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2話 廃墟の来訪者

「警告。侵入者、城内に接近中。」


アスターの声が再び響き渡る。悠太は周囲を見回すが、状況がまったくつかめない。今まで見たこともないテクノロジーのようなものが動き始め、瓦礫や機械部品が組み合わさり、王城の中に防衛壁が作られていく。


「い、いったい何が起こってるんだ?!」


「王よ、動かずにいてください。防衛システムが作動しています。」


悠太は急いで後退し、壁に背をつけた。心臓が激しく打ち鳴らす。ここがどんな場所なのか、何が襲ってくるのかも分からないまま、彼は立ち尽くすしかなかった。


「警告、侵入者を確認。魔物種族、異常な力を持つ個体が接近。」


「魔物?!」


その言葉に、悠太は急に冷汗をかいた。魔物――この異世界ではよく聞く存在だが、普通の人間がどうやってそれに立ち向かうのか全く見当もつかない。


そして、すぐにその答えが目の前に現れた。


城の正面の大扉がゆっくりと開き、そこから不気味な音が聞こえてきた。悠太の目の前に現れたのは、見たこともない異形の存在だった。


身長は3メートルを超え、青白い皮膚を持ったその存在は、全身に無数の鱗のようなものを身にまとっていた。鋭い爪が前足に突き出し、頭部には恐ろしい角が生えている。目は赤く輝き、周囲に発する圧力はまるで獲物を追い詰める獣のようだった。


「こ、これが魔物か……」


悠太は身震いしながらその巨大な魔物を見つめていた。どこかで見たような、どこかで聞いたような存在だが、今はただその恐ろしさに圧倒されるばかりだった。


「王よ、動かないで。私が守ります。」


アスターの冷徹な声が響いたが、悠太はその声に従うことができるだろうか? 目の前の魔物がゆっくりと歩み寄り、足元の石を踏みしめるたびに響く音が、悠太の耳に直撃した。


「な、何で俺がこんな目に……」


心の中で呟きながらも、逃げることなどできないことを悟った。どこにも逃げ道がないこの廃墟で、悠太はただその巨大な魔物を見据えた。


そして、魔物が悠太の前に立ち止まると、思いもよらぬ言葉を発した。


「お前……人間か?」


その言葉に悠太は驚いた。


「え、ええ? いや、俺は……」


「人間……あの王国の……王か?」


その言葉に、悠太の心臓が止まりそうになった。


「俺が王?」


「……人間の王国はもうないと聞いていたが、まさかまだ生きている王族が残っていたとは。」


魔物の声は低く、無機質な響きを持っていた。それでも、悠太は何とか冷静さを保とうとする。


「お前、何者なんだ?」


「私は『ダーククレスト』の王、グラギア。人類が滅びた後、この地を支配した者だ。」


その名前に、悠太は言葉を失った。ダーククレスト? それは確か……人類が滅びる前に反乱を起こした、最も強力な魔物たちの集団の名前だったはず。


「人類が滅びた後、この地で新たな秩序を作り上げた。だが、お前が現れたということは……再び人間が戻ってきたということか。」


グラギアの目が、悠太を鋭く見据えた。その目には恐怖とも興味とも取れるような、複雑な感情が浮かんでいる。


「お前、どうしてここに?」


その問いに、悠太はどう答えていいのか分からなかった。


「俺、ただ……異世界に転生しただけだ。人間が滅びた理由も、王国がどうなったのかも、全然分からない。」


「なるほど。お前が『王』であることに変わりはないが、知識はないようだな。」


その言葉に、悠太はどう反応すればよいか分からなかった。ただ、目の前の魔物が自分に対して興味を持っていることだけは理解できた。


「ならば、試してみるか。お前が人間であることを証明できるのか……」


そう言って、グラギアは恐ろしい笑みを浮かべた。


次回、第3話:試練の始まり

グラギアの挑戦を受け入れた悠太は、最初の試練に挑むことになる。その試練とは、一体何なのか?

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