ……?」


「これが試練だ。」


悠太の前に現れたのは、無数の影のような存在。それらは黒い霧のような姿で、はっきりとした形は見えない。しかし、その存在からは強大な力が漂っていた。


「試練の内容は簡単だ。この中で、最も強い者を倒せばよい。」


「え……?」


「この魔物のような影たちは、すべて人間に対する憎悪を持って生み出された存在だ。だが、試練を乗り越えるためには、お前がそれに立ち向かう覚悟があるかどうかを証明しなければならない。」


悠太は恐怖と戦いながら、前に立つ魔物たちを見つめた。心臓が激しく鼓動し、足元が震える。しかし、今は逃げるわけにはいかない。


「お前は人間だ。魔法も使えない、力もない。だが、どれだけ恐ろしい存在でも、王としての覚悟を見せろ。」


その言葉を胸に、悠太は深呼吸をした。アスターが言った通り、ここには「王としての力」を示さなければならない。


「行け、王よ。」


アスターの冷静な声が響き、悠太の背中を押した。


「……やるしかないか。」


魔物の影たちが、悠太に向かって一斉に襲いかかってきた。恐怖と緊張が同時に襲い、悠太は立ち尽くすことなく、反射的に身をかわす。


「うわっ!」


目の前で、黒い影が爪を振り下ろしてきた。それを必死に避けると、影はその爪を空振りさせて、壁に衝突して砕け散った。だが、次々と新たな影が現れる。


「くっ……!」


悠太は頭をフル回転させながら、どうすればいいかを考える。魔法も武器もない自分に、どう戦えというのか?


その時、悠太の心にひらめきが生まれた。


「覚悟だ、覚悟を見せればいいんだ!」


彼は影に向かって一歩踏み出す。直感的に、冷静さを保つことで、状況を打破できると感じた。逃げずに前に進む覚悟があれば、何かが変わる――そう思った瞬間、悠太は再び動き出した。


次回、第4話:王としての覚悟

悠太は自らの覚悟を試練で示す。果たして、影たちを打破し、グラギアに認められることができるのか?

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