表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たびガール  作者: 諏訪いつき
7章 三浦半島編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/68

3話 暗中模索

 スーパーに戻った茉莉は、手持ちのスポーツドリンクがもうすでに半分無くなっているのを見て、少し大きな冷たい水のペットボトルを買ってから、また自転車を走らせ始めた。次は油壺マリンパーク。

 さっきまで人のいない森にいたから、隣を走っていく車がいるのも少し安心感のようなものを覚える。が、それ以上にどこまでも続いていそうな下り坂が茉莉の不安をあおった。帰り道はここを登っていくのだろうか。確かもう少しこの坂を下ってから右に曲がるはずだけど。この坂を下ることが、どこか取り返しのつかない選択を取っているようにも感じられる。迷いが速度に表れるように、出過ぎた速度にブレーキを掛けながら進む。南国で見そうな木が生えているのを見た。

「結局どこで曲がればいいんだっけ」

 青い矢印とともに流れに身を任せて下っていく途中の信号機でちょうどよく止まった茉莉は、いったん自転車を走らせるのをやめてスマホの地図を見た。

「あ」

 どうやら道を見逃したようで、ここから行くには坂を上るか、降りて少し遠回りの道を道なりに行くかを決めなければいけなくなった。一応今いる信号から西に向かう手もあるけれど、知識の名に住宅街に入ってしまうと道がさらにわかりづらいということは容易に想像がついた。

「……このまま行っちゃおっか」

 坂を下ってそこから向かうルートにした。そちらの方が、同じ道を戻る時間の無駄を感じることもないし、信号を1回曲がるだけで分かりやすい。何より今は坂を上ることを考えたくはない。右折する予定の信号の名前を憶えてから、また自転車のペダルに足をかけた。

 またなだらかな下り坂が続いて、さほどペダルを漕がなくてもよい。その分辺りの雰囲気をよく感じることができる。地元でもよく見るような店もたまに見かける。その分だけここでも生活が存在するのだというリアリティが増して言った。頭上の澄んだ青は不安がたまった心の内を少し洗い流してくれる。入道雲は最初見た時よりも形が違って見えた。

 「油つぼ入口」という名前の信号が見えた。ここを右に曲がれば、あとは道なりで良いはず。名前の憶えやすい信号で良かったと思いながら曲がった。青い矢印もついてきたようで、この道路に沿ってまっすぐ前へと指し示されている。少し進んだらどこにでもあるような郵便局が見えて、その先はまた下り坂だった。坂を下りきった先には上り坂が見えた。これほどまっすぐ前に進んでいく道を自転車で通るのは珍しい経験のように思える。これからこの道を進んでいくんだというワクワクが、上り坂を面倒だと思う心をかき消してくれた。両脇に見える舗装された斜面も相まって、ここの景色だけでも壮観に見える。

 速度が出過ぎないように緩めにブレーキをかけて、上り坂が近づいたら一気にペダルを漕いだ。わかりやすく電動アシストが効いて坂も上りやすい。必死に漕がなくていい分、なんだかサイクリングの楽しい部分だけを抽出したような感覚。風を受けて少し左に曲がったら、あとは直進。赤信号で止まっても、加速は電動アシストがあるから停車させるのも億劫ではない。ここまでついてきた青い矢印は左のほうを向いていたけれど、マリンパークはこの道を曲がらず進んだ先の突き当りにある。

「いったんお別れね」

 茉莉はそういいながらも、マリンパークを一通り見終わったら今日はこの道に戻って矢印に沿って走って行こうかとぼんやり考えていた。このままでは、本当に行く当てがない。

 そのあとは景色から建物が減っていくのを感じながら、緩やかなカーブを経てついにその道の終着にたどり着いた。少し時間はかかってしまったけど、多分誤差の範囲内だろうということが想像つく。そもそも何時何分にどこにいなければいけないとか、そういう制約がないということをやっと実感したような気がした。駐輪場に自転車を止めて、入口の方へ。今まで通ってきた道の静かさとは相反して、人の数が多いような気がする。

「今日は何かあるのかな」

 そう不思議がる茉莉が次に目にしたのは、このマリンパークがあと2ケ月足らずで閉館するという掲示だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ