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何を食べるかじゃない誰に食べさせてもらうかだ!

「そういえば朝ギリギリだったけどどうしたんだ?」

「えっとね。冬里が」

「なるほど。もう言わなくていい。大体察したから」

「ふふ。これで分かっちゃうんだ。さすが仲良し兄妹だね」

「冗談でもやめろよ」


一緒に暮らし始めてまだたったの数日だが春樹の見立てでは夏希は真面目だ。遅刻するようなことをするようには思えないので、気になって聞いてみると冬里の名前が返ってきた。

詳細を聞かなくても春樹にはなんとなく想像がつくのだ。いままでも春樹自身同じようないたずらをされてきたから。過激なイタズラを夏希相手に冬里がするとは思えないので、目覚まし時計を止められたとかそんなところだろうと予想する。

なんであろうがろくでもない事には変わらない。


「そのせいで朝ごはんも食べられなくてさ。もうお腹ペコペコだよ」

「マジかよ最悪だな。俺なら絶対ブチギレてるぞ」


春樹の隣を歩く夏希はお腹をさすってお腹が空いているとアピールする。

職員室を出てすぐは春樹に荷物を持たせて申し訳なさそうにちらちらと顔色を窺うように見上げてきていた夏希も話しているうちに調子を戻してきたようだ。


もしあの場に居たのが冬里だったなら出会った途端に荷物を教室に持っていけと春樹を顎で使っていただろう。そして春樹に持たせるだけ持たせ冬里はそのまま颯爽と手ぶらで一人で教室に帰るはずだ。それはそれでムカつくのだが、夏希のように申し訳なさ全開で隣を歩かれるよりは冬里の方がマシかもしれないとも春樹は思った。


「そんなこんなでいつもよりお昼ごはんが楽しみなんだ」

「でも今日の昼めしの酢豚にはでっけーピーマン入ってるけどな」

「うっ。思い出したら食欲なくなってきたかも」

「残さず食べろよ」

「努力します…」


自宅での食事で野菜をあからさまに避けているので、夏希が野菜を好まないのを春樹は知っていた。

一方、春樹に言われ楽しみにしていた昼食に提供された酢豚に入っていたごろっとしたピーマンを思い出して夏希は顔を顰めた。


「あれ、てか春樹くんたちはもうお昼食べ終わったの? まだお昼休み始まってまだ十分も経ってないよ」

「授業が終わってすぐに弁当貰いに走って、教室帰ってかき込んだ」

「あまりカラダによくなさそうだね」

「しょうがないだろ。早く食べないと場所取られるんだ」


春樹たち男子のグループはバスケットボールをすることになっていた。一つしかない体育館の一面を確保するためにはいかに早く昼食を終えれるかが勝負なのだ。

以前に昼休み開始と同時に先に場所取りの生徒を送り込んで、昼ごはんを食べた生徒たちが合流したら場所取りしていた生徒が食べに戻る。という作戦を春樹たちは立てたことがある。


しかし場所取りが1人2人だけだと春樹たちが合流する前に上級生が先にやってきてしまうと圧力に屈してしまい場所を譲ってしまう。また半分が場所取りをしていても、その人数なら半面でいいだろと言われてしまって一面分のコートの確保は難しい。


上級生が来る前に食べ終え全員集まり、ここ使ってます感を出さなければ一年生の春樹たちには遊び場所の確保ができないのだ。

だから一年生でお昼休みに体育館で遊ぶ時は早食いが必須になっていた。


「そ、そうなんだ。なんだか大変そうだね」

「そうなんだよ。ここもう場所取りしたんでって言ってやりたいんだけど、上級生の中に部活の先輩がいたら譲る奴もいるんだよ。まあ俺だったら絶対明け渡さないけどな」

「わお、春樹くん頼もしいね」


思い返して見れば夏希の時代でも似たようなことはあった。

夏希の通っていた中学校はクラスごとに分かれて給食で、ある程度みんなが食べ終わったらごちそうさまをして昼休みだったので早食いは意味をなさなかった。

そのため早く昼休みにしたいがために周りを早く食べるように言ったり、日直にごちそうさまのタイミングを早めるように催促したりしていた。


「ちなみになにして遊ぶの?」

「今日はバスケだな。俺はサッカーが良かったんだけど」

「そういえば春樹くんってサッカー部なんだっけ?」

「おう、そうだ。夏の大会にだって出たんだぞ」

「え、すごい」

「つっても部員の人数多くないから余程下手じゃなければレギュラー確定なんだけどな」


全校生徒が部活動に参加することが義務付けられてるためその部活に所属している生徒も少なくない。そのため本気で部活に取り組んでいない生徒も少なからずいる。

また部活は遊び感覚暇つぶしで出るけれど、試合にこだわらない、出たくないという部員がいることも珍しくない。

浜那美中学校のサッカー部の部員は多くないので一年生の春樹でも試合に出場できた。

サッカー部では三年生が引退となったいまでは残った部員で一チームがなんとか出来上がる人数しかいない。


そしてそれはサッカー部に限った話ではない。過去の浜那美には中学校が二校あったのだが近年統廃合され、ここ浜那美中学校に統合となった。それでも全校生徒数は二百人にも届かない。どの部活動も人数が潤沢とは言えないのだ。


夏希たちが歩く廊下には教室が三つ並ぶが、一つは空き教室で現在使用されているのは二つだけ。空き教室は週に一度くらいの選択授業などで使われることがあるため机と黒板の最低限の設備はまだ残されている。

過去には統合しなくとも三つの教室を必要とするだけの多くの生徒が在籍していたことが伺えた。


「それでも上級生に交じって試合に出るなんてすごいよ」

「そうか? まあ一回戦負けだったけど先輩の記念試合のために俺と謙吾がディフェンスに回ったのが主な敗因だな」

「言うねえ」

「事実だしな」

「その謙吾さんっていう人はこの間、わたしが帰る時に学校の坂道で会った近見さんだよね? その人もサッカー上手いんだ」

「そうそう。その謙吾。俺たちがフォワードだったら地区大会くらい優勝間違えなしだったんだけどなぁ」


まだクラスメートの名前もろくに覚えていない夏希だが、謙吾という人物に聞き覚えがあった。

春樹に確認をとってみるとやはり夏希の予想した通りの人物だった。慣れない靴で急な坂道を下っていた夏希を驚かして転倒させようとしたイケメンで当たっていたようだった。

イケメンでサッカー部とかさぞモテそうだなと夏希は勝手な偏見で何故かちょっと嫉妬した。


「あはは。すごい自信だね」

「ぶっちゃけ。部内で一番上手いの俺らだし。あ、念の為。いまの話し先輩達には内緒だからな」


一年生の教室の廊下なので先輩は通らないので大口を叩いてみた春樹であったが、さすがに先輩の耳に入ったらまずいと思い

周囲を見回した。

いまさら声をひそめても遅いが春樹は小声で夏希に口止めした。


「うん、わかった。じゃあ来年に期待だね」

「ああ。存分に期待しとけ」


まだ昼休みも始まったばかりの時間であったため、みな教室で昼食を食べていたため廊下には夏希たち2人しかいなかった。

だから春樹はいまの話しを唯一聴いていた夏希に口止めをした。


一組の教室の前までやって来た。持っている荷物のせいで両手が塞がっている春樹のため夏希が教室の戸を開ける。

教室の中ではまだ多くの生徒たちが食事をとっており開かれた教室の戸の音に反応して夏希たちに視線が集まったが、それも一瞬のことですぐに生徒たちは各々の昼食や会話に戻った。


「夏希。これどこに置けばいいんだ?」

「先生は教卓の上に置いといてって言ってた」

「了解」

「わざわざごめんね。ありがと春樹くん。それ貰うよ」

「ここまで来たんだ。席まで持っていってやる」


春樹は置く場所を夏希に確認すると、どさりと教卓にプリントの束を置いた。

お礼を言って教科書の入った紙袋を受け取ろうと夏希が手を伸ばすが、春樹は席まで運ぶと言って遮った。


「なっちゃん。お勤めご苦労さま!」

「ただいま。まあ教科書受け取っただけなんだけどね」

「教科書?」

「うん。いま春樹くんが持ってくれてるやつ」

「これだ、これ」


何も持っていない夏希をみて首を傾げる冬里に、見せつけるように春樹が紙袋を掲げてみせた。

冬里と栞は三つの机をくっつけ先に昼食を食べ始めていた。その中の夏希のカバンの掛けてある机に春樹は紙袋を置いた。


「ほお。やるではないかハルくん。やっと兄としての自覚が芽生えたか」

「うわっ、ほんとだ。香月くんがお兄ちゃんしてる」

「うっせ。てか栞、お兄ちゃんしてるってなんだよ」


冬里がお弁当を受け取って教室に帰って来た時には、もう春樹は食べ終えてほかの男子生徒たちと体育館に行くと言って教室を出て行くところだった。

それが担任の桃山に呼ばれていた夏希とともに何故か大荷物を抱えた春樹が帰ってきた。


「じゃあ俺は行くから」

「運んでもらってごめんね春樹くん。本当にありがと」


夏希の性格的に自分から荷物を持ってとは頼まないだろうから、春樹が自ら荷物持ちを買って出たのだろうと冬里は思う。

もし荷物を持っていたのが冬里であったならば春樹は一見する

だけで手伝おうともしなかっただろうに。

新しい妹には随分と優しいお兄ちゃんを演じているようだ。


「ハルくん。褒美にパイナップルあげようか?」

「いらんわ」


でもまあ、そんな事があれば無理矢理でも押し付けるんだけどね。と冬里は酢豚に入っていたパイナップルを箸でつまんで春樹に差し出す。

それに春樹は見向きもせずに教室を足早に出ていった。


夏希は新しい教科書の整理をするのはひとまず後にして先に食事をとることにした。

机には先ほど貰って来たおかずのみのお弁当と夏希のカバンから冬里が気を利かせて取り出していた自宅から持参してきたご飯だけ入ったお弁当箱が並んでいた。


今の身体になってから夏希は食べる量は減ったがお腹が減らないわけではない。

きっとこれからくる成長期のためにしっかり栄養をとって周りに、とくに身長を追いつかねばならないのだ。


「ん?」


お弁当のプラスチックの上蓋を外したところで夏希は異変に気付いた。

教室に戻ってきてから冬里はお弁当を夏希から隠すように食べていた。冬里のやる事なので気にすることではないとスルーしていたが、夏希は自分の酢豚の状態をみてそうも言ってられなくなった。


「ちょっと冬里。そっちのお弁当見せてよ」

「な、なんだい。なっちゃん? あ、パイナップル食べる? 一個あげるね!」


夏希のお弁当に冬里がパイナップルを一つ戻したことで酢豚の多くを占めていた緑色に色どりが加わった。


「ねえ。冬里?」

「え。足りないって? もっと欲しいのかい。卑しいやつめ! しょうがないな。好きなだけ持っていけ!」

「冬里?」


夏希が名前を呼んでも冬里は焦った様子でパイナップルをどんどんよそってくるだけで、会話をしないどころか目も合わせようとしない。


「栞さん。状況説明を」

「はーい。夏希ちゃんがいないのをいいことに、冬里は夏希ちゃんの酢豚からピーマンとパイナップルを全てチェンジしてました。ちなみに私は止めました!」

「冬里ぃ!」

「しおりーん! なんで言っちゃうの!?」

「私が言わんでもバレてたでしょ」


夏希と別れて冬里は教室に帰り栞に事情を伝えて先に昼食を食べることにした。

なにも冬里は最初から入れ替えていたわけではない。冬里は苦いものが苦手だ。

だから苦いものがはいった料理が出たら春樹にいつも押し付けていた。けれど今日は肝心の春樹がすでに食べ終わっていたので仕方がなく。


そう心苦しかったが仕方がなく夏希の酢豚にピーマンを移動した。

最初はバレないようにとひとつだけ。ピーマンをちょびっとだけかじってみた。苦さに顔を顰め、口直しにパイナップルを食べた。

やっぱり食べれないのでもう一個だけと夏希の弁当にこっそり移した。そしてピーマンをあげたのでお返しにとパイナップルを貰った。

それを何度か繰り返し、気づいた時には冬里のお弁当からピーマンは無くなっていた。


「信じられない。わたしもピーマン嫌いって知ってて冬里いれたの?」

「ううぅ。仕方がなかったんだよ。頼みの綱のしおりんも食べてくれないし」

「だって普通に食べれるけど自分から進んで食べるほど、私ピーマンが好きじゃないからさ」

「言い訳はいいから容器を貸しなさい」


冬里が隠すようにしていた酢豚の入った容器を夏希は引き寄せる。パイナップルは返してもらわなくてもいいのでそのままにピーマンだけを返却した。


「ちょ、ちょっと。なっちゃん! 気のせいかな? 私の方がピーマン多い気がするんだけど?」

「気のせい気のせい」


夏希が返却したピーマンはたまたまうっかり冬里の方の多めになってしまったが仕方がない。こうなったのも元はと言えば冬里がまいた種なのだ。しっかり責任を取って食べて欲しい。

隣から聞こえる抗議の声を聞き流し夏希はやっと食事にありつける。


まずは件のピーマンを夏希は箸で持ち上げた。もしかしたら身体の変化とともに味覚の変化も起きているかもしれない。今日まで食べた他の嫌いだった食べ物はみな変わらず嫌いな味だったけれど今回は違うかもしれな。

そんな淡い思いを抱いて夏希はピーマンを口に運ぶ。最初はピーマンが纏う甘酸っぱいタレの味がする。しかし嚙みしめた瞬間から苦味が口の中に広がり夏希は顔をしかめた。


「おお。えらーい。夏希ちゃんは嫌いなものも食べれるんだ。それなのにお姉ちゃんの冬里は食べれないのー?」

「た、食べれるもん! あむっ! うぇぇ。まずいぃ」

「あははは!」


栞に焚きつけられて冬里も一瞬躊躇したがピーマンを食べた。どれだけ二人が勇気を出したところで味は変わらない。ピーマンの苦味にあえなく夏希と冬里は撃沈された。

夏希と冬里は気付いてないだろうけれどピーマンを食べると顔をしかめたあと小さく舌を出すという反応を揃ってするものだから栞は笑ってしまった。


「しおりん。笑いすぎ性格悪いぞ!」

「ごめんごめん! 二人とも同じ反応するものだから面白くて。なんかこうして見ると本当の姉妹みたいだよ」

「ほんとに! そっかそっか! やっぱり私ってばお姉ちゃんに見えちゃうよね。ほらほら、なっちゃん。お姉ちゃんですよー」

「離れて。ご飯食べれない」


栞に姉妹の様だと言われ嬉しい冬里は隣の夏希に抱きついてくる。

姉妹とは言われたが冬里が姉とは言っていないだろうと訂正する気にもならず、夏希は自分を抱く邪魔な冬里の腕を解くと昼食に戻る。

口直しに食べたパイナップルがとても美味しかった。冬里の酢豚をみて今からでもパイナップルを返してもらえないかと夏希は思案する。


「冬里って夏希ちゃんのことほんと好きだね」

「そりゃあ大事な妹ですから! なっちゃんの頼みならお姉ちゃんなんだって応えちゃうよ!」


誰に何を言われようが二人は名目上は姉妹なので冬里が何故そんなに喜ぶのかが夏希には解らなかった。

しかし夏希はいい事を聞いてしまった。冬里は夏希の頼みとあらば断わらないらしい。


「冬里おねぇちゃん。わたしピーマン食べられないよぉ。だから代わりにおねぇちゃんに食べてほしいなぁ。はい、あーん」

「「……。」」


冬里のシャツをつまんで引き振り向かせるとそう言って夏希はピーマンを掴んだ箸を向ける。

元々の身長差を利用して上目遣いをしつつ、小首をかしげ精一杯の甘えた声を出して冬里にしゃべりかける。

突然の夏希の奇怪な行動に二人は黙ってしまった。


凍りついた空気に夏希ら自分やらかしてしまったと気づく。調子に乗ってしまうと空気を読まなくなってしまうのが夏希の悪い癖だ。

冬里は出会った時からあまりにも距離感が近く、ノリもよく昔からの知り合いのように話せるので勘違いしてしまっていた。勝手にもう友達と思い込んで馴れ馴れしく接してしまっていたのだ。


黙り込んだ二人は完全に夏希に引いているのだろう。出会ってから数日のまだ他人以上友達未満の人間に猫なで声で突拍子なく話しかけられれば誰でもそんなに反応になってしまう。

謝ろうと夏希が口を開くよりも先に冬里が口を開いた。


「はむっ!」


冬里は差し出されたピーマンを食べてしまった。


「うぐぐ。お、おいしいよ! お姉ちゃん、なっちゃんに食べさせて貰ったから嫌いなピーマンの苦味も不思議とおいしく感じる。うっ」


ピーマンを咀嚼しつつ時折りえずくなか、気を遣ってくれているのか冬里は目に涙をため笑い、美味しい美味しいと言って嬉しそうに装ってくれた。

つまらない冗談を言って苦手なピーマンを無理矢理食べさせたのに夏希をフォローしてくれる優しい冬里をみてひどく自己嫌悪した。


「ごめんね冬里。わたしそんなつもりじゃなかったの。もう今後絶対しないから許して」

「ううん! そんなことないよ。本当においしいかったから! これから毎日して欲しいくらいだよ!」

「夏希ちゃん夏希ちゃん! 私も栞お姉ちゃんって言ってあーんってしてくれてもいいんだよ!」

「栞さんもありがと。あとは自分で食べるから大丈夫」

「えー!」


優しい冬里たちのことだ夏希を気遣って話の流れに乗ってくれたのだろう。慌てた様子でフォローしてくれる二人に夏希はいたたまれない気持ちになる。

やらかしてしまったと気持ちが沈んでしまった夏希は黙々とご飯を食べ進めた。幸か不幸か昼食は食べ物の味がしなかったので酢豚を残さずに完食できた。


「ちょっとなにあれ、ヤバっ! 不意打ちであれは反則だって!」

「きゃー! なっちゃんにお姉ちゃんって呼ばれちゃった! 私うれしすぎて一瞬意識飛んじゃったよ!」


夏希自身は冬里たちにドン引きされてしまったものと思い、これ以上傷つかないように周囲の声をシャットダウンしていて聞いていないが、冬里たちが思っているのはそうではなかった。

一年生の中で夏希は誰より群を抜いて幼い見た目をしている。その見た目とは裏腹に子供っぽい態度はなく、落ち着いていて振る舞いはどこか大人のように感じることさえあった。

いろんな意味で同い年かと疑いたくなる夏希だが、それが突然見た目通りの幼い表情で甘えた声を出すものだから冬里も栞も不意をつかれて驚き、その愛らしさに気を取られ反応が遅れてしまった。


「どうしよう冬里。私も妹欲しくなってきちゃた!」

「あげないよ! なっちゃんは私だけのものだもん!」

「そんなこと言わずに。たまにでいいからさ夏希ちゃん私にも貸してよ。ね、お願い!」

「しおりんのお願いでもこればっかりはダメだから!」

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