秘密 ~元新人アンナ・第一子ウィルフレム~
本日のお屋敷は朝から大忙しだった。
「ウィルフレム様、起床のお時間でございます」
あの頃、新人メイドだった私。今では立派?に坊ちゃまとお嬢様の専属メイドとして働いている。
新人時代、奥様の置かれている状況があまりにも不遇で、表には出ませんでしたが旦那様の評判はメイド達の中で底辺でした。
しかし、すべての物事が明るみに出てから知った旦那様の暗躍に頭が下がる思いと共に、奥様への思いの強さに幼少から奥様についていたメイドのエルダさんが涙していたのが印象的でした。
それからは寝室も一緒になり、二人だけの肖像画など何枚描いたことでしょうか…
その翌年には第一子ウィルフレム様がお生まれになり、ただ今第四子をご懐妊中でございます。
時おり奥様がため息をついておられる所を目撃しますが、その後すぐに仕方ないという様に微笑んでいる様を見ると私は胸に込み上げてくるものがございます。
それでは、本日は奥様と旦那様の結婚記念日のお祝いですのでしなければならないことが目白押しです。
大変なのですが、年に一度のこの日は準備が済んだら使用人もパーティーに参加していいのでみんな楽しみにしている日でもあるのです。奥様の提案でこのスタイルになりました。優しい方なのです
末永くお側でお仕えさせていただきたく思います。
……
「おはよう。今日も最高の日和だね」
「おはようございます。お父様、今日は曇りですよ?」
「フレム、なにを言っているんだ、ローズが僕に挨拶をしてくれただけで最高の一日だよ」
おはようございます。ハイム伯爵家第一子、ウィルフレムです。
本日もお父様のお母様愛は炸裂していますね。
僕が生まれる前は大変だったと言う事を小耳にはさんだことがありますが、今ではそんな影すらありません。
もちろん、お父様は僕たち子どもへの愛情も過多です。第二夫人や側室など無縁の様です。
妹のロゼリアは髪や瞳の配色はお父様ですが、お母様に瓜二つで来週開催される王室のお茶会に
どうやって欠席するかお父様が試行錯誤しています。まぁ、無理だと思いますが……
話は変わりますが、我が家の方針はやりたいことは何でもしていいとなっています。
お父様が庭師の真似事をしてお母様に出会ったように、どこに運命の相手と知り合うチャンスがあるか分からないと言われたので、何が自分の好きな事なのか探し中です。
「…ッぉぎゃぁ~ッ…」
あッ!最近妹が生まれました。お母様が小さい頃の僕にそっくりだと言っていましたが、初めは小さくてふにゃふにゃで触るのも怖かった――…。
でもある日、泣いているのに誰も手が空いてなくてしばらく泣き声が響いていました。
可哀そうで、でも側に寄ったのにどうすることもできなくて僕の方が泣きそうになってしまって…。
「ごめんね…」
そう言ってベッドに手を伸ばしたら僕の指を握って泣き止んでくれたんです。
あとから聞いた話では、赤ちゃんは反射で握ると教えてもらいましたがそんなこと関係ない。
僕はあの子が大きくなるまでそばで見守ります。リリアル、僕の世界一かわいい妹です。
もちろん、他の兄妹もかわいいですよ?でも、ちょっとお父様の気持ちがわかりました。
それでは行きますね。さようなら
拙い文章にここまでお付き合いありがとうございました。