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第79話 キュベリー騎士団との戦い

「威嚇攻撃・・・ですか?」


「あなたたちが敬礼一つできずグダグダしている間にジャンに偵察に行ってもらいました。それによると敵の総数は約100騎、我々の2倍です。しかも装備ははるかに充実していて、直接戦えば我々は大敗するでしょう。ですので彼らを退却させるため、こちらの戦力が見透かされないように威嚇します」


「そんなこと本当にできるのでしょうか、侯爵閣下」


「できます。そのためには、あなたたちが指示通りに動くことが最低条件です。わかりましたね」


「はっ! 何なりとご命令を」


「では、わたくしたち3人が城壁から敵に魔法攻撃を放ちますので、指示をしたら城門を開け放って突撃をお願いします」





 俺はアンリエットとジャンを連れて城壁へ登った。


 キュベリー騎士団は城壁の下、堀の向こう側100メートルほどの距離の所に展開していて、街に向けて火矢を放っては笑い転げていた。


 そして俺たちの姿に気が付いた騎士たちは、いきなり矢を放ってきた。



 【魔法防御シールド】



 無属性魔法のバリアーを瞬時に展開し、彼らの矢をことごとく跳ね返していく。俺たちの魔力を超えるような強靭な騎士でもない限り、遠方からの矢なんかでバリアーが突き破られることなどない。だが、俺たちを殺そうとする意志は明確に確認できた。


 俺は拡声の魔術具を使って、敵騎士たちに叫んだ。


「あなたたちの先制攻撃は確認いたしました。これはアスター伯爵家への侵略行為であり、今の行為は記録宝珠にしっかりと記録しました。これを国王陛下に提出し、キュベリー公爵にはしかるべき処罰を与えていただきます」


 すると隊長と思われる騎士が前に出てきた。


「これはただの演習であり、それを事前通告していたにも拘わらずのこのこと顔を出した貴様らにこそ瑕疵がある。そのような捏造された証拠で主君を侮辱するのであれば、貴族の矜持にかけてお相手仕る」


 やはりそう来たか。では反撃を開始するか。


「アンリエットにバリアーを任せます。わたくしとジャンは魔法準備に入りますので、しっかりと守って下さいませ」


「了解」


 まずは聖属性魔法・グロウを、俺達3人や50名の騎士たち全員にかけて戦力を底上げする。とにかく若くて精強な騎士が揃っているように見せかけるのだ。もちろん例のハッタリ効果も期待している。



 【聖属性魔法・グロウ】



 城門の内側、俺たちの丁度後ろに控えている騎士たちも魔法の範囲に入るように、巨大な魔法陣が頭上に出現した。それが虹色に輝きだすと、例の無駄に神々しいエフェクトがスタートし、俺たち3人は大人へと成長、分家や騎士たちは逆に若返る者が多くいた。


 そしてやはりと言うべきか、この神々しい輝きを見た分家やその騎士たちは、全員片膝をついて神の降臨を祝福し、俺を拝んだ。


 同様に、前面の敵の多くもこの神々しい輝きに呆然と立ち竦んだり、ひれ伏したり、武器を投げ捨てて祈る者まで現れた。それを隊長が怒鳴り散らして必死に戦意を高揚させている。




「敵の矢が止まりました。アンリエットは攻撃魔法に切り換えて下さい。わたくしも魔法攻撃を開始します。ジャンは引き続き、魔法準備を」


 俺の指示により、アンリエットは火属性魔法フレアーを放って、巨大な火球を敵騎士団に出現させた。


 ジャンは先程からずっとゴーレム騎士を召喚している。ゴーレム馬の上に簡単な攻撃を行うゴーレム人形を乗せただけのものだが、これで足りない騎士の数を水増するのだ。


 とにかく数を揃えるために機能は単純、うすのろだが固くて馬鹿力だけはある木偶人形。それでも大軍で真正面から突撃させれば意外とやっかいなはずだ。


 そして俺は、



 【闇属性魔法・ワームホール】



 先ほどの消火活動と同じように、地面を丸ごと転移させて敵騎士団の頭上に落とす。闇のティアラによって増幅された俺の闇魔法は、100メートル先の敵の上空に巨大な土の塊を転移させることができるようになっていた。闇のティアラはマジ半端ねえな。



 そうして俺はワームホールを、アンリエットは詠唱時間の比較的短いファイアーをひたすら打ち続けて、敵騎士団を混乱させた。攻め込む隙を一切与えずとにかく時間を稼せぎ、ジャンが召喚するゴーレムの数をそろえるのだ。


「ジャン、そろそろどうですか?」


「一応50体ほど準備ができた。これで数だけは敵と同数だ。うすのろバカだが見かけは立派なもんだろ」


「ええ、とても素敵な騎士団ができましたね。それではわたくしたちも出撃いたしましょう」





「開門! 全騎、突撃せよ!」


 アンリエットの号令と共に城門が開いて、俺たちは出撃した。50騎のゴーレム騎馬兵を先頭にその後を俺たちが続く形だが、俺は身体の操作をローレシアに交代し、ローレシアが馬で敵騎士団に突撃する。


 俺、実は馬に乗れないのだ。日本人だから。


 ローレシアは魔剣を虹色に変化させ、頭上に用意したアイスジャベリンを一本ずつ敵に向けて発射していき、アンリエットは再びフレアーで敵の中央に巨大な火球を発生して敵を混乱させる。


 さらに後ろに続く騎士たちも、魔力のあるものは自分の得意魔法を、一般の騎士は矢で遠隔攻撃をして、できる限り敵を消耗させていく。


 だが敵は先程の土砂&火球攻撃ですでに疲弊させられていた上、ゴーレム騎士の突撃をまともに受けて防御が崩壊。その後ろの俺達に攻撃を向ける余裕が全くなかったため、早々に撤退を決めたようだ。


 ゴーレム騎馬兵の攻撃を背中に受けながら逃げ去っていく敵騎士団が完全に見えなくなったのを確認すると、俺たちはゆっくりと街に引き返した。




「ジャン、キュベリー騎士団は思ったよりもアッサリ兵を引きましたね。さすがゴーレム騎士軍団」


「お陰で俺の魔力はスッカラカンですけどね。でも、あの突撃がうまく行ったのは、お嬢があれだけ魔法を使いまくったからですよ」


「わたくしもアンリエットのように、かっこよく魔法攻撃ができればよかったのですが、あの距離が届く攻撃手段が闇のティアラで増幅させたワームホールしかなかったのです。ですのでわたくしがしたことなど、敵を土まみれにしただけです」


「それはそうなんですが、土砂の量がえげつないよ。見てくださいよこの巨大な穴だらけの地面を」


「うっ・・・言われてみれば、我ながらこれは酷い。穴を埋めるだけでも一仕事ですね」


「それに敵が居た場所が大惨事」


「・・・土砂崩れみたいになって、敵の兵装やら物資やらが全部土に埋まってしまってます。これでは確かに敵も戦うどころじゃなかったでしょうね。あ、そうだわ、あの土を掘り返して敵の兵装を奪いましょう」


「それは良い考えですね、了解しました。あとで分家や騎士たちに命じておきます」






 町に戻ると、戦いの様子の一部始終を見ていた領民たちが大声援と拍手喝采で俺たち騎士団を迎え入れてくれた。分家たちにも惜しみない声援が送られ、嬉しさと気恥ずかしさでみんな複雑な表情をしていた。


 そして、街の広場で騎士たちを一列に整列させる。今後の街の警備や見張り、偵察、俺の作った穴ボコ修復、土砂に埋まった兵装奪取を指示するためだ。


 だが、戦いに出る前に無理やり整列させられたいた彼らと今の彼らでは、雰囲気が全く変わっていた。


 ローレシアを見る彼らの目は、侮蔑や怯えから尊敬に変わっていたのだ。きっとこの分家たちは、もう二度とローレシアを裏切ることはないだろうな。




「マーカス、わたくし王城に戻りますので、先ほどの転移陣を設置してください」


「待ってください、アスター侯爵閣下。今あなたに戻られたら、またキュベリー公爵の騎士団が襲撃してきたときに対処できません。できればこの屋敷にご滞在いただきたきたいのです。どうか、よろしくお願いします!」


 マーカスがローレシアの足にしがみつく。


「心配しなくても、王城へはこの記録宝珠を持っていくだけです。それにキュベリー騎士団の動きも気になりますので、しばらくはここに滞在するつもりです」


「あ、ありがとうございます! もうこの際ですのでこの領地はアスター侯爵がお治め下さい」


「マーカス、調子に乗りすぎです! ここはあなたの領地なのですから、ちゃんと自分で治めなさい」


「いや・・・しかし」


「ローレシア様、どうかワシらの領地も奪い返して下さい。そうすれば領地は全て差し上げますので、ワシは代官にでもさせて頂ければ」


「それはいい考えだ。アスター侯爵、私はここの代官になりますので、ぜひこの領地をお受け取り下さい」


「「「私たちの領地もお願いします~」」」


「領地なんかいりません! そういうことは本家にでもお願いして。わたくしはもう王城へ行きますので、転移陣の設置を早くなさい」


「ハハーーーッ! かしこまりました」

次回、いったん王城へ戻ると・・・。


ご期待ください

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