幕間 私を海に連れて行って!
海原を冒険する小説を読んでいる。この病院にいる間に冒険物語はたくさん読んできたけれど、これはそのどれよりもわくわくする。常春の島の物語が特に好き。
お医者さんもお姉ちゃんも、私の体調について「とても良くなってる」「もうちょっとで退院できる」って言っていた。もうちょっとっていつだろう。
……そんなの待てない!私は今すぐにでも、彼女たちが冒険したような海を見に行きたい!
そう思いたった時には体が動いていた。着ている服もそのまま、小説を片手に、病室を飛び出して。
昔とは違って、歩いていてもなんの違和感もない。今なら、本当にどこにでも行ける。
でも、私はこの病院の外の知識があんまりない。やっぱり誰かに案内をお願いした方が良いかしら。お医者さん……は忙しそうだし、誰か良さそうな人は……。
階段を降りれば、ここに入院していない人のフロアが見えた。今日はたまに見るときよりも患者さんが多いような気がする。そんな時、会計の列の中に、白いイルカのストラップを鞄につけた、ショートボブの、私よりちょっと年上の人。間違いない、あのストラップはこの小説の初回購入特典でついてくるものだ。あの人なら、私の冒険も案内してくれるかもしれない。
その人が会計を終えたのを見計らって、駆け寄って、声をかけた。
「お願い!私を海に連れて行って!」




