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秘密 ~乳姉妹メイド・香油師~

「エルダ、残りはいつものようにお願い。」



「かしこまりました。奥様」



私はいつものように残りの99本のバラを持ってある場所へと向かう。



3か月に一度は通う場所なので慣れたものである。



「こんにちは、今回もよろしくお願いします。」



「はい、了解しました。ですが、毎度言いますが、出来ればもう少し量が欲しいです…。」



「それは私の管轄外です。では、出来上がりましたらいつものように、よろしくお願いします。」



そう言って私は香油師の居る場所からお嬢様の居る屋敷まで急いで帰った。



私とお嬢様は乳姉妹として育ちました。



お嬢様の生家ユチル家は、歴史をたどるとそれは古い家格なのですが、



歴代のご当主様たちに足りないものが一つございました。…商才でございます。



お嬢様のお爺様、先代ご当主様の時代までは何とか体制を保っておりましたが、



とうとう屋敷の維持のため相当数の使用人が解雇されたらしいのです。



ですので、お嬢様は幼少の頃からある程度の身の回りの事は自分でされる方でございました。



しかし、昔の栄光にすがっていた先代より厳しく躾けられ、子ども時代は良く笑いになる方だったのに



今では、表情を動かすことの方が珍しくなってしまわれました……。



結婚が決まった時も、周りにはわかりづらかったと思いますが幼少期から共に育った私にはわかりました。



やっとこの地獄のような場所から抜け出せる。政略結婚かもしれませんが、どこかで淡い期待があったのでしょう……。




3か月に一度旦那様から送られるローズの花束。



お嬢様は毎回すぐにその花たちをローズウォーターや香油にして旦那様とのお食事の時邪魔にならない程度香りをまとって行かれます。



『永遠の愛』



99本のローズに込められた思いを旦那様は組んでくださっているのでしょうか?




どうか、今だけは乳姉妹としてお嬢様の今後の幸せを願わずにはいられません。







「また奥様の侍女からの依頼か?」



同僚からのからかい交じりの言葉に肩をすくめる。



この屋敷は旦那様の商売の一環で植物油を独自で研究している。そのため屋敷内に



庭師、香油師、研究者が出入りできる区画が設けられている。俺もその一人だ。



初めて依頼が舞い込んできたのは今から1年とちょっと前――…



見かけたことのない侍女が花束を抱えながらウロウロしているのが目につき声をかけたのがきっかけだった。



「どうされましたか?」




いきなり声をかけてきた男に警戒心むき出しの瞳。



俺がここの香油師だと分かると、少しだけ警戒を解きこう尋ねてきた。



こんなにたくさんの花たちをただ飾って枯らしてしまうのがもったいないと奥様が心を痛めている。



しかし、自分にはどうする手立てもなく、花を抱え彷徨っているっと…



そこで、姿は変わってしまうが香油や化粧水などにして香りをまとってはどうかと提案した所、採用。



彼女とはそこからの付き合いだ。



感情が高ぶった時に〝奥様〟ではなく〝お嬢様〟と言い間違えてしまう彼女がかわいい。



『お嬢様がとても喜んでくれた。あんな笑顔は久しぶりだった。ありがとう』



俺は今日も彼女の笑顔を守るために、そして、ありがとうを言われるために、少ない花弁からせっせと香油を作る。



俺が守りたいのは奥様の笑顔ではなく、彼女の笑顔だ。願わくばその隣に居られる許可が欲しい……。




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