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秘密 ~新婚旅行2~

出発のために連れてこられたのは、最近実用化された飛行場だった。




「ウィリアム様、ここは…」




「うん?あぁ、君が時間の事を気にしていたから心配いらないように飛行船のチケットを取ったんだよ」




「でも、最近実用化されたと小耳にはさみました。無理をされたのではないですか?」




「……僕の妻はなんて健気なのだろう。ローズ、今の君に手に入らないものなんて実は何もないのだよ?好きな事を願ってごらん」




ウィリアム様の言葉に私は戸惑います。自分から何かを欲しがったことなど今までの人生で一つもありません…。しかし、彼の期待に満ちた眼差しに何か言わなければと考えた後、




「…――ウィリアム様が無理をなさらない事と、願わくば、これからもお食事をご一緒に…したいです…。」




差し出がましかったでしょうか…?ウィリアム様からのお返事がないことに内心冷や汗が滝のように流れます。




やっぱり何でもないと口に出す前に私の体はふわりと持ち上がりました。驚き、目の前にあるものにしがみ付きました。




「ローズ、ローズリアル、あぁ、君はなんて欲がないんだ。そんな君だから、僕はきみが愛しいんだ。」




順番が来たのか名前が呼ばれましたが、ウィリアム様は用意されていた座席に座っても私を膝の上から下ろしてくれませんでした。心臓が持ちません……。





快適な空の旅でした。時折、乱気流が発生することがあるらしいのですが、今回の運行は問題なく目的地に到着したそうです。




「グラリス地方へようこそ」




ウィリアム様に手をひかれながら降り立った地は見渡す限り広がる草原と雲一つない澄んだ青空だった。




そのさらに向こうには海が見える場所もあるらしい。




「ローズ、疲れているかもしれないが君を連れていきたい場所があるんだ。つき合ってくれるかい?」




ウィリアム様が私に手を差し伸べます。いったいどこへ連れて行ってくれるのでしょう?






そこは小高い丘に建っていた少し古いお屋敷だった。お屋敷と言ってもどちらかと言うとこじんまりしている。




「ここだよ。」



そう言って私たちを出迎えてくれたのはどこか見覚えのある人々だった。



「お前たち、顔を上げて挨拶をしてくれ」



私の様子を見てウィリアム様が皆に声をかけた。下げていた顔を上げるとそこにはユチル家に長年勤めてくれていた執事とメイドだった。




その他にも、料理人、庭師、見知った顔がここには集まっていた。胸がいっぱいになり、言葉が出てこない。代わりに私の瞳からとめどなく涙があふれた。




「優しい君のことだ、ずっと心残りだったのだろう?心配しなくても、君の大切なものはすべてここに連れて来たよ。勝手な事をした僕を許してくれるかい?」




私は口を開くと嗚咽が漏れそうで言葉を紡ぐことが出来なかった。かわりにはしたない事だと知りながらもウィリアム様の胸の中へと飛び込んだ。




その後、この屋敷に私のお父様とお母様が療養していると知り、涙は枯れることがありませんでした。


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