4.委員長の所信表明と の確認
「俺がイインチョーー!?」
「……はい……。」
「なんで? ほんと、なんで!?」
予想外だった。
留年生、しかも実力で留年したとなればそうとうな落ちこぼれの代名詞。
その落ちこぼれを、委員長に推薦するなんて。
「いや……先輩がクラス委員長だったらなんか、明るいクラスになるかなー、ってみんなが……」
「ああ、そうかもな。でもクラスを明るくするだけが委員長じゃねぇだろ! お前さ、俺が委員長会に出席してクラスの状況冷静に話せると思うか!?」
「そのへんは私がしっかりしてるから大丈夫かなぁ、って言ってました。」
「ぐぅぅ! まさに飴と鞭の政策か!!」
「先輩、使い方を大いに間違ってます。」
そもそも政策っておかしいだろ。
「まあ、言わんとすることは理解できますが……。」
「なあ楓良、今から委員長変えられないのか? ぜっっったい考え直したほうがいい! 俺が委員長になるとクラスが廃れる!」
「本音は?」
「クラス委員長なんてクソめんどうくさいことなんかやってられっか!」
「やっぱり。」
楓良はため息をついた。
「変更はかないません。二学期後半までがんばってください。」
「う゛う゛う゛う゛う゛……。三年生なんだからもっと自由に学校生活送りたい……。」
「すでに二回、そう言いながら自由に三年生やってんですから。我慢です。」
「……ちっ、わかったよ!」
あーあ、と雄介は椅子の背にもたれかかった。
「どうなってもしんないからな!」
「……なんか、本当に大変なことになりそう……。」
――翌日――
ガラッ
「ボベッ!」
突然上から落ちてきた黒板消しに、雄介は思わず悲鳴を上げた
「わーっ、ひっかかったぁーー!!」
「やっぱり先輩はアホなんだな。」
「……アホはてめえらだッ!! 小学生か!」
(いや、先輩。あなたも去年、理科の先生に同じことやったでしょ。同級生の人から聞きましたよ。)
楓良は心の中で突っ込んだ。
「だいたいやるなら先生だろ! なんで俺!?」
「いや、先輩と先生って年が近いし。」
「先輩が本当にアホなのか確かめたかったし。」
「年が近いのは否定できねェがアホの確かめ方は間違ってるだろ!!」
「でもまあ、とりあえずアホですね。」
「ちくしょう! 認めるしかないし!」
悔しそうにこぶしを握る雄介。
「つーか聞いたぞてめーら! なんで俺が学級委員長なんだ!?」
「楽しそうだから。」
「面白そうだから。」
「明るそうだから。」
「……予想はしてたけど『真面目だから』とか『しっかりしてるから』の理由はないんだな……。」
肩をがっくりと落とし、雄介は自分の席にかばんを置いた。
「……まあ、なったもんは仕方ねぇ。……よく聞けてめーら!」
雄介が叫ぶと、クラス中の視線が彼に集まった。
「いまだに納得いかないことはあるが、なったからにはちゃんとやる。二年前、初めて三年生を迎えた時のわくわく感は覚えてる。お前らもおんなじ気持ちを抱いてるだろう。だから俺は、てめーらのその気持ちを裏切らないように精いっぱい努力する。……たのしもうぜ三年生!!」
『おうよ!』
クラスのみんなが叫ぶ。雄介はふっ、と微笑み、椅子に座った。
と、
[ブゥー……!!]
雄介の座ったところから盛大におなら……に似せた音が発せられ、クラスに沈黙が下りた。
……やがて耐えられなくなった生徒数名から小さな笑いが漏れだす。
やがて雄介は顔を赤らめ、プルプルと震え、どなった。
「お前らセンパイな面のもいい加減にしろよ馬鹿どもがァァァァ!!!!!!」
受験が終わりましたので更新再開します。大変長らくお待たせしました。