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秘密 ~伯爵夫人~

その出来事はある日突然起こりました。



「奥様、失礼いたします。」



いつもと同じように図書館へと向かう準備をしていた時でした。



メイド長のいつもとは違う慌ただしい雰囲気に何かがあったのだと察します。が、



幼少の頃から厳しく躾けられていたこともあり、緊急事態になればなるほど内心の焦りとは裏腹に



表情筋は仕事をせず冷たく無表情を貫くばかり……



「急いでも事態は変わりません。伯爵家のメイド長らしくゆとりを持って行動なさい」



あぁ、決してこんな事が言いたい訳ではないのに、あなた達の事は主である私が守るから、



安心して落ち着いて話をしてと言いたいだけだったのに――…。



「もッ、申し訳ございません。奥様、」



「それで?用件は?」



用件を伝えたら通常業務に戻って大丈夫だから早く要件を話して戻ってもらおうと問いかける。



入ってきたときから顔色が優れないメイド長は私の言葉にさらに顔色を無くして、今にも倒れてしまいそうだった。



私が退出したらこの座り心地のいいソファーでしばらく休んでくれても構わないのに……



そんな事を思いながら彼女の言葉を待つ



「お気を確かにお持ちくださいね、奥様。ただ今、国王直属の近衛兵が2名、奥様のお迎えに来ております。」



「……詳しいお話は何かありましたか?」



「いいえ、王城へとお越しいただくために参ったとしか聞き及んでおりません。」



「旦那様は?」



「……本日は朝から出かけております。それから、近衛の方たちは…、なるだけ早く…と」



「……そう……、エルダ、アマンダ、支度を」



「「はい、奥様。」」



「メイド長、近衛兵様方に最高級のおもてなしを」



「かしこまりました。」



あッ、メイド長には早めの休憩を与えるように誰かに伝えておかなくては…



旦那様もいない、わざわざ近衛兵までつけて迎えによこすなんて…、



でも、逃げるわけにもいかないとくれば、伯爵夫人として恥ずかしくない武装で赴く以外方法はありませんね。





供にエルダを連れて馬車へと乗り込んだ。



王族にしか許されていない紋章を携えた馬車に揺られながら前の席に座っているこの国の王太子に説明を受けている。



乗り込んだ時ににこやかに座っている彼を見た時に心臓が飛び出るかと思った。



表情は一ミリも変化はなかったが……、



「御身が居られると知っていれば支度を早めましたのに…、お待たせして申し訳ありませんでした。」



口元を隠していた扇をとじ、座った状態で頭を下げる。すると王太子は、



「夫人、頭をあげてくれ。他の者に行かせる予定を無理に変更させたのは私だ。それに、もっとかかることを覚悟していたのだが、得をした気分だ。」



そのための厳重警備だと思えば少し納得がいったので、遠慮なく頭を上げ王太子を見つめずっと疑問に思っていたことを聞く。



「さっそくで申し訳ないのですが、私は何のために、どこへ呼ばれているのでしょう?」



終始変わらない表情の私に王太子は貼り付けている微笑を少し種類の違う微笑へと変えた。



あえて言うなら、なんだか面白いものを見つけた子どもの様な……


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