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秘密 ~古参メイド~

「奥様、旦那様からお花の贈り物が届いております。」



「そう、今回はなにかしら?」



「ピンクのローズが全部で100本でございます。先に一輪だけ包装されたものがカードと一緒に届きまして、残り99本があとから届きました。お返事を書かれますか?」



「…一輪の方は花瓶に、エルダ、残りはいつものようにお願い。夕食の時にお礼はするので手紙はいいわ」



三か月に一度ほど思い出したかのように旦那様から奥様へと花が届きます。



私、ハイム家に先代の頃から務めており、奥様が嫁いで来られてから側付きになったメイドでございます。


坊ちゃまも、昔はこのような方ではなかったのですが…



奥様が少々不憫でなりません。



しかし、奥様も何も言わずじっと耐えているだけでは何も改善しませんのに――…



本日も奥様はゆっくり朝食をおとりになったあと部屋で刺繡を少々、庭の散歩。



昼食後、図書館でしばしお過ごしした後、部屋へと戻る途中で足をお止めになりました。



いったい何に足を止めたのだろうと窓の外に視線をやると、庭師の男性が見事に咲き誇っている花の手入れをしているところでした。



確かに見事だと私もしばし見入っておりましたが、奥様の様子を観察していると、



どうも私が感じていたものとは違うところに視線が向かっておりました。



表情からは読み取れませんが、花よりも庭師の男性を熱心に見つめているような気がしてなりません…。


しかし、そばに寄らせるわけでもなく、手紙のやり取りがある訳でも、ましてや不貞を働いている訳でもございません。



ただ、庭師の彼が仕事をしている姿を、熱心に見ておいでなだけでございます。



私には何も言う事は出来ません……。






本日は滞りなく業務が終了し、久しぶりに主人も定時で帰宅。一緒に夕飯を囲み、



ホットワインをソファーに座りながら二人で(たしな)んでいるところでした。



「アマンダ、今日はため息が多いね…。何か心配事かい?」



「あなた…、ウィリアム様はどうしてしまったのかしら?私は奥様が不憫で…、」



夫はハイム家の執事をしている。そんな夫にこの事を伝えてもいいものかと思ったが、



私の心の中だけに収めておくのは難しいと思い今日あった出来事を包み隠さず話した。



「……見ていただけなの、決してその庭師とコンタクトを取ろうとなんてしていなかった。でも…、瞳が物語っていた。私は、どうすればいいのかしら」



同じ女として、幸せになりたい。私だけを見て欲しい。



私は夫を見つめた。もし彼が、言葉や態度で愛情を伝えてくれなかったら、私は絶望に打ちひしがれるだろう。



少しの酔いもあってか私の目に涙が浮かんだ。夫はそれを優しく掬い取ってくれると、胸元に抱き寄せながら、



「アマンダ、大丈夫だ。君が思う通りにはならない。奥様も、ウィリアム様もみんな幸せになれるよ。」



私はしばらく夫の胸の中で涙が止まらなかった。願わくば、奥様も涙をこぼしたとき抱きしめてくれる方が現れるように――…



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