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たびガール  作者: 諏訪いつき
二章 川越編
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二話 川越の探検①

川越にて巡るスポットを決めた茉莉は、その通りに川越を探索し始めた。まずは時の鐘を探す。

「時の鐘、もうこの辺りから見えるはずなんだけど……」

 周りをきょろきょろと見まわす。すると頭上の方にひときわ高い木組みの建物が見える。

「きっとアレだ!」

 背の高い建物が目的地の時は、迷わなくていいなあと心底思った。

 川越市の観光資源のシンボルとして名高い時の鐘は、江戸時代から存在しているようだ。当時市民に時間を伝える重要な役割を果たしていたこの鐘は、何度か倒壊という災難を被りながらも、その都度立て直されてきたという過去を持ち、現在立っているものは明治時代に建てられたものであるという。鐘はそれぞれ午前六時、正午、午後三時、午後六時に今でも鳴らされているようだ。そういえば、今何時だっけと時計を見た瞬間。ゴーンと荘厳な音が鳴った。鐘の足元まで到着していた茉莉は、その音に気が付いて上を見上げる。騒がしい時の鐘の前の空気には似合わないような音が周りに響き渡って、辺りは一瞬不思議な空間になった。

 時の鐘の足元はくぐることができ、その奥には神社があった。茉莉は特に社寺巡りをしたいわけではないのだが、どうやら観光地になるような地域では、その社寺も観光地になっていることが多いようだ。事実、今日に関してもこの薬師神社で二軒目。この先、川越氷川神社に行く予定があるから合計で三軒。

「これだけ神社にいっぱい行ってたら、神社に詳しくなっちゃうかもね」

 そう冗談めいて言った。

 訪れた先の神社に訪れただけで参拝をしないのはもったいないと感じていたから、真っ先に本殿の方へ向かって、いつもの神社への作法でお祈りをした。

 参拝を終えた茉莉は、時の鐘と一緒に写真を撮って、一度その場を離れることにした。目指すは川越城。蔵造りの街は、少し歩けば建物の姿が元の、現代的な造りの建物になるようになっていた。この街から離れているとはいえど、川越城は歩いて十分くらいのところにある。川越氷川神社もそこから十分くらいのところにあるから、この離れている二か所を巡ってもせいぜい一時間。

「全部周っても、夕方くらいには帰れそう」

 茉莉はすっかりあの街並みが好きになっていた。大宮からとても近いから、疲れた休日の一幕にまた訪れてもいいなと、まだ訪れた当日なのにそう感じるくらいだった。

 散歩しながら見える景色も、普段大宮だけでは見られないようなものであった。街一帯がレトロな建物ではなくなっても、ところどころに長い歴史を持っていそうなお店がある。そんな建物などの景色に目を奪われながら歩いていたから、退屈を感じる間もなく川越城に到着した。

 城内は質素な造りでできているから、賑わっていた蔵造りの街から位置的にも離れていることもあって静謐が保たれていた。落ち着くにもちょうどよい場所だと、枯山水を見てしみじみとした。入館料が安いので、施設の中でも見ることのできる場所も価格相応に絞られていた。建物内には江戸時代の人のレプリカが三人いて、頭を突き合わせてなんだか相談していた。

「江戸時代にも私と同じ、心に穴が開いた人がいたのかな」

 なんて、廊下を渡りながら考えた。

 川越城を出たら、北へ向かって歩き出した。川越氷川神社まで十分ほど。迷うような道でもなかったけれど、景色はここまでくるとよくある埼玉の住宅街のものになっていた。時折通り過ぎる人の手には大体さつまいものチップスがあって、茉莉の目を引いた。

「あれ、川越のどこかで買えるのかな……気になる!」

 途端お腹が鳴って、誰かに聞かれていないだろうかと周りを見回す羽目になった。

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