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たびガール  作者: 諏訪いつき


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幕間 日食-1

 茉莉さんが病室に来てくれるようになってから、お日様が窓に差した時みたいな気持ちになることが増えた。茉莉さんが話す外の世界の話はとっても素敵で、退院する日がもっと待ち遠しくなる。実際、そのおかげかはわからないけれど、春を越したあたりからお医者さんが体調をほめてくれることが多い。今日もお医者さんは、「このままいい状態が続けば、近いうちに退院できる」って嬉しいことを知らせてくれたし、お姉ちゃんもお見舞いに来てくれる。

 お姉ちゃんはお昼ご飯を食べ終わってちょっと経ったくらいに来てくれた。新しい赤と黄色の……名前はわからないけれど、とにかくかわいいお花をもってきてくれている。

「お花ありがとう!今日のもかわいい」

「そう?よかった」

 お姉ちゃんが病室のお花を取り換えた。

「ちょっと残念だけど、茉莉ちゃん風邪ひいちゃって、しばらくの間来られないって。『ごめんね』ってメッセージが来てた」

「そっか……」

 あの元気そうな茉莉さんが風邪?どうして?しばらくってどれくらいだろう。そんなことを考えているから、短い返事しかできなかった。部屋に静かな時間が流れる。

「今日お医者さんは何か言ってた?」

「そうだ!このままいけば、近いうちに退院できるって!」

「本当?やったね、琴音!」

「うん!」

 しばらくは二人で喜びを分かち合った。もうちょっとある入院期間の間何を読もうとか、退院したら何をしようとか、そんな話をして。それでもやっぱり、喜びを分かち合うには一人分足りない。何となくそう感じていたら、あっという間にお姉ちゃんは帰る時間になってしまった。

「じゃあ、また来週来るから。それまでおとなしく休んでてね」

「う……うん」

 もうあれから一カ月は経ちそうなのに、お姉ちゃんは私が病室から飛び出したことを未だにちょっと気にしている。正直、今すぐにでも茉莉さんに会いたい気分だったから図星だったけど。

 お姉ちゃんが病室から居なくなった後、外はマジックアワーの時間が近づいてきた。けれどさっきから視界の端で広がっていた雲が空を覆って、今日はそのまま夜になってしまった。

「茉莉さん、どうしちゃったんだろう」

 出された夕飯を食べながら考える。いつも元気なイメージを持っていたから、風邪をひくなんて意外だった。

「すぐに治って、またお見舞いに来てくれたらいいな」

 私の祈りとは裏腹に、茉莉さんは、次の週も、梅雨入りしそうな時期になっても、病室を訪れることはなかった。

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