表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私はただの『旅人』です。  作者: アジフライ
42/42

第四十二話

前回、 無事二次試験を突破したエインとウル。

それから三次試験までの準備期間にて、 知り合った他の受験者達と過ごし、 互いに理解を深めていくのだった。

ここまでの合格者はエイン、 ウルを含めた十二人の受験者だ。

……始まった時はあんな大勢いたってのに……やっぱ世界屈指は伊達じゃねぇんだな……

待機所にて、 開始と比べて受験者が圧倒的に激減したのを見たウルは、 全国魔試の難易度の高さを改めて実感した。

そんな事がありつつ、 第三次試験の説明が始まる。


試験内容は試験官との模擬戦闘である。

受験者は協会が指定した試験官と試合を行い、 制限時間内に試験官を戦闘不能、 もしくは降参させる事ができれば合格。

試合で試験官を殺害、 もしくは敗北した場合は不合格となる。

無論、 試合において魔法以外の攻撃方法は認められていない。


「以上が試験内容となる、 質問が無ければ各自対戦相手がいる所へ向かってくれ」


そうして皆、 予め配布された札を基に、 対戦相手となる試験官の元に向かった。

……えぇっと……私の相手は……

札に書かれた番号を見つつ、 エインは対戦相手を探す。

そして辿り着いた相手は……


「やぁ、 ようやく話せるタイミングが来たね」


目隠しをしているエルフの少年、 アフィーレであった。

彼は試験が始まって以来、 ずっとエインの事が気になって仕方がなかった。

そこで三次試験の抽選を管理する部署に頼み込み、 エインと試合ができるよう仕組んだのだ。

そのような勝手が許されるのは、 協会における彼の実力と直感が信頼できるモノであるからこそであろう。

……ここまで彼女の観察をしていたけど……彼女が使っていた魔法については何一つ分からなかった……なら……実際に体感してみるに限る……

そんな調子で内心ワクワクしてたまらないアフィーレ。

そして、 軽く自己紹介を終わらせた二人は試合の会場となる闘技場へ向かった。

…………


「エインさん……僕はずっと君と戦いたくてウズウズしてたんだ……」


彼でさえ感じる事が出来ない程に制限している魔力……他者の術式を一瞬で上書き出来る程の魔力操作技術……そして何より、 二次試験でのカルミスの防御結界の破壊……

アフィーレはエインの底知れない強さに興味が尽きない。

何故、 自分に対してそこまで興味を抱くのか……

そんなエインの疑問に対し、 彼は自分の人生が関わっていると話す。


僕は生まれて初めて魔法を目にした時から、 すっかり魔法の虜になってしまった……

気が付けば、 僕は魔法使いとして千年以上も生きていた……

でも……待っていたのはさほど良い現実でもなかった……

千年も魔法を極め、 もう学ぶことも無い程の知識を身に付けた僕は、 目にする魔法がつまらなく感じてしまうようになっていた……

皮肉なものだ……あれだけ大好きだったはずの魔法をいざ極めてみれば……その先に在ったのは『退屈』だったのだから……


しかし、 カルミス様と出会って考えが変わった……

彼女が使う魔法は、 僕が知る魔法体系とは全く違ったモノだったからだ……

こんなに面白い魔法がこの世にまだあったんだ と……その時は安心したよ……

それ以来、 僕は彼女に憧れた……彼女が見る世界を僕も見てみたい……そう思って、 この協会に入った……

協会に入ってからも相変わらず、 カルミス様以外の魔法使いには興味を持てなかった……きっとこれからもそうなんだろう……そう思っていた……

それでも良かった……カルミス様さえいれば、 少なからず僕は退屈しなかったから……


「ただ、 カルミス様は次元が違う……千年以上魔法を極め続けた僕でも、 あの方の魔法に対して一片も理解が及ばなかったからね……そこに君が現れた」


そう言うと、 アフィーレはエインの方を向き微笑んだ。


「君は恐らく、 現代においてカルミス様に最も近い領域に立つ魔法使いだ……これは僕の勝手な想像だけど、 君と戦えば……カルミス様の魔法を……その一端でも理解できる気がするんだ……」

「……」


……この人……魔法が大好きなんだ……

退屈と言っておきながら、 魔法を決して手離そうとしない。

初めて魔法を目にした時から、 ずっと魔法が大好きだったのもあるんだろうが、 きっとどこかで、 魔法に秘められた更なる可能性を信じていたのだろう。

彼の話を聞いたエインはそう思い、 少しでも彼の期待に応えられる事を願った。

そんな事をしている内に、 二人は闘技場に到着した。


「さぁ、 始めようか……」


両者が位置に付いた時、 アフィーレはそう言うと、 徐に目隠しを外した。

露わになった瞳は青と緑が混ざった宝石のようで、 とても男とは思えない魅力を放っていた。

しかし、 彼の瞳に見惚れる間も無く、 エインは異変に気付く。

彼の足元の影、 そこから黒い塊が浮き出てきたのだ。

その塊はしばらく変形しながらゆっくりとエインの前に移動し、 徐々にヒトの形になっていった。

そうして変形が終わる。


「これって……私……? 」


黒い塊はエインと瓜二つの姿に変形したのだ。

しかし、 本物とは違い、 その表情には感情が無く、 何も考えている様子は無かった。


「その通り、 これが僕の固有魔法……その名も、 『目にした対象を複製する魔法』……」


『目にした対象を複製する魔法』……本人曰く、 生物であれば視界に入れた対象を何でも分身として創り出せるという効果らしい。

また、 その分身は対象の持つ能力を完璧に再現できる他、 操る事もできる。


これはアフィーレが初めて魔法に触れた頃、 『魔法に対する探求心』が刺激された事によって生まれた魔法だ。

すなわち、 彼が最初に手にした魔法である。

しかし、 千年以上魔法を研究している彼でも、 未だにその魔法を完全には制御できていない。

現に、 普段から目隠しをしていないと不意に魔法が発動してしまう事もしばしばある。

その理由は……


「この魔法には術式が存在しないんだ……今もカルミス様と共に術式の開発に取り組んでいるけど、 そもそも原理が分からないからどうも行き詰っていてね……君なら、 この魔法の謎を解き明かせるかな? 」


……大魔法使いのカルミスさんでも解けない難問って事かぁ……なんだか面白そう♪

アフィーレの話を聞いたエインは子供のように目を輝かせた。

そして、 意気揚々とエインは構えようとした次の瞬間……


「……ッ! 」

「ッイィ! ! 」


エインの目の前数ミリのところまで剣の刃が迫ってきた。

それを間一髪のところを『全てを反射する魔法』で弾く。

……すっごぉい……目の前に来るまで全然見えなかった……ホントに私の分身なんだ……!

本物さながらの素早い動きをする分身にエインは驚き、 改めてアフィーレの魔法の凄さに興奮した。

しかし、 そんな感情に浸る暇もなく分身は次々と攻撃を繰り出してくる。

その様子にアフィーレは何故か笑い出した。


「あははッ! 魔法を使わないのにこの試験に挑んで来たなんて……君、 本当に面白い人だね! ♪ 」


そう、 分身は剣で攻撃するだけで、 魔法を使う気配が全くないのだ。

アフィーレ曰く、 分身に出した命令は目の前の敵の制圧、 及び攻撃……この命令を下すと、 分身は自身の持つ能力全てを使い、 対象が戦闘不能となるまで攻撃する。

すなわち、 攻撃方法に制限を掛けていない。

しかし、 エインの分身は剣でしか攻撃をしない。

本人と同じ能力を持っているのなら、 魔法で身体強化をするなり、 魔法による攻撃を混ぜるなり、 持てる全てを使うのが合理的のはず。

何故、 分身はそれをしないのか……

答えはアフィーレが創る分身の精度の高さにある。


アフィーレが創り出す分身には、 実は能力以外にも本人のある特徴をも再現している。

それは『思考』である。

正確には、 本人の『思考』を再現した『行動』をするという。

この特徴はアフィーレが如何に制限を取り払ったとしても、 必ず優先されるモノとなっている。

つまり、 分身は『如何に合理的か』ではなく『本人ならこうする』という行動メカニズムで必ず動くという事。

これにより、 模倣している本人との戦略的な差が殆ど無くなる。

ただ、 これだと総合的戦闘能力が本人と拮抗しやすいため、 長期戦になりやすいというのが欠点である。


以上の事から言えるのは、 エインの分身は少なくとも、 魔法による攻撃は一切行わないという事だ。

……本当に不思議な子だ……魔法使いしか受けない試験に、 魔法を全く使わない剣士の君が……どうしてこの試験に……

アフィーレは、 分身を通して相手の戦闘スタイルや、 日頃どのような考えで戦闘を行っているかが分かるだけでなく、 その者がどのような人生を歩んできたのかも自然に感じ取れるのだ。

しかし、 エインの分身を見た彼は分からなかったのだ。

彼女がどのような人生を歩み、 どうして魔法を使わないのにも関わらず、 全国魔試に挑んだのか……

我慢ができなくなった彼は一旦分身の動きを止め、 エインに聞いた。

すると……


「え……どんな人生って言われても……私はただ知らない事を知ろうとしてるだけだよ? この試験を受けたのもカルミスさんに会ってみたいってだけだし……」


きょとんとした表情で彼女は答えた。

そんな返答にアフィーレは一瞬唖然とするも、 次の瞬間には吹き出した。

……なるほど……この子は本当に素直な子なんだな……きっと、 好奇心の赴くままに生きてるんだろうなぁ……

彼女の分身が魔法を使わないのも、 剣術を教えた師からの言いつけなのだろうと、 アフィーレは納得した。

一つの疑問が晴れたアフィーレは、 試験を中断した事を謝り、 再び戦闘を始めた。


そして、 分身は再び凄まじい速度で動き回り、 連続で攻撃を繰り出してきた。

対し、 エインは相変わらず『全てを反射する魔法』で攻撃を防ぎつつ、 雷や氷、 またはシンプルな魔力光線でアフィーレに攻撃を仕掛ける。

アフィーレは飛んでくる攻撃を器用に防御しつつ、 分身の攻撃に混ぜるように魔法で攻撃する。

……当然のように分身の攻撃を捌きながら別の魔法を放ってくるとは……一体どんな頭してるんだ……

しばらく、 エインの戦いを見ていたアフィーレ。


その結果、 『魔力の神髄』を掴んだというエインについて分かった事が二つあった。


まず、 今の彼女には魔法発動に術式の構築、 詠唱といった過程を必要としないという事。

本来、 魔力に干渉して魔法の効果を発現させるのには術式や詠唱が必要とされる。

それが無いと、 現在のアフィーレのように魔法の完全な制御ができない。

そこを彼女はその過程を省いて魔力そのものに干渉し、 魔法を発現させているのだ。


より簡単な事に例えるなら、 手放しで自転車を運転しつつ読書や書き物をしているようなものだ。


それは魔力がどういったモノなのか、 どうすれば触れられるのか、 どうすれば性質を変化させられるのか、 それら全てを頭ではなく感覚で理解しているが故に成せる技である。

本人が上手く説明できない所以はそこにもある。


そして二つ目は、 エインは規格外の精神力を持っているという事。

いくら術式や詠唱が必要ないとは言え、 それらを用いない魔法の発動、 及び制御にはそれ相応の魔力操作技術と精神力、 魔力の量が必要になる。

魔力の量に関しては、 空間の魔力を用いて補う事が可能なため、 魔力そのものに干渉できる時点でそこまで問題にはならない。


ただ、 ここで一番の問題は『精神力』だ。


魔法管理協会の実験の一つに、 こういった記録がある。

『大気中の魔力に干渉すると、 脳に重大な負荷と疲労が加わる事が判明』

『カルミスの手引きで実際に協会の職員が実践したところ、 実験を始めた瞬間に気絶、 その後数時間に渡り頭痛による後遺症が残った』

『被験者曰く、 「頭の中に赤熱した釘を撃ち込まれるような激痛が走った」との事』

この事から言えるのは、 卓越した魔法使いであっても、 相応の訓練が無ければショック死する危険性があるという事だ。


「……とても人間とは思えないな……ハハ……」


エインのあまりの規格外さにアフィーレは笑う事しか出来なかった。

一方で、 エインはアフィーレにチョイチョイ攻撃を仕掛けながらも、 分身の観察をしていた。

……う~ん……やっぱり術式が存在しないから分解するのは無理かぁ……

ここまで分身に様々な魔法攻撃を試してみるも、 当然の如く回避される上、 『全ての魔術式を破壊する魔法』も通じていない様子。

だが、 エイン本人の方も分身の攻撃に当たる気配が無い。

長年剣術の鍛錬をしてきた彼女は知っているのだ、 戦闘における自分自身の脅威を……

故に、 彼女は日頃からこのようなシチュエーションをイメージしていた。

そのお陰もあり、 分身の攻撃に対して思ったよりも早く適応し、 ほぼ問題なく防御ができるようになっていた。

だが、 どちらにもダメージが入らないままでは埒が明かない。

そこで彼女は、 別の視点で分身を見てみる事にした。

続く……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ