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秘密 ~バーバラとバラム~

「ローズリアル、僕の話を聞いてくれるかい?」



お茶を飲み一息ついたところで旦那様は口を開きました。



結婚してから初めてまともに名前を呼ばれたような気がします。



「僕には子どもの頃に会ったある女性が忘れられなかった。」



あら?これはやはり今すぐにでも離縁して旦那様を自由にしてあげるべきでは…



「彼女と会ったのは王城の庭園だった。僕は昔から植物が好きで、それが高じて自分でもお世話をするようになったんだ。もちろん内緒でね」



そうだ、貴族それも伯爵家の者が庭いじりなど論外だろう。



「だが、僕の両親も商売が好きで好きな事をしていたから、僕も領内では許された。あの日も、見たことのない品種のバラ(・・)に見入っていて、独り言のつもりでつぶやいた」



「「このバラはなんて言うバラだろう」バーバラ、やっとすべてが片付いたのに君を修道院なんかに行かせるわけないだろ?」



その呼び名はあの秘密の場所で私とバラムだけのもの…旦那様がバラム?でも…、



「髪や瞳の色が違う?」



私が言いたかったことを先に言われてしまい内心焦る。表情は変化なし



「僕の家系はね、幼少期から青年期になると色彩が濃くなる特徴があるんだよ。あっ、疑っているね?幼少の頃の肖像画を今度見せてあげるよ。」



それなら本当にバラムなのだろうか。お茶会の度に会えていた彼にパッタリ会えなくなったのはいつからだっただろうか…。



「あの頃何も言わずに君に会いに行けなくなってしまってすまない。他国への留学が急遽決まってしまい伝えることが出来なかった。本当のことを言うと、君の事はあの頃から誰なのか分かっていた。でも実名で手紙を送っても困らせると思って送れなかったんだ…。」



あの頃、あの時間は私にとって一番息をするのが楽な時間だった。突然それが奪われて悲しくて辛くて。いつしか思い出すことも辞めてしまった。



「バーバラ、いやローズ、今日から夫婦としてやり直したい。君に送っていた1本のバラと99本のバラ、あれは義務なんかじゃない。僕の本当の気持ちだ」



1本のバラ=一目惚れ

99本のバラ=永遠の愛・ずっと好きだった

100本のバラ=100%の愛



私も彼に教えてあげよう。1本のバラはフリーズドライにして飾ってあり、99本のバラは香りにしてまとっている。いつもあなたに包まれていたいという気持ちなのだと。



まだ夜は始まったばかりだ。

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