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母へ、私は  作者: ヤマト
第一章 名もなき者

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第一話 プロローグ

以前投稿していた一話はかなり急ぎ足な話になっていたので、今になって大幅修正しました。

ようやく続きを書く気になったので、これからはちゃんと投稿していこうと思います。


『ごめんね』

その一言だけを覚えている。


私は気がつけば何もない平原に一人で立っていた。


風の音しかしない。


自分の呼吸だけがやけに大きく聞こえる。


そのとき、ようやく気がついた。

右の手のひらに、何かが刺さっている。


痛い。痛い。


矢だった。


私は深呼吸をして矢を抜いた。

血が溢れ出る。


思っていたよりも深く刺さっていたらしい。

抜いた瞬間、指先まで鈍い痺れが走る。


矢尻でローブの裾を裂き、右手を縛る。

布はすぐに赤く染まった。


血は、しばらく止まらなかった。


やがて、滲むようにしか流れなくなる。

その頃には、痛みも少しだけ遠のいていた。


……ふと、手元を見る。


矢尻だけが、そこに残っていた。


なぜか、それを捨てる気になれなかった。


指先で触れる。

冷たいはずなのに、どこか熱を帯びている気がした。


それを握りしめたまま、立ち上がる。



しかし、ここは一体どこなのかわからない。

それだけでなく、自分が何者かも覚えていない。


……歩こう。

それしか、思いつかなかった。



  *



あれからどれだけ歩いただろうか。


何度も日が昇り、日が落ちた。

何度も何度も気を失いながら、ひたすら歩く。


足が重い。


一歩踏み出すたびに、身体が軋むような感覚がある。

それでも足は止まらない。


止まる、という選択肢が浮かばなかった。


歩く。

ただ、ひたすらそれだけを繰り返す。


痛んでいたはずの右の手のひらは、いつの間にか塞がっていた。

傷跡すら、ほとんど残っていない。


それに、喉が渇いているはずだった。

そう思うのに、乾きは感じない。


おかしい、と一度だけ思った。


そんなことすら、どうでもよく思えた。



いつまで歩けば私は助かるのだろうか。

そう考えたところで、また意識が途切れる。


呼吸が浅くなる。

肺に空気が入らない。


息を吸おうとする。

けれど、吸えない。


身体が、冷たくなっていく。


——ああ。


そのまま、動けなくなる。




……どれくらい経ったかは、わからない。

気がつくと、また歩けるようになっていた。


身体はボロボロなはずなのに、歩くのをやめられない。

やめる、という考えが浮かばない。


何日も、歩いては倒れる。


それでも、また歩いていた。



  *



太陽の位置が、記憶と合わない。

もう何日歩いたのか、数えられなくなっていた。


足が、前に出ない。


地面に手をつく。

渇いた土の感触が、指先に残る。


視界が揺れる。

地面と空の区別がつかなくなる。


……ああ。今日は、ここまでか。


そのまま、崩れるように倒れた。

私は、どうすれば救われるのだろうか——



 *



意識が遠のく中、

遠くの方から音がした。


足音だ。


誰かが、こちらに近づいてくる。


ゆっくりと、確かにこちらへ。


——逃げなければ。


そう思った。

けれど、身体は動かない。


指先すら、言うことを聞かない。


声を出そうとする。

何も出ない。


視界の端に、影が映る。


誰かが立っている。


声が、聞こえた気がした。

けれど、言葉までは届かない。


誰かの手が、肩に触れた気がした。

冷たいのか、温かいのかもわからない。



そのまま、意識が途切れた。



  *



目を開ける。


そこは、青空の下ではなく、見知らぬ天井だった。

初めまして。ヤマトと申します。

拙い文章ですが読んでいただきありがとうございます。

これからボチボチ連載して参りますので何卒よろしくお願いします。

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