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秘密 ~当主の想い~

「ラセル、僕たちが結婚してどれ程になる?」



「はい、旦那様。1年10ヶ月と半月になります。」



「そろそろ僕の我慢が限界なんだが……?」



「私、旦那様が幼少の頃からお付き合いがございますが、それはそれは辛抱強いお方でございました。あと1週間ほどで手筈が整います。今しばらくのご辛抱を」



そう言って幼少の頃からの付き合いのある家令は、この家の主である僕に頭を下げる。



やっとの思いで彼女と一緒になれたのに――…、



こんな時には、彼女と知り合った幼少期に思いを馳せると気持ちが落ち着くのだった。





あれは今から20年前――…



当時僕は4才だった。我が家は元商家の子爵家。



〝お金で爵位を買った成り上がり〟



当時から陰でそう言われていたのは知っていたが、僕自身気にしていなかったし、



多くの貴族たちに資金援助をしていたので誰も表立っては僕の家を悪くは言えなかった。



そんな折、当時小競り合いを続けていた隣国と小競り合いでは収拾がつかない規模で戦闘が始まった。



もちろん我が家も多くの資金、食料を援助した。



そのかいあってか、戦争までは発展せず向こうが多くの苦い汁を飲む形で争いは収まった。



その時発覚したのが、我が家からも多額の借金をしていた伯爵家の国家裏切りだった。



もちろん一家断罪――。そしてその伯爵家が所有していた領地、領民、今回の功績を称えてという名目で



我がハイム子爵家に伯爵位と共に褒美という形で押し付けられてしまった。



思わぬ形で子爵から、伯爵へと上がってしまい、僕自身は覚えていたいのだが家族は大変な思いをしたらしい。



屋敷も爵位に見合ったものを建て、マナーに所作、お付き合いする人までがらりと変わった。



特に大変だったのは使用人。一から育てるのは大変なのでよそから教育のためお借りしたいが、



これがなかなか…、見かねた国王が罪悪感もあったのか城から融通してもらい何とか助かったと



父や母が言っていた。



そして僕はと言うと、10才になった年に王子様の学友候補としてお城に呼ばれた。



他の候補生はこぞっていかに自分が優秀かアピールしに行っていたが、僕は興味がなかった…。



男の子にも女の子にも群がられて、王子様って大変だな~と思ったのは覚えている。



見守りという名のメイドや護衛騎士の監視をすり抜けて僕は一人王城の庭園に足を踏み入れた。



子どもの目から見てもわかるほど素晴らしい出来にタメ息が口をつく



「この薔薇、見たことのない品種だ。なんて薔薇なのかな?」



まさか独り言に返事が帰って来るとは思わず、つい心の声が口から出てしまっていた。



「バラって、そのローズの事?それは王様がお妃さまのために作らせたローズだから見たことがなくて当たり前よ」



可愛らしく、くすくす笑う彼女から目が離せなかった。まさしく一目惚れ――。



それから彼女とは王子様のお茶会が開催されるたびに、この薔薇の場所で落ち合い話をした。



お互い名乗ることはせずに……



「ここで会うのも3回目ね。そろそろ呼び名がないと不便だわ私の名前は――…」



「待って!!名前を聞いてしまって、君との関係が変わってしまうのが僕はイヤだ!」



「…それなら、二人だけにしかわからない名前を決めましょう!う~ん…何がいいかしら?」



しばらく考えていた彼女がひらめいたような顔をしたあと口を開いたのだが



「バー…、ほら、あなた最初に…この花の事をバー…」



「バラ?」



「そう!バーバラ」



「違うよ。薔薇だよ!東の遠い国でこの花の事を薔薇って呼ぶんだって教えてもらったんだ。」



「東の遠い国――、素敵ね。それなら、私はバーバラであなたはバラム。これで決まりね」



「なんでバラム?」



「あなたのそのちょっとムッとした顔を見たら、バラムだと思ったの」



そう言って笑う彼女は今でも色あせることなく僕の心を虜にしている。


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