秘密 ~その後~
急遽決まった留学は、気づけば5年もかかってしまった。だが、パイプもできたし事業も軌道に乗った。
あとの事を現地の部下たちに任せて、帰国。そうしないと彼女が心配で……。
もちろん、僕が雇った者たちに彼女の事は監視させていたので報告は受けていた。
そこで出てきたのは、彼女が家の中で不遇に扱われている事。
彼女の祖父が何やら怪しい連中と付き合いがある事、両親もなんだか危うい事だった。
これは早めに動かないと、彼女を足掛かりに前伯爵がよからぬことを企みそうだと、
まずは自国の王子を巻き込み、隣国のまともな第三皇子と秘密裏にラインをつないだ。
そう、我が家が伯爵になったきっかけを作ってくれた国の皇子だ。
この時は留学先で築いていた人脈が役に立った。水面下で隣国のクーデター支援と、
自国でのユチル前伯爵の証拠集め。その間に彼女をあの家から離すために結んだ結婚――…
結婚を機に押し付けられた伯爵という称号。領地運営と、彼女を自由にするために翻弄した歳月6年
白い結婚を2年も送らせてしまい彼女には申し訳ない気持ちが湧き出たが、それが今日の裁判ですべて報われた。
彼女は本当に何も知らなかったし、実は彼女の両親も薬の禁断症状により操られていたにすぎない。
あとは隣国の平定に微力ながら支援をして彼女との新婚生活をやり直せれば、いや彼女さえ側にいてくれればそれでかまわないんだ。
心穏やかな彼女の側でぼくはまた彼女のためにバラを育てる。
それなのに彼女ときたら、修道院に入るなんて……僕の愛を試しているんだね?
それなら、僕が君の事をどれほど愛しているか夜通し語り合おうではないか。
☆
はじめましての方もいらっしゃるでしょうか?執事のラセルと申します。
当伯爵家は、今回の功績を称えられましてめでたく侯爵へと爵位を拝命いたしました。
旦那様は、手ずから持ってこられた王太子様に
「いらない」
メイドと家令は冷や汗ものでした。お戯れが過ぎます坊ちゃま
「権力はあった方が愛しの人を守るのに役立つよ?」
「義務も増えるじゃないか!やっと彼女との時間が取れると思ったのに、忙しくて…彼女と二人遠くに行きたい。」
この方は本当にやりそうなので王太子様、これ以上刺激するのはやめていただきたい!
私の想いが通じたのか、王太子様はからかうのを止め、真面目な顔で旦那様にこう告げられました。
「20年前と今回の騒動であらかたの膿は出し切ったって父上がおっしゃっていたから、侯爵位への手続きとある程度の采配がすんだら、彼女を連れてあそこへ行ってあげるといいよ」
旦那様たちの話している場所が私が思い描いている場所なら、確かに奥様はお喜びになるでしょう。
さすが王太子様、人心掌握がお上手な事で旦那様のヤル気に火が付きました。
これは私もしばらくは気合を入れ直さなければなりませんね。